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行政・林業現場に届け、この技術。スマート林業を実現する《森林GISサービス》とは?

PCFIMaSの2つの森林クラウド
「行政版」と「地域版」

森林簿と森林計画図をベースに各種業務データを統合して管理するのが森林GISサービスPCFIMaSだが、これまで17都府県をはじめ、多くの市町村、森林組合が導入してきた。そして、2019年5月には、『森林クラウド(PCFIMaS for Cloud)』の提供が開始された。

『森林クラウド(PCFIMaS for Cloud)』は、クラウド上で関係者がデータを一元管理することによって、森林行政や地域林業を支援するサービスである。これまで森林GISとして提供していた機能は利用範囲が限定されていたが、その機能すべてがクラウド上に提供され、より多くの林業関係者が使用できるようになった。もちろんサーバなどのハードウェアを用意する必要はなく、インストールも不要だ。

この『森林クラウド(PCFIMaS for Cloud)』には行政版地域版の2つがある。
 


 

① 都道府県や市町村対象、森林行政を支援する業務支援ツール
PCFIMaS for Cloud 行政版森林クラウド

森林計画図(地図)や森林簿(台帳)の検索、集計、帳票作成、データ更新など森林行政における各種業務を支援することを目的に、従来の森林GISに搭載されていた機能のすべてをクラウド環境で実現し、有償のGISエンジンによりハイスペックな機能。

② 地域の林業事業体や林業関係者を対象とした情報共有ツール
PCFIMaS for Cloud 地域版森林クラウド

地域の林業関係者が手軽に情報共有を行うことを目的に、オープンソースソフトウェア(無償のソフトウェアライセンス)で構成された情報共有ツール。GPS機能が搭載されているスマートフォンやタブレットでの利用も可能で、利用者が撮影した現場の写真を簡単な操作で取り込める。
 


 

 導入例紹介① 

行政版森林クラウドを導入した広島県の事例

広島県は世界トップレベルのモノづくり企業が多く集まることで知られるが、多くの自治体に先駆けてイノベーション立県を打ち立て、DX環境作りやIT人材育成などに取り組む。

パシフィックコンサルタンツが『森林クラウド(PCFIMaS for Cloud)』の提供を開始した2019年といえば、まさに森林経営管理法*が制定された年でもある。

森林経営管理法とは、放置された森林が経済ベースで活用されて地域の活性化につながる効果や森林の多面的機能の向上、土砂災害等の発生リスクの低減さ、地域住民の安全・安心につながる効果を目指して制定された法律である。


パシフィックコンサルタンツは、それまで各ユーザ(県、市町、森林組合等)で管理していた森林情報を一元的に管理し、関係者で共有・利用すると共に、森林経営管理制度に対応した新システム:森林情報共有システムへと2020年度に新たに進化させた。主な改良点は次の2点だ。

《 PCFIMaS:森林クラウド行政版の追加機能・主要2点 》

追加機能 ①
クラウドサービス《BOX》を利用し、
関係者同士で必要な森林情報をシステム間で即座に共有。

追加機能 ②
位置(地図)情報を軸に、
随時更新されている地番や森林所有者情報、林相といった各種情報を集約。
位置情報が不明の状態を解消し、情報を連携。

 
どう良くなった?

これまで必要な森林情報が関係者間で共有できていなかった・紙ベースでの共有方法だったのが、「森林情報共有システム」によって森林情報をメールや外部媒体でのやり取りなしにクラウド上で行えるようになり、情報の効率的な利活用が実現した

双方の作業効率が高まり、予期せぬデータ流出の懸念も払拭されたのだ。
 


 

 導入例紹介② 

地域版森林クラウドを導入した福島県いわき市の事例

福島県いわき市のいわき市持続可能森林・林業推進協議会は、森林認証SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)を利用し、森林認証材の取扱量を年間5,000m3への拡大と、伐採搬出から輸送におけるコストを1割削減することを目標に掲げている。

実際は、認証林から認証材として年間3,000m3が出材されているにもかかわらず、認証業者を経由しないため一般材扱いとなっている材が2,000m3もあるのだ。搬出から製材工場への直送は行われておらず、中間コストの発生が想定され、さらに搬出から輸送においてのGPS等による位置情報の把握もされていない。


《 いわき市の5つの課題 》
課題 ① 情報共有による運送の効率化
課題 ② 森林認証SCMが十分な効果を上げるだけでの流通量
課題 ③ 長尺材からバイオマスまでの多様な資源の情報と流通の整備
課題 ④ 木材市場の役割について、再整理と調整
課題 ⑤ 上流から下流までの一連の流れの中での、情報とコストの整理

《 森林クラウド地域版で目指したこと 》

大目標 認証材の伐採・輸送・加工に関わるコストを削減、森林所有者への利益還元を実現
目標 ① 森林認証SCMを利用し、直送認証材の取引量拡大
目標 ② 準天頂衛星システム「みちびき」を用いた正確な位置情報の取得
目標 ③ 経営の効率性・採算性向上
目標 ④ 森林情報の高度化、森林認証SCMにおける川上~川下への情報共有

 
どう良くなった?

地域版森林クラウド導入による情報共有によって、50%の工程削減が実現し、経営の効率性・採算性が向上。

地域版森林クラウドは、資源の把握から境界の把握、生産の計画、伐採、集材、運材など一連の流れの中での情報 × コストを取りまとめるものである。福島県の森林認証SCMにおいて、全体のコストを従来のものと比較すると、森林クラウドサービス導入の効果が確実に現れている(表参照)。

2021年度、従来方式と森林認証SCMの比較を、川上・川下における運搬部分で実施。測量成果から、今後は伐採におけるコスト比較をより広い範囲で実施していく。

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