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林業者の取り組み

《再造林率100%》育林造林で新たなビジネスチャンス。起業相次ぐ造林専門業。【後編】

「伐って植えて育てる」再造林は林業の大原則。これを疎かにして未来はない。そんな中、再造林率100%を達成している森林組合がある。その仕組みを森林ジャーナリストの田中淳夫が紐解く。

メイン画像:管内の木材流通を担う組合の共販所。

 

やりがいをつくり、仕事を生む
信頼までもつなぐ好循環な仕組み

大分県の佐伯広域森林組合により“佐伯型循環林業”、重要なのは次の点だ。「同じ班が同じ山を植林後も含め5年間担当します。毎年同じ山に入り、下刈りや必要な補植もします。請け負った現場は、必ず“山”にするという気持ちを請負班の人たちに持ってもらうのです」(鵜戸幹人事業部長)。

同じ山に通えば地形や地質などを覚え要領が良くなり、それだけでなく自分が植えた苗の育つ様子を見守ることになる。また5年もの間、山を預かる気持ちになれば管理を長期視点で考え、下刈りや除伐の頻度も調整できる。自らの判断で作業を行えることは、やりがいにも通ずるのだろう。他人の山でも自分の山のように愛着と責任を持って、丁寧な仕事を心掛けるようになるのだ。

一般には、植林、下刈り、間伐などの仕事は個別に請け負うことが多い。作業班も、どこの山で、いつどんな作業を誰が行うか、直前まで知らないケースがある。毎回違う現場に派遣されるのでは作業効率も上がらない。その点、この組合では年間を通してシステマティックにスケジュールを組めて効率よく仕事が行うことができ、収入も増やせたのである。

造林や育林でも十分な収入とやりがいがあれば、新規参入する人も増える。組合の直営班で仕事の要領を学んだら、独立して請負で仕事をする人が多いというのもこの理由からだろう。だから人手不足にも陥らず、再造林率100%を可能にする体制が組めるのだ。

なお森林所有者には、再造林作業終了後に現場の写真が送られる。この報告があることで、自分の山は確実に再造林されて5年間世話をしてもらえると信頼されるのだ。その信頼と安心感をもとに、次の山の伐採も依頼するようになる。伐って植えるだけでなく、その後の育林を確約することが、素材生産事業の仕事も生み出している。自ら好循環をもたらしているのである。

佐伯広域森林組合の事例でわかるように、造林・育林の仕事も、やり方次第で高収益が可能なようだ。造林だけでなく獣害ネットの設置と5年間の下刈りまでセットにし信頼を得ることで、収益を上げられるのである。


フル稼働する製材工場。



起業が相次ぐ造林専門業
再造林がもたらす林業の未来とは

近年になって、造林と育林を専門に請け負う林業会社がいくつも登場している。

和歌山県田辺市の株式会社中川は、仕事内容を造林と育林に絞って行う林業事業体だ。ゆえに「木を伐らない林業」を掲げている。また岡山県西粟倉村にある株式会社百森も「伐らない林業」会社。村内森林の所有者との連絡や交渉、山林調査、作業道設計、間伐など施業の発注および検査、補助金申請などまで行う森林管理サービスを担当している。

両社が共同で設立した会社が、東京都千代田区に本社を置く株式会社GREEN FORESTERSである。事務所を栃木県と新潟県、茨城県に置き「青葉組」の名で造林と育林に特化した事業を展開する。雇用形態も3日働いて1日休暇のサイクルと特色がある。

また森林管理のコンサルティング業務や買取サービスも手掛け始めた。伐採後に再造林せずに放置された山や相続で困っている山を1万円で買い取るのだ。その後は森林再生など適切な管理を行い、カーボンクレジットや水源保全などに供する。原資は国や自治体の助成金の他、企業の協賛金を予定しているという。


バイオマスチップ生産も手がけ、丸太を余す所なく活用する。

林業は木材生産だけではなく、その後の森づくりも含めての産業である。そして森づくりは、防災や生物多様性の維持などにも重要な役割を担う。現在の経済や社会状況では厳しい面もあるかもしれないが、主伐が拡大している今こそ、造林と育林もビジネスチャンスと捉えるべきだろう。さもなければ林業の将来はないのだ。



PROFILE

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など多数。最新作は、明治の元勲が頼るほどの財力を持ち、全国の山を緑で覆うべく造林を推し進めた偉人・土倉庄三郎を描いた『山林王』(新泉社)。


写真・文:田中淳夫

FOREST JOURNAL vol.16(2023年夏号)より転載

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