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フィンランド林業の光と陰【後編】国内で反対運動? 不振の日本林業は何を学ぶべきか

日本林業の「憧れの国」フィンランドも、森林持続可能性の危機に瀕している。曲がり角にある林業先進国から、日本が学ぶべき視点とは? 森林ジャーナリスト・田中淳夫が考える林業の未来、フィンランド編【後編】。

 

 

戦後フィンランドの「陰」
「持続可能な林業」の背景とは

国土の約7割が森林に覆われている国フィンランド。森林率は世界でトップクラスと言ってよいが、その森林のほとんどが戦後生まれだということを知っているだろうか。

樹齢で見れば、多くが60年未満だ。樹種も、ほとんどがヨーロッパアカマツとヨーロッパトウヒ、それにシラカバぐらいに限られていて、極めて単調な森が広がっている。

もちろん最初からではない。北極圏に近いとはいえ、原生林では樹種も樹齢もバラエティに富み、なかには樹齢500年を超える大木もあった。しかし、戦後に急拡大した林業によって、古くからの森は伐られ、植え替えられたのだ。

木材生産量が増大しているのに森林面積や蓄積が拡大しており、持続可能な林業とされる事情もよく背景を知る必要がある。

造林は伐採跡地だけでなく、沼地に大規模な排水路を入れて乾燥させ、その土地に植樹することで森林を増やしてきたのだ。その結果、湿地帯の生態系は大きく破壊された。水質の悪化や泥炭の流出も報告されているし、排水された土地に植えられた苗木も、必ずしも順調に育っているわけではないという。不成績造林地も少なくないのだ。



加えて皆伐面積も広大だ。一地域で何万ヘクタールに及ぶ地域もあり、ヨーロッパ最大だそうである。木材生産は、2017年は7200万立方メートルだったが、2025年までに8000万立方メートルに引き上げる計画が進行中で、まだまだ伐採量を増やしていく予定だ。

フィンランド政府は、木材生産量は森林成長量より低く抑えていることなどを理由に、問題ないと強調しているが、伐採増強計画の進む地元では反対運動も頻発している。北部のラップランドでは2005年から林業者とトナカイ放牧者との間で地域を二分するほどの激しい論争が繰り広げられた。これは「森林戦争」と呼ばれ、10年にようやく伐採予定地の大幅な縮小で合意して両者間に和平が結ばれた。

木材産業でも生産される木材に対する不協和音が強まっている。年々伐り出された木材は細くなり、また施肥などによって早く育てた木々は、強度不足で建築材に向かないからである。かといって製紙用に回せば、価格は安くなってしまう。

 

フィンランド林業も曲がり角?
日本が学ぶべき視点とは

これまで持続的で経済的にも成功した理想の林業を展開しているとされたフィンランド。しかし曲がり角を迎えているようだ。機械化とIT化による木材の大量生産を可能にしたことが、資源の過剰採取を招いてしまったのである。

原生林や湿地が失われると、景観へも大きな影響が出る。「森と湖の国」という看板にも黄信号が灯ってしまった。

不振の日本林業を何とかしたいと思うと、ついどこかにロールモデルはないかと探してしまう。そして成功した部分ばかりに目を向ける。しかし、その成功の裏になにがしかの不都合な面も生じているものだ。

モデルとするからには、その両面に目を配りつつ、それを日本の条件に落とし込んでバランスを取ることを考えるべきだろう。さもないとゃこんなはずではなかった」と不満ばかりを抱え込んでしまうだろう。

フィンランドも日本も、どんな森を未来に残せるか、今が正念場ではないか。日本が学ぶべきは、そうした目先にとらわれず長期的な視点だろう。

 

PROFILE

田中淳夫

静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)、『獣害列島』(イースト新書)など多数。奈良県在住。

著書

『虚構の森』


新泉社/2021年11月発刊

気候変動、生物多様性など、地球的な環境問題が語られる昨今、森林はそれら の大きなキーワードになっている。だが、森林の役割は異論だらけで、果たして何が正解 なのか、よくわからない。 本書は、そうした思い込みに対して、もう一度一つ 一つ検証を試みた。そして林業の役割にももの申す。植林や間伐がCO2の吸収 を増やすのか、森があると洪水や山崩れを防げるのか。不都合な真実と真の環境問題の解決を考える。




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