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バイオマス本気なら、注目すべきは「中小施設の熱利用」! 燃料調達・加工のメリットとは

バイオマスエネルギーと言えば、まず浮かぶのは発電だ。しかし注目すべきは「中小規模の熱利用」だという。円安リスクや燃料の加工度など、森林ジャーナリスト田中淳夫が着目点を解説。連載コラム「希望の林業」。

バイオマスエネルギーは
熱利用から

ヨーロッパに視察旅行に行った際、目についたのは街角のバイオマスボイラーだった。

ゴミ焼却施設で巨大なボイラーと町全体への熱供給システムを見学したのを皮切りに、ショッピングセンターの一角や中学校、老人ホームにもあった。

さらに山間部の家々にも2、3軒ごとで共有するチップボイラーが設置してあった。それらの設備で作られた温水が各戸に配管されたパイプで送られ、給湯と暖房に供される。燃料はチップで、定期的にトラックで運び込まれる。

私がそれらを見たのはスイスだが、ヨーロッパ各国に広まっているという。これは気候変動を抑制するための脱炭素の動きであると同時に、エネルギー自給でもある。とくに最近の燃料価格が高騰しているためバイオマスへの切り替えが進んでいる。



日本でバイオマスエネルギーと言えば、まずバイオマス発電が頭に浮かぶ。その場合、発電だけで熱利用をほとんどしていない。欧米ではバイオマス発電により生産される熱と電力の両方を併給するのが普通で、木材の持つエネルギーの約8割は利用するが、発電だけでは2~3割に留まるだろう。

しかも大規模な発電施設になると、必要な燃料は莫大な量となり国内で調達が難しくなる。現実に日本は燃料の多くを海外から燃料を調達している。ベトナムやカナダの木質ペレット、マレーシアのヤシ殻(PKS)などだが、遠距離を輸送するために化石燃料が費やされる。これでは脱炭素に結びつかないし、円安により価格高騰を招いた。

やはり日本が考えるべきは、中小規模の熱利用だろう。それなら国内で必要量を調達できるうえ、農山村地域の振興にもなる。すでに各地の温泉施設や農業用ハウス、福祉施設などにバイオマスボイラーを導入する動きは目立ち始めている。



もう一つ気をつけたい点がある。それは燃料の加工度だ。

たとえば木質ペレットは、木材を細かな粉にして高圧でプレスして固めるが、その過程で結構な電気エネルギーを消費する。ある計算によると、木の持つエネルギー量の約半分を製造に消費していた。

もちろん木質ペレットは保存や輸送が簡単で、燃費も安定している、そしてボイラーへの投与を自動化しやすいなど利点もある。薪、チップ、ペレット、使い勝手と経済面、それに環境への寄与のバランスを考えて燃料の形態を選ぶべきなのである。

なお最近は、丸太をそのまま燃焼させるボイラーも登場してきた。ドイツ製の「ガシファイヤー」や日本製の「ゴロン太」などは、丸太を最初に投入したら長時間燃え続ける。丸太は乾燥させる必要があるし、火付けに若干手間はかかるものの、その後は燃料継ぎ足しは少なくて済む。そうした技術開発も取り入れたい。

林業サイドも、乾燥など燃料の質の確保や配送システムの構築など課題は少なくない。しかし本気でバイオマスの利用の拡大をめざすなら、発電にこだわらず中小施設の熱利用に注目すべきだろう。

PROFILE

田中淳夫

静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。

著書

『虚構の森』


2021年11月30日発行/新泉社

気候変動、生物多様性など、地球的な環境問題が語られる昨今、森林はそれらの大きなキーワードになっている。だが、森林の役割は異論だらけで、果たして何が正解なのか、よくわからない。本書は、そうした思い込みに対して、もう一度一つ一つ検証を試みた。そして林業の役割にもの申す。植林や間伐がCO2の吸収を増やすのか、森があると洪水や山崩れを防げるのか。不都合な真実と真の環境問題の解決を考える。


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