《新米目線の体験記》チェンソーの○○感覚が推し? 間伐で高性能林業機械をウマく使う
2022/09/30
林業に転職して3年目の林業家が生き生きと綴る「新米目線」のコラム! 第3弾は「搬出間伐」を紹介する。高性能林業機械をつかいこなした搬出間伐の流れって? 「機械だけに頼らない」大切さを感じた理由とは。
林業3年目、
新米林業家のとておです!
前回記事、『切り(伐り)捨て間伐』に続いて、今回は搬出間伐について林業初心者目線で書いていきたいと思います。
前回ご紹介した切り捨て間伐とは、間伐し、切った木はそのまま山に置いておく作業のことでした。
今回ご紹介する搬出間伐とは、「間伐し、切った木はその後山から運び出す」という作業を指します。
切り捨て間伐と異なり、搬出間伐では、山から運び出した木は木材市場や製材所などへ運ばれます。
搬出間伐で切った木は、市場で競りにかけられ加工されて使われるというわけです。なので、「切った木を、いかにきれいな状態で山から運び出すか」が搬出間伐の難しいポイント。
また、間伐作業の目的は「木の成長を促すこと」です。そのため、「残存木(間伐せずに山に残す木)を、いかに傷つけずに伐倒・搬出を行うか」も重要なポイント(腕の見せ所!!)になってきます。
最後に搬出作業までをするわけなので、搬出間伐での間伐作業は、トラックや重機が山に入れるような作業道が整備された山で行います。
また、僕が働く森林組合で搬出間伐をするときは、現場や状況に合わせた高性能林業機械を使用します。ハーベスタ、プロセッサー、スイングヤーダなどなど……高性能林業機械には色々な種類があります。
搬出間伐にも色々な方法があると思いますが、僕が実際に行っていた方法をざっくりと紹介します。
高性能林業機械を使いこなす
搬出間伐の流れとは?
まずは、選木作業。切る木と残す木の選別をします。搬出間伐での選木方法は切り捨て間伐のときと同様です。
次に、木を切り倒し、そのまま造材(丸太にする作業)もします。
作業道際のハーベスタの手が届く範囲の木は、ハーベスタで直接切り倒します。ハーベスタの手が届かないところは、直接チェンソーで木を切ります。
ハーベスタは、立っている木を直接切り倒すことが出来るものすごくパワフルな機械。あらかじめ設定した長さで造材もしてくれる高性能機械なんです!
作業道の伐倒作業(木を切る作業)では、道に対して「上側(山側)」と「下側(谷側)」で木の倒す方向を変えたりします。ハーベスタの造材は切った木の根元から処理していくので、作業しやすいようになるべく、根元が谷側に向くように倒します。
次に、スイングヤーダを使って、切った木を道際まで引っ張ります。
スイングヤーダは、ワイヤーロープで木を引っ張ることが出来る機械です。 スイングヤーダにはウインチ(ワイヤーロープの巻き上げ機)が付いています。チェンソーでの伐倒作業時に、ウインチ機能を使って、木を倒したい方向に牽引することもあります。
グラップル(木などを掴むアタッチメント)も装備されているので、木を引っ張るだけでなく、木をトラックなどへ積み込むこともできます。万能!!
スイングヤーダで引っ張ってきた木がある程度溜まってきたら、ハーベスタを使って造材をします。
ハーベスタには、枝を切り落とすための刃がついているので、ただ丸太を作るだけでなく、枝を削ぎ落しながら丸太を作れます。削ぎ落した枝も1ヶ所に集めやすく、道の片付けなども楽チンです(ハーベスタできれいに造材するのにもコツはいります!)。
ある程度造材された木が溜まったら、トラックに積んで運搬。
ざっくりとではありますが、こんな感じの流れで作業をしていきます。
機械だけに頼らない
手での技術も磨くこと
さて、搬出間伐では高性能林業機械をメインで使います。
多く使用するのは、先ほども登場したハーベスタ。ハーベスタという機械は、立木(立っている木)を切り倒し、造材(丸太作成)もこなし、枝も削ぎ落としてくれます。
ハーベスタはとてもとても便利な機械なのですが、頼ってばかりいると、チェンソーの技術がおろそかになってしまうと感じることがあります。
ハーベスタが無い場合には、チェンソーを使って造材をします。造材作業の中のチェンソーの作業「玉切り」と「枝払い」 は、数をこなさないと技術が上達しません。
玉切りとは
切った木の寸法を測って切り落とし、丸太を作る作業です。玉切りにはたくさんのチェンソー技術を必要とします。玉切りをした断面をいかにきれいに出来るか試行錯誤したり、玉切りをする際に木の皮がめくれないよう気を付けたり、そもそも玉切りが真っ直ぐ出来るかであったり、チェンソーが木に挟まれないようにしたり…などなど。
枝払いとは
枝を切り落とす作業です。枝をどの順番で切り落とすか、枝の根元まできれいに削げるか、を考えながら作業します。また、危険を回避するための切り方も考えます。枝を切り落とすとき、枝に変な張りがかかっているとチェンソーで切れ目を入れた瞬間に自分の方に弾け飛んで来たりするからです。
こうした細やかなチェンソー技術はすぐに身につくものではないので、機械の技術も、自分の技術も、並行して育てていきたいですね。
「的を狙う」感覚。
チェンソー作業は面白い
チェンソーで木を切り倒す際は、残存木を傷つけずに倒さなければいけないので、「狙った方向に切り倒す」というチェンソーの基本中の基本である技術がものすごく大切になってきます。
あわせて、木を引っ張り出す方向も意識しておかなければなりません。木を引っ張り出す際、残存木に当たらないように牽引方向を考えておかないと、無事に切り倒せたとしても、引っ張り出す時に残存木に傷がついてしまいます。
チェンソーで木を切る際は、「切り倒す方向」と「引っ張り出す方向」をしっかり合わせる必要があるので、難易度は高いと思います。 難易度が高い分、搬出間伐はチェンソースキルを磨くのに適しているのではないかと新米林業家の僕は感じています。
また、「狙った場所に倒す」という感覚が、ボウリングやダーツなどの「的を狙うゲーム」のようで、楽しみながら作業が出来るのが個人的な推しポイントだと思っています(仕事は真面目に、かつ楽しさも感じられるというのが僕の理想です)。
チェンソーと高性能林業機械
両立させることが大事!
高性能林業機械が当たり前にある環境で作業をしていますが、これはとても恵まれている環境であると僕は感じています。機械を使えば、作業のすべてを人力でやるより労力もかからないし、ケガなどの危険も回避出来る。これは本当に素晴らしいこと。
新しい技術はこれからもたくさん増えてくるはずなので、新しい経験をどんどん積んでいきたいと思います。
それでは本日もご安全に!!
PROFILE
新米林業家
とてお
とある地方の森林組合に務めていて、林業3年生になったばかりの『林業初心者』。
「新米林業家とておの林業ブログ」にて、林業初心者目線で『林業』についての情報発信をしています。
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