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生産・流通の効率化と木材の販売額アップへ! ICTハーベスタの可能性とは?

加速化する林業のICT化は素材生産で活躍するハーベスタにも広がっている。北海道内の産官学が取り組む「スマート林業EZOモデル構築協議会」に参画する住友建機に、次世代型ICTハーベスタについて聞いた。

メイン画像:ベースマシンは、ハーベスタ仕様の林業専用機「SH135X-7」。低燃費モードのまま最高回転でチェーンソーを使える機能など現場の声を反映させている。

スマート林業EZOモデル構築協議会
「北海道らしいスマート林業」の検討を目的に産官学連携で平成3 年度に設置。地理的条件が比較的良く、製材所への丸太の直接取引が盛んな北海道の林業が、ICT化で先行する北欧と重なるとして、作業効率化に向けた実証試験を令和2~4年度に実施した。道庁や道内の森林組合、市町など10団体が参加。建機メーカーなど14社が協力している。
※数値はEZOモデル構築協議会資料から引用

「最適採材」で
原木価値を最大に


実証試験にはKESLA社がハーベスタの最新機「26RH-III」(日本未発売)を無償提供。技術者が来日しGPS設置など技術指導をした。

「ICTハーベスタの活用は、新たな機械を導入するのではなく、造材に関係するデータ的な部分にもっと着目し、それを川上から川下までのさまざまな現場でもっと活かそうという取り組みです」。そう語るのは住友建機マーケティング部の河上孝さんだ。

20年程前に日本に上陸し、今や素材生産現場で欠かせない存在となったハーベスタ(HV)。国内では伐倒木の枝払いや玉切り、材積をはじめとする造材データの記録や集計を中心に活用されている。しかし「ICT化を進めることで、さらに多くの機能を引き出せる」という。

その1つが「バリューバッキング」と呼ばれる最適採材機能。原木価格や製材所での需要動向などを踏まえて、1本の木から採れる丸太の販売価格が最大になるように自動で採材する機能だ。そのためには樹種や材長、末口直径といった条件で細かく異なる原木単価や目標本数といった採材指示情報をHVに取り込む必要がある。

河上さんはその方法についてこう説明する。「林業先進国として知られるスウェーデンで開発された『スタンフォード(Standard for Forest Machine Data and Communication)2010』という共通プラットフォームを使ってHV側に造材指示を送ります。弊社が提供するKESLAをはじめ、日本国内で使われている北欧製HVにもスタンフォードに準拠したソフトが搭載されています。しかし国内ではその機能を活かし切れていないのが実情です。今回の実証試験は、日本の現場でどの程度スタンフォードを活用できるかを確認することも大きな目的でした」。

実証試験ではバリューバッキングの要となるHVによる材の測定精度を徹底検証。バリューバッキングに欠かせない細り予測では、電子林尺を使った精密実測を組み合わせる補正方法を実施。またHVによる検知では、人力検知や写真検知との比較検証、径級に応じた樹皮率補正値の設定などで実用レベルの精度を確認できたという。

 

素材生産&流通コストを削減
現場提案で大きく広がる活用法


ハーベスタによるカラーマーキングを実施。製材、合板、パルプの3種類の用途に、径級と長さを加味して「赤」「青」「赤青」「色無し」の4種類の色分けを設定した。

こうして行われたバリューバッキング機能の活用で、カラマツ主伐林分での実証試験では造材コストを従来より1㎥当たり478円削減できる結果を得られた。一方、木材販売額は高価格帯の丸太の採材増により、同875円増やせる結果になったという。

河上さんは「経験値が浅いオペレーターでも木の価値を最大限に生かす採材ができるバリューバッキング機能の強みは大きい」と成果を話す。

実証試験では流通コスト削減も大きな目的だった。そこで仕分けと積み込みの効率化や製材所での再検知の省略などを目的とした木口へのカラーマーキングも試行。造材の際にハーベスタヘッドから専用スプレーをカラマツ丸太の木口に噴射する方法だ。

製材、合板、パルプの3種類の用途に、径級と長さを加味して「赤」「青」「赤青」「色無し」の4種類の色分けを設定。色分け指示情報を取り込んだHVで造材をして木口にマーキングし、オペレーターの視認性などを確かめた。

「KESLAの場合、ローラー式HVのオプションとしてマーキング機能があります。これまで国内ではあまり着目されなかった機能ですが、今後ICT化に向けて材の流通形態が見直されることで、有効な使い方が生まれてくると思います」と河上さんは展望する。

人材育成&データ共有が鍵
道外への展開にも期待!


ハーベスタによる材の測定精度を徹底検証。細り予測では、電子林尺を使った精密実測を組み合わせる補正方法を実施した。

一方で課題も挙げる。「HVによる検知データの活用には川中側の製材所や木材市場の理解と協力が必要です。木口へのマーキング機能にしても、2cm括約の検知が一般的な日本では活用が難しい部分がある。ICTハーベスタの普及にはそうしたソフト面での運用体制の整備が欠かせません」。

人材育成も重要だという。「北欧では製材所が採材指示の電子ファイルを作って伐採事業者にネットで送り、オペレーターはその指示に基づくHV側の提案を受けて造材する流れが一般的です。国内では、まだなじみが薄い専用ソフトを使って、こうしたファイル作成などの実務ができる人材育成も求められます」。 

今回の実証試験では事前に設定した成果目標を達成できない取り組みもあったという。しかし河上さんは得られた知見を産官学で共有し、現場にフィードバックしていくことで、北海道以外の地域を含めてICTハーベスタの活用が大きく広がる可能性を挙げる。

「HVに送られる作業指示データは地理情報ともつながっています。Wi−Fiに乗せてデータ転送をする技術などを含め、国内建機メーカー各社でさらに技術開発を進めていきたい。今回の成果や課題、最新の知見をこれからも発信し、HVの可能性を引き出していきます」。ICTハーベスタが素材生産を担う時代が日本でも近付いている。

 

問い合わせ

住友建機株式会社
TEL:03-6737-2600


取材・文:渕上健太

FOREST JOURNAL vol.15(2023年春号)より転載

Sponsored by 住友建機株式会社

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