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林業者の取り組み

潜在需要は? 担い手は? 『特殊伐採』のこれから

伐採だけではなく、残す手段も
現場で広がるツリーケアの考え

一方、欧米では景観や生態系の維持向上に向け、市街地などに生えている木を極力残し、育てる考え方が根付いている。

支障木などの管理にもこうした思想が反映されており、なるべく根元から伐採せずに、木の成長とともに不要な枝が生まれたらその都度、除去することで長い期間をかけて木を管理していく手法が一般的だ。この「ツリーケア」の概念は日本の特殊伐採の現場でも広がりつつあり、景観や生態系の維持向上に加え、作業に携わる林業事業体などにとっても仕事が永続していくメリットがある。

目立つ新規参入
背景に“やりがい、憧れ”も

造林や素材生産といった大面積かつ工期が長い仕事と比べ、ひとつの現場の工期が比較的短い特殊伐採は、コンスタントに経営資金を調達しやすい特徴がある。また大型重機をそろえなくても行えるケースが多いため、十分な技術を習得し、必要な資機材を導入すれば個人や小規模事業者でも比較的参入しやすい分野だろう。このため住宅事情の変化に伴う個人宅での庭園整備の減少を受けた造園関連業者による参入が増えているとの見方もある。

また若手の林業従事者を中心に、高い木に登って樹上でチェーンソーを扱い、さまざまな海外製のギアを駆使するロープを使った特殊伐採に憧れる人も少なくない。

特殊伐採をロープワークで行うひとの装備。これに加え、小型のチェンソーを腰に携える。

ほかに自然に近い場所で身体を動かして働きたいと考える地方移住者が、ロープを使った特殊伐採の講習を受けて、仲間とともに新たに事業を始めるケースもある。林業事業体で林業全般の仕事を経験したひとが、新たに独立開業する動きも多い。

一方、住宅地や別荘地などで支障木や危険木を除去することが多い特殊伐採は、住民から直接感謝の声を寄せられるなど、やりがいをダイレクトに感じられる機会に恵まれている点も特徴だ。ロープを使った特殊伐採の講習会は各地で開かれており、コロナ渦も背景とした地方移住の機運の高まりを受け、こうした新規参入の動きは今後も一定程度、続きそうだ。参入者の増加を受けて、地域によっては依頼者に示す見積額の価格面での競合が進む可能性もある。



相手は高木・大木だからこそ、
十分にとりたい“安全対策”

特殊伐採は体勢を安定させることが難しい高所でチェーンソーを取り扱い、場合によっては1t以上の重さの木を吊り上げて空中で移動させることもある作業だけに、十分な技術や知識、経験に基づく安全対策を作業の根幹に据えることが最も大切になる。

インターネットで技術に関する情報や最新用具の入手が容易になった半面、事故の増加を懸念する声も聞かれる。信頼のおける機関で講習を受けてから少しずつ実践を積むなど、知識と技術の十分な習得が現場での安全な作業に当たっては欠かせない。

労働安全衛生規則では高さ2m以上の場所での特殊伐採は「ロープ高所作業」に区分され、事業者は作業者に対して特別教育を受けさせることが義務付けられている。

ロープを使った特殊伐採で使われるさまざまなギア。作業者自身や幹、枝の「落下」を防ぐ目的のものが大半だ。

ロープを使った特殊伐採を中心に、国内外のメーカー各社は安全で効率的に作業ができる関連ギアの開発や販売に近年、力を入れている。全国的な潜在需要と相まって特殊伐採に対する林業関係者の高い関心は今後も続きそうだ。


文/渕上健太
監修/梶谷哲也

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