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【SCMの課題】「山とつながる」だけでは不十分? 健全なチェーン構築の必要条件とは

川上から川下まで、木材をとり需給者に届けていく林業サプライチェーン。労働力不足対策や効率化など山積みの課題に対し、森林データを共有、連携することが必要だ。林業における流通網のいまを見ていこう。

課題を解決して
健全なチェーンをつくろう

山に生えている木が丸太になり、製材されて角材や板になり、加工が施されて家や家具などとなって消費者のもとに届く。木材が利用されているということは、山から始まるサプライチェーンが何らかの形で機能していることを意味する。

だが、実際の流通過程では、陳腐化したシステムが慣習的に使われ続けていたり、無理や無駄が潜んでいたりする可能性がある。

例えば、常に安い材料を取っ換え引っ換え購入していたところは、ウッドショックで木材の供給量が激減すると仕入れ先からソッポを向かれ、材料を回してもらえなくなってしまった。

 

「山とつながる」だけでは不十分

いわゆる「近くの山の木で家をつくる」取り組みにも課題はある。例えば柱100本の注文に対して、丸太生産や製材の現場が過不足なく対応するのは実は大変で、注文外の品物やロスがほぼ必ず発生する。

立木を伐採すると、柱を製材するのに適した末口径20㎝程度の丸太だけでなく、それよりも太い丸太や細い丸太も生産される。製材品の品質にはばらつきがあるため、柱100本の注文に丸太100本だけで対応するわけにはいかず、多少の余裕を見て丸太を用意する必要がある。径が少し太い丸太だと、芯から柱を挽いた周りからも板材や小割材が取れる。

このように需要と供給の関係は「1対1」にはならず、生産・製造過程で発生するいわば副産物を適切にさばかなければならない。

そのことがチェーンに参画する関係者間で認識され、対策を講じられていなければ、供給サイドが不満を募らせ、チェーンから離脱してしまうかもしれない。



流通機能を再配置する

チェーンを構築することで流通業者を介さない取り引きが実現したとしても、それがコストダウンになるとは限らない。

例えば、原木市場を通さずに山から原木を製材工場に直送すれば、市場の流通経費を節約できるような気がするが、丸太を選別する手間がなくなるわけではなく、そのための経費は必ずかかる。

「市場を通さないから経費が浮き、その分を山に還元できた」のではなく、「市場がやっていた仕事を山でやることになったので、その作業経費も含めて売り上げが増えた」と理解すべきなのである。

サプライチェーンマネジメント(SCM)では、このように全体を見渡して最適化を図らなければならない

 

木材SCM(サプライチェーンマネジメント)とは……

川上・川中・川下のなかで木材価値の向上を図るために情報の共有を行う取り組みのこと。ICTを活用し、生産段階の森林資源や材積データを高度化・見える化し、流通段階へと情報共有を行うことで、木材生産と流通全体のコストを削減、効率化していくことができる。

PROFILE

林業ライター

赤堀楠雄

1963年生まれ、東京都出身。大学卒業後、10年余にわたる林業・木材業界新聞社勤務を経て99年よりフリーライターとしての活動を開始。現在は林業・ 木材分野の専門ライターとして全国の森や林業地に足を運ぶ。




イラスト/岡本倫幸

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