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身近な木製品が国産材需要の底上げにつながる? DIY用素材の大きな市場にも期待

現在NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」で登場した組手什や木製の弁当箱など、木製品が話題になっている。また木製品の特徴は、実は機能より感性にあることが多い。扱いの簡易な家具や木製雑貨に国産材を使用することで、需要の底上げにも繋がるだろう。

簡易な家具や木製グッズで
木との触れ合いを日常的に

NHKの朝ドラ「おかえりモネ」は、今のところ宮城県の森林組合を舞台にしている。そこで登場したのが、組手什(くでじゅう)だ。スギの板を組み合わせて自由に形や寸法を設計できる家具である。ドラマの中で使われたことから、いきなり人気になって注文が増えていると聞いた。さらに紹介された木製の弁当箱も売れたという。

これらの商品の企画・製造が始まったのは十数年前なのだが、さすがテレビの力だというべきだろう。ただ、一過性のトレンド商品にしてしまっては意味がない。確実に一定数が売れ続ける定番商品になるかどうかはこれから次第だ。

ただ今後必要な木製品とは、このような扱いの簡易な家具や木製グッズだと思う。現在の国産材需要は、製紙チップやバイオマス燃料を除けば住宅など建築材が大半だが、人口減と高齢化が進む中、今後増える見込みはない。しかも外材や非木質建材など強力なライバルがひしめく。それに住宅のような商品の購入は一生に一度あるかないか。リフォームだって何十年に1回だ。もっと身近に国産材を使ってもらうことで日常的に木と触れ合い、その魅力を感じてもらうべきだろう。それが国産材需要の底上げにつながる。

そこで家具に期待したいところだが、テーブルやイスなどは一般的に堅い広葉樹材で作り、高いデザイン性と加工技術も必要だ。それに価格も高い。スギやヒノキ材の使い道を考えると、もっとカジュアルな小箱、本棚、ラックなどが一つのターゲットになるだろう。また部材の規格化や、組立も買主に任せたら価格を抑えられる。そう考えると、DIY用の素材は意外と大きな市場なのだ。



木製品の特徴は
実は機能より感性にある

私も仕事部屋に本棚を設置しようとした際、限りあるスペースにぴったり納まる形の本棚を設えるには、市販されている既成の本棚では合わなかった。また金属製も望まない。そこで自作しようと材料を購入するため、ホームセンターに行ったりネットで調べた。すると、今は簡単に自作できるキットが何種類もあることを知った。組手什もその一つだが、それぞれ違いがある。なかには釘を使わないものもあるし、大まかな設計図を送ると、必要な部材を加工して送ってくれるサービスがネットでは行われている。

基本は、板を組み合わせて木ネジで固定するだけ。かなり希望に近い寸法の本棚をつくることができた。ただし国産材製にこだわると、価格は金属製の3倍以上、外材製のキットと比べても2倍前後する。完成品の本棚と比べてもたいして安くならない。

それでも購入してもらうには、新たな機能や魅力的なデザインが求められるだろう。生産者にさらなる工夫を期待したいが、消費者の選択基準を増やしてもらうようになったらよい。単に使えたらよいのか、素材感を大切にするのか。さらに商品の背後にある森にも思いを馳せてもらう仕掛けを考えるか……。

木製品の特徴は、実は機能より感性にある。丈夫さや価格などを考えると、金属製やプラスチック製の方が優秀なことが多い。それでも見た目や触り心地などで木製には人気だ。身の回りに木の小物があることで、豊かな気持ちになれるのなら、多少の機能や価格のデメリットを抑えて気に入ってもらえるだろう。

PROFILE

森林ジャーナリスト

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)など多数。奈良県在住。

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