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エコ・地域づくり

年間約4万人が来場! 町立キャンプ場をリノベしたテーマパークで地域を元気に

岐阜県との県境に位置する福井県池田町に新風を吹き込んでいるのが、町の第三セクターが展開する「Tree Picnic Adventure IKEDA」。誕生から5年、コロナ禍にも強い営業実績で年間約4万人が訪れ、町を活気づけている。

メイン画像:目玉は森の上空を飛ぶ国内最大級の「メガジップライン」(60分/3700円)。往復約1kmのワイヤーを滑り降り、スリル満点!

地域循環型の
まちづくりを目指して

福井県内で高齢化が最も進む池田町は、人口減少傾向に歯止めがかからず観光業も伸び悩んでいた。そんな危機感から、町と第三セクターの「株式会社まちUPいけだ」が手をとり、地域循環型のまちづくりを目指す「木望のまちプロジェクト」が2014年より始まる。

テーマは、町の92%を占める豊富な森林資源を活かした、子供たちを育むまちづくり。既存施設や廃校を改装した施設が町内4ケ所に新設された。そのうち、ツリーピクニックアドベンチャーいけだ(TPA)は、町の代名詞となる日本最大の森の冒険テーマパークだ。開業から4年目の2019年度は、有料施設利用客だけでも約4万2千人、年間売上1億3千万円と順調だ。


「アドベンチャーボート」(4人乗り・90分/12000円)は全長2.1kmのミニラフティングコース

「2020年度はコロナ禍の影響から“県内回帰”が起こり、福井県の修学旅行などの校外学習の利用が一気に増え、来年度の平日は校外授業でほぼ埋まっています」と、ゼネラルマネージャーの野村俊治さん。この実績を支えるのが平均年齢36歳の若きスタッフたち。


樹上に広がる森のジャングルジム「アドベンチャーパーク」は子供の成長に合わせたコース設定でリピーターを増やす。「ディスカバリーコース」120分/3700円(写真)のほか3コースがある。

「スタッフの3割が県外からのUターン、Iターンの移住者で、TPAは移住者や若者の雇用の場を確保する役割もあります。そこで思い切ったのが冬季営業

池田町は県内一の豪雪地帯ですが、冬季休業に甘んじてはみんなのモチベーションが上がらない。厄介者の雪を活かしたアトラクションの営業のほか、焚き火イベントといったスタッフ手作りの企画を行い、予想以上の反響がありました」。


冬季は雪中のメガジップラインが人気

数年後には施設のそばに岐阜県と池田町を結ぶトンネルが開通し、さらなる増設が計画されている。東のTDL、西のUSJと並び、池田町のTPAが修学旅行のメッカとなり、たくさんの子供たちに森の魅力を伝えてほしい。


敷地内のカフェでは池田牛のハンバーガーや地元米のおにぎりが味わえる



木望のまちプロジェクトヒストリー

  • ● 2011年3月 
     第三セクター・株式会社まちUPいけだ設立。
  • ● 2014年3月 
     森林資源を活かした地域循環型まちづくりプロジェクト「木望のまちプロジェクト」始動。
  • ● 2015年4月 
     プロジェクトの一番目の施設、幼児向けの木育の場「おもちゃハウス こどもと木」オープン。
  • ● 2016年3月 
     プロジェクトの二番目の施設、「Tree Picnic Adventure IKEDA」オープン。
  • ● 2017年10月 
     プロジェクトの三番目の施設、親子で木工体験が楽しめる「WOOD LABO Ikeda」のDIY施設を改装オープン。
    ※2020年移転オープン
  • ● 2019年冬 
     「Tree Picnic Adventure IKEDA」冬季営業を本格スタート。
  • ● 2020年6月 
     プロジェクトの四番目の施設、小~中学生の木育の場「あそびハウス こどもと森」オープン。
  • ● 2021年4月予定 
     「Tree Picnic Adventure IKEDA」森のツリーハウスオープン。


宿泊施設はコテージ、キャビン、樹上テントのほかにこの春にはツリーハウスもオープン予定。徒歩5分の場所に温泉施設もある。



Tree Picnic Adventure IKEDAの
成功につながったヒント

公民連携のプロジェクト

TPAを運営するのは、町の第三セクター「株式会社まちUPいけだ」の自然体験教育チーム。池田町の「木望のまちプロジェクト」の施策と連動しているのが強みだ。テーマは、木を多様な形で暮らしに活かす木活(もくかつ)と、森や木にふれ、遊び、学ぶ、木育(もくいく)。

プロジェクトの第1弾となる、池田町産の遊具や木のおもちゃで遊べる幼児向けの「おもちゃハウス こどもと木」(写真)をはじめ、町の木を使った木工体験施設「WOOD LABO Ikeda」小学生~中学生向けの「あそびハウス こどもと森」と、TPAを含めて4施設がある。こうした取り組みが人を呼び、町の移住者増につながっている。


繰り返し訪れたくなるプログラム展開

「近年、競合施設が乱立しており、規模で競争しても勝ち目はない。ハードに頼らず、ソフトに力を入れるために、池田町ならではの企画で勝負しています」と野村ゼネラルマネージャー。繰り返し訪れたくなるオリジナルプログラムを積極的に打ち出している。

2020年度の冬季は、施設の間伐材を薪に使い、焚き火で地元食材を調理する「木こりのごはん・おやつ」や、満月と新月の夜に焚き火を囲んでヘルシーな薬膳料理をいただくナイトイベントなどを企画。予約で埋まる日も多かったという。2020年度からは親子で月一活動する年間企画「いけだ農村がっこう」がスタート。2021年度も第2期生を募集予定。


マルチワーク化でスタッフのやる気を活かす

TPAは現在、正社員18名、パート・アルバイト10名の総勢28名で運営。スタッフは広報や営業、森林整備、イベント企画などの業務を兼任し、1人2役、3役とこなす。よいアイディアがあれば、部署に関係なくチャレンジできる環境を作っている。

「スタッフのほとんどがサービス業の経験がなく、塾の先生や県庁職員など、他業種からの転職組が多い。固定観念がないので斬新なアイディアが生まれやすい」と野村ゼネラルマネージャーは話す。福井市のデパートと共同で、ジップラインに乗った新郎新婦をドローンで撮影し、その映像をDVDにして贈るというユニークな企画も。

<まとめ>
公民連携の明確なビジョンをもとに、スタッフひとりひとりの企画力が人を呼び、雇用と移住者が増えてまちの活性化へつなげた!

DATA

Tree Picnic Adventure IKEDA
ツリーピクニック アドベンチャー いけだ

町立キャンプ場をリニューアルして2016年オープン。国内最大級のジップラインやアスレチックなどのアクティビティのほか、宿泊施設やカフェ、自然や森を活かした体験イベントなど、子供から大人まで楽しめる。今年4月には宿泊可能な森のツリーハウスも完成予定。

住所:福井県今立郡池田町志津原28-16
TEL:0778-44-7474


文:後藤あや子

FOREST JOURNAL vol.7(2021年春号)より転載

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