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林業者の取り組み

石川県能登半島地震後の石川の林業は? 能登の林業家に支援を

2024年元旦に石川県能登半島を襲った大地震。家屋倒壊など被害にあった輪島市にはもともと漆文化が根付き、木や漆とともにあった地域だ。そんな輪島を始めとした石川の林業は今、どうなっているのだろうか。

3ヶ月経って
山や森林の被害状況

能登半島地震から3ヶ月以上が経過した。被災地からの報道では、輪島塗などの伝統工芸の工房の被災のほか、海岸が隆起して港が使えなくなった漁業や、温泉が止まったホテルなど観光産業も大きな被害を受けたことが伝えられている。しかし、山林被害や林業施設、そして林業関係者自身の状況については、ほとんど報道されていない。現実には、林業施設も関係者も多くの被害を受けた。

まず全体像を押さえておこう。林野庁は発災直後からヘリコプターを飛ばすほか、現地調査も交えて被災状況を確認している。順次更新しているが、3月4日時点の公表によると、石川県では珠洲市、輪島市、能登町などで多数の山腹崩壊・地すべりを確認したという。現在は、林地荒廃60ヶ所、治山施設33ヶ所、林道施設など171ヶ所、木材加工流通施設35ヶ所、特用林産施設など22ヶ所の被害が確認されたとしている。

また富山県では、林地荒廃3ヶ所、林道施設など23ヶ所、木材加工流通施設6ヶ所、特用林産施設など9ヶ所の被害が確認された。そのほか新潟県が林地荒廃1ヶ所、林道施設など6ヶ所、木材加工流通施設2ヶ所、特用林産施設など29ヶ所に、長野県は特用林産施設など30ヶ所に被害が報告されている。

林野庁は、能登半島地震山地災害緊急支援チームを編成し、石川県などと連携しつつ、奥能登地域における避難所や集落周辺の森林や治山施設の危険度を点検し、山地の被害状況の把握や復旧対策に向けた技術的な支援のための体制づくりを行っている。崩壊を防ぐための応急措置も実施しているが、本格的な治山工事が必要な場所は数多い。



林業のスキルが復旧戦力に
生活を取り戻すため

こうした中で林業関係者はどのような状況だろうか。ここでは、石川県の能登半島を中心に、現地の人々からもたらされた情報をお伝えしたい。

まず能登地方には、約200人弱の林業従事者がいる。彼らは森林組合に所属するほか、林業事業体や一人親方として林業に関わってきた。従来はスギやアテ(ヒノキアスナロ)の人工林の利用間伐で木材生産を行うほか、広葉樹による炭焼きや原木しいたけの栽培などを行っていた。今回の地震では、自宅や作業施設の倒壊など大きな打撃を受けたうえ、道路被害も重なって、発災直後から木材生産は完全にストップした。

一方で林業技術を持つ人々が、復旧への大きな戦力となったケースも伝えられる。半島の道路には、土砂崩れや路面の隆起、陥没、液状化などにより通行できなくなった地点が多数ある。そのため陸の孤島と化した集落などで住民たちが孤立した。道路を開通させないと、支援物資の配達も困難になる。

しかし、山の木々が土砂とともに崩れ道路を覆ったり電線にのしかかったりしたところは、素人が手を出せる状況にない。土木建築の専門家にも難しい。そこで発災直後から活躍したのが、倒木処理に馴れた林業従事者たちだったのである。

石川県と石川県森林組合連合会は「災害時の応急対策業務に関する協定」を事前に締結していた。今回の地震でも、土木関係からの出動要請もあり、多くの林業従事者が土砂崩れなどの現場に駆け付け、木の伐採・撤去などを行っている。自衛隊や消防団が入っていないところ、建設会社や土木の手に負えないところもある。また林業関係者が、自主的に崩壊した道路や建築物などの処理などのために被災現場に入ったケースも少なくないそうである。

ただ問題は、林業関係者も多くが被災していることだ。現地からは「避難所から被災現場に通ってる」「着替えも十分ではなく、半乾きのまま着て出ている」「雨や雪が降る中なのに合羽がない」「断水しているので山水を使っている事務所で洗濯している」といった声が伝えられている。また作業に参加したくても、林業道具そのものが倒壊家屋の中で取り出せない人もいるようだ。

なお救援活動には、地元だけでなく周辺地域からも林業関係者が駆けつけた。富山県からは、能登半島の付け根に当たる氷見市など被災地に住んでいる人でありながら能登半島に通う人もいる。ほかにも岐阜や福井、新潟などから現地入りした人々がいた。

林業者支援と
未来を見据えた治山を

そこで林業者への支援に動き出した団体もある。もりラバー林業女子会@石川(林業を応援する女性たちの団体)は、能登の林業従事者に失われた林業道具を届けるためのクラウドファンディングを立ち上げた。

震災を機に林業を辞めてしまう人が出ないことをめざして、チェンソー、チルホール、繊維ロープ、ウインチ、滑車などの林業道具のほか合羽、防振手袋、チャップス、ソーチェーン、長靴、ヘルメットといった作業に必要な道具などを支援するものだ。目標金額は2000万円だが、目標を達成しなくても支援金を受け取れるAll in形式で実施しており、目標金額が集まる前から、順次道具や装備を発注・手配し、現場で働く方たちへ届けていくという。とりあえず募集は3月25日までだが、別の支援金募集も行っているそうである。また道具類の寄贈のため、同時並行で誰が何を必要としているかの調査もして、きめ細やかに要望に合わせようとしている。

ちなみに林業従事者に加えて、製材所も多く被災した。今後、仮設・復興住宅などで木材需要が増える見込みはあるが、能登の木材を利用するのは、今のままでは難しいだろう。今後、治山事業も始まろうとしているが、土木業者だけで工事を行うと、立派な建材になる木も、産業廃棄物扱いで処分されてしまう。林業の視点も取り入れて整備することを願う。



DATA

もりラバー林業女子会@石川

PROFILE

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など多数。最新作は、明治の元勲が頼るほどの財力を持ち、全国の山を緑で覆うべく造林を推し進めた偉人・土倉庄三郎を 描いた『山林王』(新泉社)。


FOREST JOURNAL vol.19(2024年春号)より転載

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