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「自分が払った税の行方は?」都市住民の目線で森林環境税の使い道を考えよう!

「森林環境税」と「森林環境譲与税」がどのように徴収され、使われているのか、考えてみたことはあるだろうか。都市住民の目線で考えてみよう。森林ジャーナリスト・田中淳夫が考える希望の林業とは?

「森林環境税」と「森林環境譲与税」
自分が払った税の行方は?

先日、都会の人に林業を理解してもらうプロジェクトを模索しているという女子大生と話をした。すると主に都市住民を対象に行ったアンケート結果に愕然としていた。圧倒的に森林について知らない、林業に興味がない、人が多いという結果が出たからだ。自分の思い入れが空回りしていたと気付いたのである。

私は、妙に納得した。林業関係者は、森林や林業を大切な存在だと自明の理のように語るが、都市の住民にとっての森とは、自然環境の“ワンオブゼム”=ひとつでしかないのである。林業となると、まったく遠い世界だろう。理屈では、日常使う木材を生産するのが林業だと理解していても、関わりが感じられない。下手すると自然を破壊する産業と思っている人もいる。

そこで頭に浮かんだのが、「森林環境税」と「森林環境譲与税」だった。森林環境税は、森林環境をよくするために使うという趣旨で、国民に等しく住民税上乗せ方式で一人1,000円徴収される。だから人口の多い都市の住民が払っている額が圧倒的に多い。

一方で森林環境譲与税の配分基準に人口が入っているため、私有人工林が少なく林業従事者もいない都会の自治体にもかなりの金額が配分される。それがおかしいと見直しの気運も起きている。当然、その声は森林地域の自治体に強い。しかし都市住民の声を把握しているだろうか。

私の知るところ、かなり不満を持っている。増税されて、そのお金の使い道は森林関係に限られていることに。広く森林環境のためというならまだいい、従事者も産出額もわずかな林業ばかりに注ぎ込むことに納得がいかないという声は根強い。



森林環境譲与税の使い道
都市住民の目線で考えよう!

実際の森林環境譲与税の使い道を調べてみた。すると、林業地に実施する間伐、地拵え、造林、下刈などの森林整備への補助や、林道や作業道の開設や維持修繕、支障木伐採、そして林業人材の雇用と研修など育成事業がずらりと並んでいる。

いずれも林業にとっては大切だろう。それが森林を健全にし、防災や脱炭素にも役立つという言い分もあるに違いない。しかし、都市住民にはピンと来ない。自分が払った税金が、自分には関係ない業界に使われていると感じる。

多少とも都市住民と関係のある使い道は、森林に関する市民講座やシンポジウム開催、林業体験ツアーなど交流事業だろうか。花粉症対策もその一つかもしれないし、木造建築も身近に木と触れ合う意味を持たせている。それらも悪くはないが、自分が払った税金が世の中に役立っていると思ってもらえるかどうか。

ぜひ林業関係者、とくに自治体職員は、森林環境譲与税の使い道を改めて考えてもらいたい。森林や林業が大切なのは自明の理という思い込みを捨て、その用途が、林業と森林に与える影響と国土に大切であることを、都市住民にも伝わるような用途を見つけてほしい。

こんな美しい森をつくれた、こんな素敵な木工品を生み出し、日々の暮らしや街の景観も彩った……そう示せないか。さもないと不満の声が高まるばかりだ。都市も財政は厳しく難問山積みだから、農山村ばかりに金を回すな、と言われかねないだろう。



PROFILE

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など多数。最新作は、明治の元勲が頼るほどの財力を持ち、全国の山を緑で覆うべく造林を推し進めた偉人・土倉庄三郎を描いた『山林王』(新泉社)。奈良県在住。

著書

『山林王』


2023年3月25日発行/神泉社

吉野の山中に、明治の元勲が頼るほどの財力を持った山林王がいた!
土倉庄三郎。100年先を見すえて生涯1800万本の樹木を植え、手にした富は社会のために惜しげも無く使い切った。いまこそ、私たちが知るべき近代日本の巨人である――河合 敦(歴史作家)


FOREST JOURNAL vol.18(2023年冬号)より転載

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