新たな「森林・林業基本計画」に向けて林野庁が意見を募集中! 現行計画の特徴とは?
2020/07/15
林野庁は6月30日、令和3年に予定される「森林・林業基本計画」の変更に向けて、一般からの意見の募集を開始した。そこで募集の内容などを整理するとともに、現行計画の特徴がわかる学術論文を紹介したい。
そもそも森林・林業基本計画とは?
「森林・林業基本計画」とは、「森林・林業基本法」に基づき、国内の森林・林業施策の基本方針を定めたもの。森林・林業をめぐる情勢の変化に対応するため、おおむね5年ごとに変更されてきた。今後、平成28年5月に策定した現行の基本計画から5年目にあたる令和3年5月に向け、林政審議会による議論・検討が進められる予定だ。今回募集する意見も、その議論の場で活用されるという。
意見は郵送及び林野庁のウェブサイトから投稿できる。募集期間は令和2年6月30日~ 令和2年7月20日まで(17時00分必着 ※郵便の場合は当日消印有効)と若干タイトだが、募集している意見の分量自体が200字程度までと短めなので、今からでも遅くはないはず。国へと意見を訴える絶好の機会だ。意見を募集する分野は下記の通りだ。
・森林・林業・木材産業政策全般
・森林の整備・保全
・森林環境・生物多様性保全
・山地災害防止
・林業経営
・特用林産(きのこ、竹、漆等)
・山村振興・地方創生
・森林の多様な利用
・木材生産・加工流通
・木材利用・木材需要
・新型コロナウイルス感染症による影響
・その他
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平成28年森林・林業基本計画とは、
どのようなものだったのか?
意見の提出にあたって、現行の基本計画について理解したいと考える方もいるだろう。そこで参考になりそうな論文を一本、簡単に紹介したい。北海道大学森林政策学研究室の柿澤宏昭教授の論文「平成28年森林・林業基本計画と森林・林業基本法についてのいくつかの考察」だ。
同論文ではH23年計画との比較を通じて、H28年計画の最大の特徴を「林業の成長産業化を基本に据えていること」と指摘。さらに同計画の項目立てを読込むことで、「その内容は森林施業及び林地の集約化及び森林関連情報の整備・提供ともっぱら施業集約化のみに焦点が当てられている」と分析する。
民間事業による国有林の伐採権取得を可能にする「樹木採取権制度」も、こうした方向性に沿うものだといえる。この流れはR3年計画でさらに加速することが予想されるが、その是非は意見が別れるところだろう。
一方で、同論文ではH28年計画にいくつかの疑問点も提示している。そのひとつが複層林施業の評価についてだ。H28年計画では複層林化が進まない理由をもっぱら技術普及の問題としているが、より抜本的な問題は、複層林の実現を「具体化するための指針なりモデルが提示されてこなかったことではないか」と指摘。
こうした状況下では、現場技術者が森林所有者に複層林化を進めることは困難であると述べている。このあたりもR3年計画で議論すべきポイントだろう。
同論文は総合学術電子ジャーナルサイト「株式会社J-STAGE」で全文を閲覧できる。意見を提出するしないにかかわらず、多くの人に読んでいただきたい内容だ。
DATA
文献情報
柿澤宏昭(2016)平成28年森林・林業基本計画と森林・林業基本法についてのいくつかの考察.林業経済 69(6): 8-14
文:松田敦