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樹木の病気や違法伐採を検出。森林資源の“見える化”で持続可能な資源管理と森林ビジネスの効率化へ

世界の森林は、毎年約1,000万ヘクタール(日本の国土面積の約4分の1に相当)が失われており、違法伐採や森林火災、生態系の劣化が深刻化している。こうした危機に対し、リトアニアとスウェーデンの研究チームが、森林管理をデジタルで革新するプロジェクトを始動させた。

メイン画像:©Kaunas University of Technology,Lithuania

森林資源の「見える化」で
森の監視と利用を一括管理

持続可能な森林利用を科学的に支えることを目指して開発されたのが、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ブロックチェーンを統合した次世代型森林管理モデル「Forest 4.0」と呼ばれるプロジェクトだ。

その中核となるのは、森林内部に設置されたIoTセンサー群である。気温、湿度、土壌水分、樹液の流れなどの環境データを常時記録し、AIが自動解析する。これにより、森林の健康状態や炭素吸収量、生物多様性の変化が可視化され、根拠に基づく管理が可能となる。

また、画像解析AIは葉の変色や斑点から病害虫や火災リスクを検出。環境DNA(eDNA)と動植物の行動データを組み合わせ、外来種や生態系の変化を予測可能にする。さらに、人工衛星やドローンによるリモートセンシングとLiDAR(光を使った高精度のレーザー測量)を用いて、森林の3Dモデルを作成。これは、炭素隔離量の評価や伐採計画の最適化にも役立つ。

©Kaunas University of Technology,Lithuania

「Forest 4.0」は、木材の流通過程も一貫管理する。ブロックチェーンにより伐採から加工、輸送、出荷までを記録し、改ざん不能な情報でサプライチェーンの透明性を高める。これによって、消費者は木材がどこでどう伐採されたかを確認でき、環境に配慮した選択をすることが可能になるという。

プロジェクトは2023年、EUの研究助成「Horizon Europe」の支援で本格的にスタート。主にIoTセンサーやAI基盤などのスマート技術の開発を担うリトアニアのカウナス工科大学(Kaunas University of Technology)と、データ解析や森林管理の応用モデル構築を主導するスウェーデンのリンネ大学(Linnaeus University)が中核を担い、国境を越えたプロジェクトを展開している。

ただし、高価なセンサーやAI基盤やインフラ整備が必要なため、既にパイロット地域で導入されているものの、途上国や小規模林業者には壁があるのが現状だ。

今後は低コスト・高効率のセンサー開発や技術のオープン化、国際的な基準整備が鍵となる。環境保全と経済活動の両立を図る「スマート林業」はまだ始まったばかりだが、持続可能な未来への確かな一歩と言えるだろう。

DATA

公式HP:Kanuas University of Technology Managing forests with smart technologies
参照記事1:Digital transformation of the future of forestry: an exploration of key concepts in the principles behind Forest 4.0
参照記事2:Deforestation Fact Sheet-UN Environment Programme


文:Ellis

FOREST JOURNAL vol.24(2025年夏号)より転載

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