「あの作業、無駄だったんだ〜!」と気づく瞬間ある? スマート林業で職場を進化させよう
2023/05/22
「スマート林業」導入の課題とは? 実は、ICT化の課題は、ICTそのものの課題じゃないところにあるという。意図的に目指すべき改革をアドバイスする、経営支援のプロ・楢崎達也の連載コラム「次世代林業Lab」。
僕らに必要なのは
「スマートに林業する」こと
みなさん、スマート林業ライフ、エンジョイしてますか(笑)。スマート林業という用語は、非常に便利だな〜と思っています。
スマホアプリ、航空測量、3D測量、ロボット、アシストスーツ、人工知能(AI)、データ通信、なんかわからんけどすごい機械等をひっくるめて「スマート林業」という一言で言い表せられるのはスゴイ!(「DX」は理解するのが超難解)
僕も気がつけば、なんだかんだで、2010年にiPad専用の施業提案アプリ「Spirit of Forester」の設計に関わり(アップルのビジネスアプリ週間売上No.1になった!)、最近では、山口県「一般社団法人リフォレながと」さんと一緒に通信型スマートグラスを活用して所有者が現場に行かずに所有境界を確定する取り組み(1日で約3haの境界杭を打った)に協力させてもらったりしています。
そうなのです、僕は顔はアナログですが、何を隠そう、気持ちは「スマート林業賛成派」なのです。
最近、登壇の機会があり、スマート林業に関する質問をいただきました。
■『スマホ日報を導入したのですがタイムカードとの両立は可能でしょうか』
興味深いことに、かなり多く林業会社が昭和の高度経済成長期に流行っていた印字式のタイムカードを使っていますね(役場で未だにフロッピーディスクが使われているのと似てる)。
■『航空レーザー測量をしたのですが、その結果は何に使ったら良いのでしょう』
スマート林業導入の名目のままに、使用目的が明確でないままにツールを導入してしまっています。手段と目的が逆転しているとも言えます。
■『ICTツールは使えないこともないのですが、アナログと比べて効率はちょっといいぐらいです。使い慣れたアナログ方式に戻したいな……』
一度、社内で検討してみてください。自社の業務の仕組みに合っていないスマート林業ツールを、頑張って使い続けている涙ぐましい事例もありますね。
スマート林業ツールを導入して
業務の論理的な理解を深めよう
スマート林業化していくことで業務の利便性向上が期待できます。しかし、それよりも、僕が良いことだと思うのは、スマート林業が進むことにより、業務の論理的な理解が深まること。論理性が深まることにより、職場をより進化させることができます。
最初はめんどくさいかもしれないけど、スマート林業ツールを導入することにより、「あの作業は無駄な作業だったんだ〜!」と気づく瞬間がありませんか?
逆に、「このアプリの機能は全く意味がない」と気づくこともあるでしょう。そのような分析的な視点で、日常業務を見てみると「あそこもここも改善できる」「ここはスマホアプリで対応すると便利だ」等ということが見えてきませんか?
私たちが本当に考えなければならないのは、「スマートに林業(業務)をする」ことです。スマート林業を活用した方が良い場面ではそうするし、アナログ作業の方が効率が良ければ、そうするし、存在しないスマート林業ツールがあれば開発する(行政は積極的に支援してくれるじゃないですか!)。
実は、ICT化の課題は、ICTそのものの課題じゃないところにあります。
仮に日の半分、手間のかかるあるいは無駄な作業(現場や書類のやり直し等)をするとしたら、1年に換算すると半年間は無駄な作業をしたことになります。人生の大半において無駄な作業をしていることになりはしませんか?僕はそんな職場はイヤです!皆さんはそういう職場好きですか?
PROFILE
FOREST MEDIA WORKS Inc.
CEO
楢崎達也
カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2022プロデューサー。
FOREST JOURNAL vol.15(2023年春号)より転載