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【医師監修】林業従事者の9割が「身体がつらい」と回答。今日からできる対策は?

山林という過酷な自然環境のなか、大型機械やチェンソーを扱う林業は、身体に大きな負荷がかかる。腰や足の痛み、日々の疲労は重大な死傷病を招く「ちょっとした不注意」の原因に。作業中に生じる具体的な痛みとともに、対策方法を紹介する。

<目次>
1.9割が「身体がつらい」と回答 林業従事者たちのリアル職業病
2.現場に潜むリスクと身体的負荷安全・健康に働くための基本
3.腕や肩など上肢の疲労
4.腰や背中の疲労
5.膝や太ももなど下肢の疲労
6.山林に潜む害虫の攻撃に注意!

 

9割が「身体がつらい」と回答
林業従事者たちのリアル職業病

人手不足高齢化、そして身体的負荷の高さという課題に直面している林業の現場。この課題を解決するためのソリューションとしてスマート技術や高性能機械の開発・導入も進んでいる一方、現在も多くの作業が人の手で行われている。

2026年春号の「フォレストジャーナル」で実施した読者アンケートでは、「『身体がつらい』と感じる作業があれば、その内容と部位を教えてください。」という問いに対し、9割が身体の負担を訴えた。集計結果の内訳は、半数以上がへの負担を訴えており、伐採、下刈り作業をはじめ、重機オペレーション、重量物の運搬など、あらゆる作業において腰に深刻な負担がかかっていることがわかった。

●作業中つらいと感じる部位(複数回答)

●つらいと感じる作業内容(複数回答)

『FOREST JOURNAL VOL.27』(2026年春号)読者アンケート調べ
実施期間:2026年3月5日~2026年5月24日

次いで多かったのが、足や膝の痛み。山林の斜面における移動が下肢の負担へとつながっていた。さらに、チェンソーや刈払機などを扱う作業や高所を見上げる作業などにより肩・腕・肘を傷めるケースも一定数存在していた。このように多くの林業従事者が慢性的な痛みと疲労を抱えながら、日々の現場を支えているのが現状だ。

現場に潜むリスクと身体的負荷
安全・健康に働くための基本

山林という労働環境、大型機械やチェンソーなどを使った作業は、働く人に特徴的な身体負荷が加わることを理解しなければならない。

職業病や産業保健を専門とする札幌ワーカーズクリニック院長の佐藤修二先生は、「林業では傾斜地での不良姿勢を強いられる中、暑熱・寒冷環境、害虫など、自然を相手にした対策が必要になります」と話す。

こうした過酷な自然環境に負けないために、「腰痛や四肢の損傷を防ぐ年齢に応じた身体能力を維持する訓練やストレッチなど、日頃の身体づくりやセルフケアが求められます」と佐藤先生。さらには、「防具や救急用具の準備など、万が一に備える装備も大切にしてほしい」と話す。

作業中の死傷病は、痛みや疲労が重なり注意力が低下した際に生じる、ちょっとした不注意が原因となることもある。これらは、十分に予防できることも多いため、日頃のケアを怠らないようにしたい。

さらに佐藤先生は、個人の努力にとどまらず「安全管理、環境管理、労働衛生教育などが非常に重要です」と組織的な健康・安全意識の向上を語る。個人と組織がこれらを大切にすることが、長く安全に山で働き続けるための基本となる。
 

腕や肩など上肢の疲労


「肩こりは、肩周囲の筋肉疲労により、筋肉の柔軟性が失われている現象なので、まずは、作業後、一定時間が経ったら筋肉を休ませることが大切です。ただし、単に動きを止めるだけでなく、ストレッチやマッサージを行いましょう。そうすることで筋肉の血流を改善され、蓄積した疲労物質がスムーズに排出されます。

最近では、若い従業員の方がばね指を発症し受診されました。先輩に見習って1日6時間もチェンソー作業をしていたということですので、症状が出ても不思議ではありません。厚労省のガイドラインで定められている「1日2時間以内」という操作時間の目安を遵守することも大切です。」(佐藤先生)

今日から始めよう!
● 症状を悪化させないよう、飲酒や喫煙はほどほどに
● 労働内容や作業量に応じて、身体に必要な栄養素を摂取しよう!

 

腰や背中の疲労


「基本的には腰痛体操などで体幹をしっかり鍛えることが大切になります。また、長時間同一の作業を継続すると筋疲労を悪化させる原因になります。そのため、例えば「30分毎に5分」といった定期的に決まった休憩を取り、ストレッチ運動を行うことが大切です。セルフケアだけではカバーしきれない場合は、近年現場での導入が進んでいる「腰痛対策ベルト」の装着を検討するのも良いでしょう。」(佐藤先生)

今日から始めよう!
● 腰痛予防体操を行おう
体操のポイント「ストレッチを主体に」「息を止めずにゆっくりと吐きながら伸ばす」「反動・はずみをつけない」

 

詳しくは厚労省の
「腰痛予防対策」をチェック!

 

膝や太ももなど下肢の疲労


「不整地や急斜面での移動は、膝や太ももの筋肉に大きな負荷を与えます。将来的には、機械化やスマート技術の導入がより進めば劇的な負担軽減にもつながりますが、現時点では個人の対策が極めて重要でしょう。例えば、筋肉の疲労や水分・ミネラル不足によって起こりやすい下肢痙攣には、経口補水液の摂取が有効です。」(佐藤先生)

今日から始めよう!
● 回復の基本は、ゆっくり湯船につかり身体を休ませる
● 年齢や個々の体質に合ったエクササイズで安定性と筋力向上を図ろう

まずは、スポーツ庁の「セルフチェック」動画で自分の身体機能の状態を知ろう!
 

詳しくはスポーツ庁の
身体診断「セルフチェック」動画をチェック!

 

山林に潜む
害虫の攻撃に注意!

蜂によるアナフィラキシーショック
特にスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチに刺された後、全身性のアレルギー反応が急激に起こることを指す。多くは、数分~30分でショック症状が発症する。その場合は、ただちに救急要請を。アレルギー傾向がある人は事前に医療機関で「エピペン」を処方してもらおう。

ダニ咬傷
マダニの吸血で最も注意すべきはダニが媒介する感染症。刺された数週間後に発熱、発疹、リンパ節の腫脹、強い倦怠感が出る場合もあるので要注意だ。刺された場合は、自分で対処するのではなく、皮膚科や外科で完全に除去してもらおう。

教えてくれた人

佐藤修二先生

札幌ワーカーズクリニック院長。北海道大学教育学部卒、旭川医科大学卒。勤医協札幌病院労働衛生科科長などを経て開院。医学博士(過労死研究)、日本産業衛生学会指導医、労働衛生コンサルタントとして、職業病や産業保健、労働者の健康管理に幅広く携わる。


イラスト/PINO
文/フォレストジャーナル編集部

FOREST JOURNAL vol.28(2026年夏号)より転載

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