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林業者の取り組み

林業人材の獲得には「実践のための理論」が必要?〜人材育成の考え方を更新する〜

「林業には経験が必要だ!」だからといって若者がすぐに正解を求めようとすることは、間違っているのだろうか。急速に社会が変化する現代。育成に対する考え方、育成する我々側の考え方の更新も求められている。経営支援のプロ・楢崎達也の連載コラム「次世代林業Lab」。

「実践のための理論」の必要性

「君はZ世代だよね〜」とか「え、Z世代じゃないの?じゃ、ゆとり世代?」などと、若者は昭和なおじさんどもから妙なレッテルを貼られて大変ですね〜(笑)。

最近、林業事業体の「経営の悩み(人材育成分野)」でよく挙げられるのが「若者がすぐに正解を求めようとして困る。林業の技術体得は知識じゃね〜んだ、経験なんだ。10年働いて一人前!」。ほぼすべての林業事業体で昭和なおじさんはこの問題に困っています(銀行員も困っているらしいよ)。

僕は、若者のこの気持ちは正しいし答えてあげるべきだ、というスタンスです。皆さんも若かった頃を遠い目で思い出してみてください。早く上達して稼げるようになりたくて、ベテランから手っ取り早く技術を学びたかったでしょ。そんな若者も今となっては、若者に「教えてくれ」と言われる立場。ただ、「教えてくれ」と言われても、実際のところ、教えることができずに困っちゃうというのが、林業業界(おじさん)の問題なのではないかと思っています。

暇な職場などありません。新人が入ってくるなら当然「即戦力」が欲しいし、入ってきたら「即戦力」として働いてもらいたいものです。ということは、入ってきた新人に業務上のテクニックを効率よく教えないといけないのです。しかし、上手に教えることができない我々は偉そうに「林業には経験が必要だ!」「10年経験して一人前だ」とか言っちゃうわけですね(笑)。

当然、「経験」という名の「実践」を馬鹿にしているわけではありませんが、実践のためにも理論(理屈)が必要。理論を実践により試して、自分の納得する技術として習得していくプロセスになります。僕も研修や林業大学校等で十分な時間を頂けた場合は、「コストとは何か」「コスパ(コストパフォーマンス)」「タイパ(タイムパフォーマンス)」の理屈を考えてもらう時間を取っています。日本人の時間あたりの労働生産性はOECD加盟38ヶ国中30位(2022年)ととても低いです。我々、日本人は、コスパ悪く、タイパ悪く働き、国力を落としていますね。若者の我々おじさんへの指摘は正しいと感じます。

兵庫県立森林大学校での「コスパとはなにか」を考える研修

「林業大学校でもっと学生に即戦力知識を教えるべき」という意見も聞かれますが、翻って、職場が即戦力知識を教えられていますか?教えようとしていますか?教えるだけの人材育成の技術がありますか?
以前も書きましたが、「経験が必要だ」と言っているベテランに限って、実際のところ、経験に裏打ちされた明確な「テクニック(コツ)」が存在しています。その技術を教えてくれるかどうかが大事(教えてもらっても真似できるかどうかはわかりませんが)。

今後、さらに獲得が難しくなる林業人材。育成に対する考え方の更新、育成する我々側の考え方の更新が求められています。おっと、僕のコラムなんぞを読んでる暇があったら仕事をしてください。「タイパ」が悪いです。9月の第4回次世代森林産業展でお会いしましょう!(セミナーやります)

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PROFILE

FOREST MEDIA WORKS Inc.
CEO

楢崎達也


カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2024プロデューサー。
 



 


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