林業・木材について考えるカードゲーム6選を紹介! 多方面に目を向けるきっかけに
2024/05/24
林業経営を行う際のヒントを学ぶ方法はさまざまある。その中でも今回注目したいのは、カードゲーム。小学生から熟練者まで幅広い層が楽しめるものも紹介する。森林ジャーナリスト・田中淳夫が考える希望の林業。
カードゲームで学ぶ
林業・木材業界
森林や木材を扱う仕事をする中で、さまざまな悩みが発生する。初期投資はどうする。手入れか伐採か。木材の売り先は製材所かバイオマス発電所か。最近はJクレジットも始まったし、従事者の安全教育も気をつかわねばならない。林業経営を行う際に、ヒントを得られる方法は何かないか?
難しい経営論のようだが、最近になって、林業や木材について考えるカードゲームがいろいろ登場してきた。
私も、その一つであるカードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」をやってみる機会があった。
まずプレイヤーが1~4名のチームに分かれ、山主、森林組合、木材商社、行政職員、住宅メーカー、学校教師など10種類の職業を選ぶところからスタートする。そして設けたゴールに向けてゲームを行う。
写真:カードゲーム「moritomirai(モリトミライ)」(株式会社プロジェクトデザイン)
利益が最優先か、森づくりを重視するか。さまざまな手段に森への関心や管理、資源量などの状況が反映される。各プレイヤーが好き勝手に行動すると林業は持続できなくなる。望む森の姿を考え、発信しつつ各人が協力し合うことで森の未来を理解するものだ。
ゲームはファシリテーターの元で進められ、時間は1時間半から3時間かける。対象は小学校の児童からプロの大人まで幅広い。
私はかじった程度だが、経営とは想定通りにはならないものだと思い知った。
「幻の山林王」というカードゲームもある。より林業経営に特化しており、利益を増やしながら林業を持続させるようにあの手この手の戦略を取る。どんな施業を行うか、自然災害の可能性も含めて経営を考えていかねばならない。
「セーザイゲーム」とは、製材に特化して経営を競うゲームだ。質と量を考えながらセリで木材を仕入れ、製材方法もパズルで行う。そして販売先を探るのだ。
写真:セーザイゲーム(熊野林星会)
ずばり「林業安全ゲーム」のチェーンソー伐木作業編は、双六とクイズを組み合わせている。質問カードへの回答によってコインをゲットできる仕掛けだ。初心者向けや熟練者向けなどに分かれているのも特徴だろう。
さらに林野庁がつくった「ZORING」は、森づくりを学ぶもので、獣害や虫害、山火事など災害も受けながら施業を行い、より良い森づくりを目指す。
そして「木王」。これは木育をテーマにした対戦カードゲームだ。先行・後攻に分かれ森林に林業、利用、応援団のカードを使って戦いつつ、知識を身につけるもの。
各ゲームの入手方法とルールは各自調べてほしいが、いずれも頭と身体を動かし、楽しみながら知識を身につけようという発想で作られている。林業経営もロールプレインゲームのように考えると、新しい展開に気付くかもしれない。
私もいくつかゲームをやったが、意外な結果に声を上げつつ、多方面に目を向けるきっかけになると感じた。
ビジネスも環境もさまざまな要素が絡み合って成り立っている。狭い業界内の都合だけで考えるのではなく、視野を広めて経営に臨むチャンスになるだろう。
PROFILE
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など多数。最新作は、明治の元勲が頼るほどの財力を持ち、全国の山を緑で覆うべく造林を推し進めた偉人・土倉庄三郎を描いた『山林王』(新泉社)。奈良県在住。
著書
『盗伐 林業現場からの警鐘』
2024年3月31日発行/新泉社
他人の山を無断に伐って木材を盗む盗伐は、日本各地で頻発している。いや欧米を含む世界中で違法伐採は起きているのだ。林業を内側から破壊し、地球環境も危うくする犯罪を、現場からのレポートに加え、歴史的な経緯や取り締まる国際的な動き、そして日本の対応を追跡する。
FOREST JOURNAL vol.19(2024年春号)より転載