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「再造林」の前に考えるべき「3つの選択肢」とは? 以前と同じ人工林にして良いのか

日本林業で進む再造林。現在と同じ単層林を造成するのも一つの方策だが、林業向きでないと考えられる伐採跡地は、今後どうするべきなのか? 森林ジャーナリスト・田中淳夫が考える林業の未来。

 

日本林業の将来を俯瞰すると?
森づくりの目的を見極めて

現在の林業界の大きな課題は、再造林。主伐(皆伐)が進んで無立木地が増えているのに、跡地に植林がちゃんと行われているところは3~4割だという。このままでは災害につながる恐れもあるし、何より次世代の木がなければ林業の持続性を失ってしまう。一刻も早く、再造林をすべきだろう。

だが、ここは少し立ち止まって日本の林業の将来を俯瞰してみよう。主伐したのは、おそらくスギやヒノキ、カラマツなどの樹木の一種類だけを同時期に植えた人工林だ。こうした森は、ほぼ同じように育った木々で成り立っているので樹冠の高さも同じだ。それで単層林と呼ぶ。そんな森の伐採跡地に再び同じ樹種の苗を一斉に植えて、以前と同じような人工林にするべきなのか。



ここで考えたいのは、森づくりの目的だ。やはり木材生産を求めるのか。防災なのか。生物多様性なのか。あるいは気候変動など地球環境に寄与したいのか。

日本の人工林面積は、全森林の約4割、現在は約1030万ヘクタールとされている。その多くが単層林だ。ところが林野庁の描く日本の森林の未来図では、単層林は660万ヘクタールに誘導する構想になっている。つまり370万ヘクタールの森は、元と同じ単層の人工林に戻さないでよいとされているわけだ。

その背景には、戦後造林した土地の中には、十分に木が育たなかったり搬出がむずかしかったりと林業に向いていない土地も多くあったからだ。具体的には、気候や土質が合わない、山肌の傾斜が急すぎる、道が通せない奥地……など、林地生産力が低い土地である。当時は材価も高く造林ブームだったから、無理に植えたのだろう。

また人口減少局面に入った日本では、木材需要も減少傾向にある。だから木材生産が主目的である単層林は、これまでと同じ面積がなくてもよいと考えられるのだろう。加えて単層林は、風水害や病虫害に弱いという問題もある。

そして森林所有者の意向もある。材価の下落で林業経営の意欲を持てない所有者が増えているところも、単層林をつくる意義がない。そうした山林は自治体が預かる方向性の森林経営管理法も定められたが、そこでも目標林形は単層林ではない。

もちろん地質や地形がスギやヒノキなどの造林樹種に適していて、木材生産を続ける意欲もあるところでは、現在と同じ単層林を造成し林業振興をめざすのも一つの方策だ。だが、林業向きでないと考えられる林地(伐採跡地)は、今後どうするべきなのか。



林野庁の構想としては、まず天然林にもどすことが考えられている。豊かな自然を確保し、木材生産よりも景観を重視した森づくりを行うのだ。稀少な生物が生育・生息する森や、地域住民の憩いの場にしようという発想だろう。

そしてもう一つ、育成複層林に誘導するという指針がある。複層林は現在100万ヘクタール程度存在するが、林野庁は将来的に天然林の一部も複層林に取り組みつつ680万ヘクタールまで増やすことを見込んでいる。

では、育成複層林とは何か。この点について次回考えてみよう。

 

PROFILE

田中淳夫

静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。

著書

『獣害列島』


860円/2020年10月10日発売/イースト新書刊

獣害は、今や農業被害だけではない。シカやカモシカ、ウサギなどの野生動物は、再造林した苗を食い尽くし、またクマとシカは収穫間近の木々の樹皮を剥いで価値を下落させるなど林業に甚大な被害を出しているのだ。そして森林生態系を破壊し、山村から人を追い出し、都会にまで押し寄せるようになった。なぜ、これほど野生動物が増えたのか、日本の自然はどう変わったのか、この緊急事態に何ができるのか。現場からの声とともに届ける。

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