最新【森林・林業白書】押さえたい動向をナナメヨミ! 国内林業データ&林業経営のカギ
2022/10/12
林野庁が毎年発表している「森林・林業白書」は現在の動向が分かる、いわば林業に関わる人のための“虎の巻”! 2022年度版から押さえておきたい情報をフォレストジャーナル編集部でセレクトした。
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データで動向をザックリ知っておく
国内の林業のコト
2020年に始まったコロナ禍で、2021年も引き続き世界の木材市場が混乱した。米国における需要の高まりや海上輸送の混乱などで、製材の輸入平均単価は大幅に上昇し、それにより輸入木材の代替として国産材の需要が高まり、製品価格も上昇した。
「木材不足・価格高騰」のいわゆるウッドショックに、輸入材から国産材への転換、国産材の安定供給に向けた取組みがますます重要になる。
まずは林業生産の動向を見ておこう。
国内の「林業産出額の推移」では、2020年はコロナの影響を受け、前年比3%減の4831億円。約5割にあたる木材生産は、前年比9%減の2464億円だった。
一方、「木材供給量と木材自給率の推移」では、国産材供給量は2002年を底に増加傾向にあり、2020年は前年比0.5%増。木材自給率も上昇傾向で推移し、2020年には前年比4.0ポイント上昇の41.8%に。これは1972年以来の40%超えを記録している。
木材産業の生産規模を、木材・木製品製造業の製造品出荷額でみると、2019年は前年比2.0%増の約2兆8107億円で、このうち製材業は6436億円、集成材製造業は1746億円、合板製造業は3780億円、木材チップ製造業は1115億円、プレカット製造業は8014億円。
また、実質的な出荷額が分かる「木材・木製品製造業における付加価値額の推移(※)」は、2009年を底に回復傾向で推移、2019年は前年比3.7%増の約8700億円に。ほとんどの産業で国産材の活用が増え、木材自給率の底上げをしている。
※付加価値額製造品とは
出荷額等から原材料、燃料、電力の使用額等及び減価償却費を差し引き、年末と年初における在庫・半製品・仕掛品の変化額を加えたもの。
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持続可能な林業経営のカギ
施業の集約化と新しい林業
最近、よく耳にする「施業の集約化」。
複数の所有者の森林を取りまとめ、 路網整備や間伐等の森林施業を一体的に実施し、効率的な作業システムとともに生産性向上を図るもの。
具体的には、市町村が主体となって経営管理の集積・集約化を図る「森林経営管理制度」の運用をはじめ、専門的な技能を有する「森林施業プランナー」の育成、所有者や境界の情報等を一元的に管理する「林地台帳」の活用などがあげられる。
持続可能な森林経営を目指す「新しい林業」にも注目したい。
成長に優れた「エリートツリー」の育成のほか、遠隔操作・自動化機械等の導入で生産性向上と造林作業の省力化、働き手の賃金アップを図る取り組みなどが行われている。
これを支える最新技術として現在は、ICTやAI等を活用した林業機械の遠隔操作・自動化や、森林作業道作設の情報化施工システム、携帯電波圏外でも利用可能な林業向けICTプラットフォームなどの開発が進められ、これらが未来の森づくりに大きく貢献してくれるはずだ。
>>【第2弾・第3弾に続く】
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文:後藤あや子