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造園業と林業って何が違う? 場所・年齢・道具等で考えてみた、自分に合うのはどっち?

林業と造園業の違いとは? 造園業にも携わったことがあり、現在は森林組合に所属・林業歴10年以上の林業ワーカーに両者の違いを解説してもらった。木を扱う仕事でもこんなにも違う両者、ぜひ仕事選びの参考に!

<目次>
1. 造園業と林業の共通点
2. 【自然との関わり具合】働く場所がこんなにも違う!
3. 【人との関わり方】営業色が強め? 
4. 【働く年齢】年齢層が広い・息が長い  
5. 【道具を比較】初期費用のハードルで軍配があがったのは……!? 
6. 自分により合っている職種はどっちだろう? 

 

同じ「木」を扱う造園業と林業
共通点は何だろう

まずはお互いの共通点から挙げていこう。

一番の共通点は、造園業も林業も共に樹木を扱うスペシャリストであること。作業の内容や、仕事で求められているものは違えど、ここは外せない。また、自然と向き合う仕事である。相手が樹木である以上、自然が好きな人にはぴったりの職業と言える。

始めるための特別な資格は必要ない点も共通点だ。つまり体が資本な職業なのだ。ただし、現場への移動のために、車の運転免許証はあったほうがいいだろう。無くても仕事はできるかもしれないが、あれば現場の移動時に使えるため、スムーズに作業できる。

始めるための資格は必要ないが、より仕事の高みを目指すためにも多数資格があるのも共通である。チェンソーや草刈り機械などの操作資格は林業では必須だし、造園業でもあれば重宝されるだろう。

フォレスタ―や造園施工管理技士といった、より専門的な知識が必要とされる資格があることも両者の共通点だ。
 


 

ある程度の共通点がわかったところで、2つの業種の違いについてみていこう。
主に「自然との関わり具合」「人との関わり具合」「いつまで働けるか」「使用する道具」の4つを解説していく。
 

自然との関わり具合
働く場所の違い

林業も造園業も樹木を相手にして、自然と向き合う仕事であることは前述したとおり。しかし、両者の作業フィールドは大きく異なる。

林業のフィールド

林業は人里離れた山林での仕事が多い。「自然が好きで好きでたまらない」「人の気配がしないような場所で仕事がしたい」そういった場合は林業がうってつけの職業だ。

また、平らな現場はなく、でこぼこを含めた斜面での活動も特徴的だ。踏みしめる一歩一歩はトレーニング感覚に近く、体の鍛えられようはこの上ないほどである。

造園業のフィールド

一方、造園業は人の生活圏内で行われる。公園や一般の家の庭の手入れが主流な造園業は、もっと自分たちにも身近な場所に存在する。自然は好きだけど「人気のない山に行くのはちょっと……」「やっぱりコンビニは生活に欠かせないよね」このような感じであれば、同じ自然を相手にする仕事でも、造園業をおすすめする。
 


 

自然とのかかわり具合がわかってくれば、自分に向いている職業もわかってくるだろう。自然とダイナミックに関わりたければ林業、人との生活圏内で仕事がしたければ造園業といった風だ。
 


人との関わり方
コミュニケーションの重要性

次は人との関わりについて。自然を相手に仕事をしたい人の中には、人間関係で悩んでいる人も多いかと察する。

なぜなら自然を相手にすれば、人間関係から解放されるからだ。自然は嫌味を言わないし、高圧的な態度をとることもない。ただそこにあるだけだからである。

ただし、仕事というくくりで見たときに、やはり人との関わりは少なからず存在する。造園業は一般の家の庭での作業が多い職種。ひとつ窓を開ければお客さんである家主が、近くにいる環境である。

営業トークとまではいかなくても、お客さんとコミュニケーションを取る必要がある仕事だ。前職の力を活かせる場合もあれば「また営業か」とげんなりする場合、どちらも考えられるだろう。

その点、林業は人とのコミュニケーションが限定的だ。山主が常に近くにいることは稀だし、そもそも危ないので、林業の現場には人が立ち寄らないような措置が取られる。例えば林業の入り口を塞いだり、現場付近には「伐採注意」の旗を掲げ、一般人の入山を拒む措置が取られる。

そのためいざ仕事となれば、人とのやりとりはチームのメンバー同士の会話がほとんどになる。そこで行われるのは営業トークではなく、「報・連・相」を中心とした仕事のコミュニケーションだ。

ノルマありの営業などを避けて自然相手に仕事をしたいなら、林業は俄然選択肢に入ってくるだろう。とはいえ造園業も、一般的な営業職と比べたらコミュニケーションの必要な量は少ない。仕事として選ぶとしたら、どの程度、人・営業に対して距離感がとりたいかで変わってくるだろう。
 


働く年齢
どちらも定年なし!?

働く年齢からも比べてみよう。

林業の生産年齢人口

現在の林業は65歳以上の割合を示す、高齢化率が高い。林野庁の統計データによると、全産業と比べて10%ほど高くなっている。


出典:林業労働力の動向:林野庁

身の回りの林業従事者を見ると、80歳を超えてなお現場バリバリの人がいる。70歳ともなれば「まだまだこれからでしょう」という年齢と感じられるほどだ。

実際に求人を見ても、年齢不問で募集されている場合が多い。なにせ、70歳でも若めであるから、40~50歳あたりは疲れ知らずと捉えられているだろう。つまり、転職希望者の大体の年齢は当てはまるということだ。林業を始めるに遅いという年齢はない。

造園業の生産年齢人口

では造園業はどうか。令和2年度の国勢調査では、林業を超える38%の高齢化率を示していた。

参照データ:国勢調査 令和2年国勢調査 抽出詳細集計(抽出項目/林業従事者、植木職・造園師、総就業者数、65才以上就業者数)

さらに、90歳を超えてなお現役の方もいる。これは、技術第一の職であることが関係していて「庭師に定年はない」と言われていることを数字で示している。

技術があれば長く働けるのが造園業だ。自然を相手に働きつつ生涯現役に魅力を感じるならば、造園業は大きな選択肢に入るだろう。

 

道具を比較する
始めるには何が必要?

仕事で使う道具の違いを見てみよう。

造園業の相棒、鋏

造園業で頻繁に使われる道具の代表的なものは、やはり鋏(はさみ)だ。大きな枝を切る剪定ばさみと、小さな枝などを切る植木ばさみを用いて手入れする姿は、造園業の基本的スタイルだ。加えて腰袋とのこぎりを身に着け、地下足袋を履けば、一式装備が大体整う。

某オークションサイトでは、剪定ばさみの平均取引価格が4,740円だった(2023年7月11日現在)。基本装備が剪定ばさみ・植木ばさみ・のこぎり・腰袋・地下足袋あたりとすると、一式をそろえる価格は片手で収まる……数万円くらいかと想像する。

もちろん刃物は高品質を求めると、価格が跳ね上がるが、この基本スタイルに、アルミの三脚脚立と竹ぼうきなどの片付け道具があれば、ある程度の造園仕事には対応できる。

林業にはマシンが必須

では林業はどうか。身につける基本的な装備品は鋏が鉈(なた)に変わり、地下足袋はスパイクのものになる。これらを比較すると、林業と造園業、それほど差はない印象だ。

しかし、林業はチェンソーや刈り払い機などの機械が必須である。チェンソーを使うなら安全防護服も揃えなければならない。

造園業でも作業種によっては、消毒のための噴霧器や、生垣などを整える際に使うトリマーなど(垣根を整えるバリカンのようなもの)、機械が必要である。しかし、丸太を伐る・運ぶを日々行う林業の機械と比べたら使用機会は限定的だ。

自分で全ての道具を準備する場合、林業はある程度のお金が必要である。初期費用という点において、造園業は少ない金額で始められると言える。
 


自分により合っている
職種はどっちだろう?

ここまで見てきて、林業と造園業、自分により合っていそうな職種がわかってもらえれば幸いだ。似ている職種であり、自然を相手にする分野でも細かく見ればこうも違うものである。

どちらの仕事も、自然が好きであればぜひ一度は経験してほしい職種だ。好きであればこそ自然とともに働こう。そんなわけで、今日も山へ行ってこよう!


文/きょうわか

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