林業者の取り組み

山から木がなくなる!? 早生樹植林の最前線を追う

現在、日本の林業現場で進んでいる主伐。山の木は全部伐るわけだが、その後の再造林には、再び50年以上も木を育てられるのか、再造林しても利益が出ない可能性があるなど、様々な課題がある。それらの課題を解決する道はあるのか?(前編)

林業の課題と解決策

現在、日本の林業現場で進んでいるのが主伐である。戦後植林されたスギやヒノキ、カラマツなどの人工林が伐りどきを迎えたとされるからだ。主伐となると、基本的に山の木は全部伐るわけだから、その後の再造林が課題となる。

しかし、これまでどおりスギやヒノキ、そしてカラマツなどを植えてよいのか……という悩みがある。再び50年以上、これらの木を育てられるのか?そして現在の木材価格は下落しており、再造林しても利益が出ない可能性も高い。

そこで注目されているのが早生樹の植林だ。生長が早く、20年から30年で製材に向いた太さ(概ね幹の直径30センチ)に育つ樹種だ。これまで50年~80年だった林業のサイクルを早めることができると期待されているのだ。

そのうえ次回の主伐まで50年以上かかる樹種の場合、山主の世代は代わっている可能性が高い。後継者が林業を引き継いでくれるか不透明だ。だから山主は再造林を躊躇する。しかし早く育つのなら植えた人が収穫できる可能性も出てくるし、需要や材価の予測もある程度しやすくなるだろう。

早生樹の注目研究は熊本県

早生樹の研究は、国の研究機関や大学、各県の研究所など公的機関で行われている。なかでも注目すべきは熊本県の研究だろう。

熊本県の林業研究指導所は、30年近く前から早生樹研究を行っており、52種もの樹木による生長比較林を造成した。その結果、センダンを有望とした。センダンは落葉広葉樹でアジアに広く分布し、日本へは古くに移入されたため在来種として扱われている。

条件が良ければ15年で幹直径が30センチになる。熊本県で試験植林した結果は、約20年で直径50センチになった。また材質は堅くてケヤキやマホガニーに似ており、欧米ではフローリングなどの内装材や家具材用に使われている。日本でも家具材なら市場で1立方メートル単価が4~5万円を期待できるという。スギ材の4倍近い。

しかし日本では、街路樹や公園などの緑化木であり、林業用樹種ではなかった。なぜならセンダンの幹は枝分かれするため、真っすぐな材が長く取れないからだ。そこで植えて2年間ほど伸びてきた側芽をかき取ることで幹を通直な4メートルに育てる技術を開発した。そして育林条件も、生育環境は斜面上部より谷筋や平地で生長がよく、日照が重要なことや施肥の必要性などの知見を得た。

一方で「獣害、とくにシカの角こすりの被害を受ける」「こぶ病の発生がある」などの課題もある。また苗の生産方法も開発しなければならない。挿し木はできず、種子の果肉に生長抑制物質を含むので果肉の除去が必要だ。自然界では鳥が食べて排出することで芽を出すのだが、植林するには人為的に行わねばならない。

早生樹植林で注目されているもう一つの樹種は、コウヨウザンだ。

コウヨウザンは「広葉杉」と記す中国産の常緑針葉樹で、25年で胸高直径が30センチ以上になる。材質はスギより強度があり、乾燥も容易で反りや割れが出づらい、シロアリに強い…などの特徴がある。日本には江戸時代や明治時代にも導入されて各地で造林された。


ただ、木肌が若干荒く、また節の周辺に休眠芽の痕跡が点々と出る。これらの点は木肌の美しさにこだわる日本人好みではないのか、根付かなかった。

しかし、近年の住宅建築は木肌を見せる「真壁構法」ではなく、壁にクロスを張って柱や梁を見えなくする「大壁構法」が主流だ。また合板などの用途も増えた。それならコウヨウザン材でも何ら問題はない。むしろ硬い材質などは建材として優良だろう。

広島県庄原市には、約60年前に造林された1ヘクタール弱のコウヨウザンの森があった。

広島県林業技術センターでは、生長速度のほか樹幹が真っすぐで太さが変わりにくいことや、ヒノキ並みの強度であるなど、十分建築材に使えることを確認した。

苗は種子から育てる実生苗だが、今のところ種子は輸入である。ただ樹齢50年を超えた木を伐採した切り株から数年にわたって萌芽(ぼうが)が出る。この芽を育てれば再植林はせずに済む。スギやヒノキに代わる建築用材として有望かもしれない。
 

 

PROFILE

森林ジャーナリスト

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。

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