林業者の取り組み

チェンソーアートが林業に与える影響とは? 地域活性化・経済活性化のカギに

チェンソーアートはセミプロや趣味として熱中する人も増え、日本のチェンソーアート人口は、推測で1万人以上になっている。ではチェンソーアートが林業に与える影響とはなにか。チェンソーアートの担い手、林業地の2つの観点から改めて考えてみよう。

メイン画像:城所氏の作品ティラサウルス

前編:『チェンソーアートは林業を支えるビジネスになるか? 安全管理や技術向上に貢献』はコチラ!

 

チェンソーアートが林業に
与える影響を改めて考える

日本のチェンソーアート第一人者である城所啓二さんは、その後和歌山県の田辺市龍神村に移り住んでチェンソーアートを本業として取り組むようになった。また世界各地で開かれるチェンソーアートの大会にも出場するようになり、幾度も優勝している。彼の作品は世界的に知られるまでになったのだ。
 
そしてほかにも多くのチェンソーアーティストが登場し、同じく本業にしている人も増えてきた。もちろん別の仕事と掛け持つセミプロや趣味として熱中する人も増えている。意外なのは、林業とは縁のない都市部にも愛好家が増えていることだろう。日本のチェンソーアート人口は、推測で1万人以上になっている。周辺人口も含めると数十万人の規模だと見込まれる。
 
チェンソーアートが林業に与える影響を改めて考えてみよう。まずチェンソーアートの担い手の立場から考えると、ショーに出演すれば出演料を手にするうえ、優秀な作品は展示して販売できた。チェンソーアート大会が開かれると、会場では参加者の作品の即売会も開かれている。売れれば当人の収入になる。
 
また腕前を見込まれると、作品づくりを依頼されることもある。大きさは千差万別で、なんらかのオブジェとして求められるほか、本格的な彫刻作品としての要望も高まっている。もちろん腕前次第だが、1日で完成させた作品が数万円で売れるとしたら、収入として悪くない。何より創作活動であり、自らの発想や技術で切り開く世界だ。やりがいも大きい。


アメリカ永久チャンピオンのブライアン・ルース氏の作品



林業地にも地域活性化など
さまざまなメリットが生まれる

また林業地にもさまざまな経済的なメリットがある。一つはカービング素材の販売だ。主にスギ丸太である。柔らかく木目が素直なスギは、チェンソーアートの素材としてもっとも向いているそうだ。しかし山村ではありふれたスギ丸太も、町では手に入りにくい。実は趣味として取り組む愛好家は都会に多いが、彼らの大きな課題は、チェンソーアートのための素材の調達と作業を行う場所の確保なのである。丸太の入手だけでなく、作業も轟音を立て大量のおが屑を発生させるだけに町の中ではほぼ不可能だ。倉庫など閉鎖空間では音が響いて危険でもある。おが屑もオイルまみれで大量のため、ゴミとして処分するのは難しいのだ。
 
しかし山間部なら、それらを提供するのは難しくはない。素材としての丸太で必要なのは、せいぜい1メートル程度の、いわゆる「たんころ」。こうした短いものは通常使い道はなく、せいぜいチップ用や燃料用に回す程度。また芯が黒く染まった材も製材用としては値がつかないが、木彫素材としては黒い模様を活かした作品にできる。また曲がった丸太も1メートルに刻めば何ら問題なく、それらが高く売れる。
 
そしてチェンソーアートの練習場を提供したり、スクールを開けば指導料も得ることができる。さらにチェンソーや防護用具、そして燃料、オイルなどの販売も行える。これらも街中の店ではなかなか手に入りにくい。チェンソーも日曜大工的な商品では満足できなくなる。プロ仕様の商品は、林業専門店でなければ取り扱っていない。こうした物販も直接的な収入源となるだろう。
 
もちろん大会を開けば、山村に多くの人を呼び込むことが可能となり、宿泊や飲食も伴うから地域活性化につながる。定期的にスクールや練習会を開催することで町から通う人も増える。ときに都会の住人がチェンソーアートに夢中になって、山村に移り住むケースも現れている。それだけに地域上げて取り組むと、波及効果が見込める。
 
そして丸太とチェンソーに親しむことは、広い意味で林業への理解を深める役割を果たすだろう。完成した作品の魅力も木に対する愛着を生み出すことができる。こうした効果は無視できない力がある。
 


梶谷哲也氏の作品。切り株に直接彫刻すると人気を呼んで観光客が集まったという。

最近はネットの動画を見ていきなり始める人もいると聞く。それでは上達に時間がかかるし、安全面でも心配がある。もし重大事故が発生したら、せっかくのムーブメントに水をさしかねない。そうした面からも、しっかり普及していくことが大切だ。潜在的に魅力あるアクティビティだけに、よりよく取り入れて地域振興にも役立ててほしい。



PROFILE

森林ジャーナリスト

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。

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