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《再造林率100%》佐伯広域森林組合が実現できる、その鍵とは?【前編】

費用高、人手不足、獣害、厳しくなる気象条件に加え、見えない未来の利益…。数々の壁を乗り越えるべく、再造林率100%を達成している森林組合を森林ジャーナリストの田中淳夫が紐解く。

守られない原則、失われる持続性
このままでは林業は壊滅する

こう思わざるを得ないのが、再造林率の実情だ。伐採跡地の約3割しか再造林が行われていないのでは、林業の持続性は失われてしまう。

なぜこんな状態になってしまったのか。国産材生産量の拡大が叫ばれ主伐(皆伐)面積が増えている一方で、なぜ再造林の原則がなかなか守られないのか。

その理由を考察すると、まず再造林に金がかかることが浮かぶ。森林所有者は、ただでさえ木材価格の下落で利益が少なくなったのに、再造林費用を負担したら純益はほとんど消えてしまうため渋りがちだ。

また素材生産と比べて造林や育林作業は機械化が進まず重労働で、効率が上がらないため収入も低水準。結果、慢性的な人手不足に陥っている。再造林を実施しようにも引き受け手がなかなか見つからない。

またシカ害などで、植えた苗が全部食われてしまう可能性だってある。さらに気象の激甚化が進み、水害、干害と、植えた苗が育つとは限らない。

さらに植えても次の収穫まで数十年。林業の衰退が続く中、将来的に利益が出るのか、心もとない。また自分の代では収穫できないのに、後継者がいない――。

その他いくつもの事情が考えられるが、「伐って植えて育てる」再造林は林業の大原則だ。これをないがしろにして未来はない。

だが、再造林率100%を誇る森林組合がある。大分県の佐伯広域森林組合だ。どのように実施されているのか、その取り組みから学ぶべき点を考えてみたい。


再造林率・実働人数・年収
あらゆる数字が高水準


佐伯広域森林組合はコンテナ苗の生産も手掛けている。

佐伯広域森林組合では、自ら伐採を手掛けた跡地すべてを再造林している。まさに100%達成だ。それだけにとどまらず、管内で素材生産業者が伐採した後の造林も請け負っている。佐伯市全体では伐採跡地の85%以上を再造林しているそうだ。

大分県の再造林率は、2022年で73.5%と全国水準よりかなり高率だが、佐伯市および佐伯広域森林組合はさらに群を抜く水準を保っているのである。

組合の年間造林面積は、平均で300haを優に超す。しかも植えるだけでなく、その後5年間の下刈りなど育林作業もしっかり請け負う。そのための体制は、直営班が3班/15人、出来高払いの請負班が34班/115人と大所帯である。


植えたばかりの造林地(写真は同森林組合の鵜戸幹人事業部長)

驚くのは、請負班の年収だ。1000万円以上の班員が毎年4、5人いるのである。500万円以上では半数近くに達する。副業的に仕事を手がける高齢者などを除くと、若手はたいてい高収入だ。そのため直営班から独立する人も少なくない。

何かと再造林に消極的な状況が蔓延している林業界で、なぜこれほどの高水準で実施が可能なのだろうか。



「5年間、見守ります」が鍵
高効率・高収入な佐伯型循環林業

佐伯広域森林組合は4700人の組合員数を誇り、原木取扱量が年間20万㎥を超え、共販事業も行い管内の原木流通の大半を担う。大規模な製材工場を抱えるほか、バイオマスチップも出荷する。

「私が組合長に就任した15年前、同時期に大型製材工場が稼働し始めました。現在は原木消費量が約11万㎥、製材品生産量が約5万㎥の規模です。すると原木がたくさん必要だから伐採面積も増える。その跡地には当然植えなくてはいけませんから、そのための体制をつくることにしました。そこで提唱したのが『スギ林は50年で伐って使ってまた植えるサイクルを確立させること』。これを“佐伯型循環林業”と名付けました。」と戸髙壽生組合長は語る。


5年目の造林地(写真は同森林組合の今山哲也参事)

しかし、金銭面はどのようにカバーしているのか。

まず国の補助率は、昨年度から72%になった。そこに大分県、そして佐伯市の再造林助成金を加えると88%までカバーできるという。個別の再造林条件にもよるが、他地域とそんなに大きく変わるわけではない。残り1割ほどは森林所有者が負担しなくてはならない。

ただ大分県には、森林所有者や素材生産業者、原木市場、製材工場などが拠出する森林再生基金を扱う大分県森林再生機構が設立されている。この基金から再造林事業にヘクタール当たり5万円以内の支援金が出る。さらに製材を納めているタマホームからの助成も加わる。これで、再造林費用はほぼカバーされるのだ。

森林所有者は基金へ出資していますが、再造林時に直接的な支出がほとんどないため負担感が軽減されます。それに植えた後の下刈りなど育林作業をまるっとパッケージで引き受けますから、その点も安心されます。」(今山哲也参事)

再造林作業は、車両系一貫作業システムを採用している。伐採〜木材搬出を終えると、そのまま機械も使って地拵えを行うのだ。主伐では原則的に全木集材が行われて、短コロなどは道沿いに集めておき、バイオマス燃料として販売するため集材される。枝葉も伐採後に林縁に片づけられている。その後すぐに造林班が入り植林するわけだ。

植栽本数は1haにつき2000本で、コンテナ苗を使うので春秋年に2回の植林が可能、活着率もよい。なおコンテナ苗の生産も組合内で行い、年間約30万本を供給する。仕入れる分も含めると取扱量は70万本以上になるという。

これで終わらない。植えた後は獣害対策用ネットの設置へと続く。そして夏には下刈り作業がある。さらに除伐、間伐、2年目以降の下刈りと切れ目なく仕事があり、スケジュールがしっかり組まれているのだ。それによって班員の収入も増えるし、何より安定した働き方が可能になる。それが高収入を生み出しているのだ。

 

PROFILE

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など多数。最新作は、明治の元勲が頼るほどの財力を持ち、全国の山を緑で覆うべく造林を推し進めた偉人・土倉庄三郎を描いた『山林王』(新泉社)。


写真・文:田中淳夫

問/佐伯広域森林組合

FOREST JOURNAL vol.16(2023年夏号)より転載

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