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【馬搬のニーズとは?】ワールドワイドな活動から学ぶ、世界に通用する日本の馬搬技術

林業における運搬方法の機械化が進む中、改めて、木材運搬手段の原点「馬搬」に焦点を当ててみたい。 国内屈指の馬搬家・岩間さんに、馬搬のきっかけや可能性について聞いた。気鋭のパイオニアの源にある理念とは?

 

馬搬をはじめた
一風変わった動機とは

現代、馬搬の技術継承者は、全国でもわずか数人とも言われている。しかもほぼ高齢者だという日本の現状において、次世代馬方のパイオニア、岩間敬さんの存在は大きい。

馬搬技術を後世に引き継ぐため、馬方の技術指導、馬育成に力を注ぐ岩間さん。人材育成のため若い世代に向けた研修も行っている。

岩間さんは、国内有数の馬産地として知られる岩手県遠野市出身。子供の頃から馬は身近な存在で、高校生のときに乗馬を始めた。建築家を目指し、東京の専門学校へ進学したが、最終的には馬への興味が勝り、東京の乗馬クラブに就職。

馬について学ぶなら、地元のほうが優位性があると考え、1年後に帰郷。家からほど近い馬の牧場「遠野馬の里」で働きながら、技術と知識を身に着けたという。同時に、自宅で馬の飼育・生産も始め、3年後に独立。25歳の頃だった。

独立して乗用馬の繁殖生産調教をして、20数頭になりました。ペルシュロンという大きな馬を飼い始めて、自分で調教して馬車にして遊んでいたのが、思えば馬搬のはじまり」。



林業のきっかけは、「最高においしい炊き方で、お米を食べたかったから」という一風変わった動機から。

「うちは農家なので、馬糞を活用して米を作ろう、ということになり、せっかく食べるなら最高に美味しく食べたいな、と。調べたら、米つぼで炭火で炊くのが一番だと知って、自分で切った木で炭焼きをやろう、と思ったんです。

ただ、裏山でナラの木を切って、いざ運ぼうと思ったらかなりの重労働で。運搬用の重機が入れるような山ではなかったのですが、馬で出せばいいんだ、と」。

馬搬に興味を持ち調べてみると、土地柄幸運にも、現役の馬方が近隣にいた。菊池盛治氏さんと見方芳勝さんだ。2人の師匠に弟子入りして一緒に山に入り、馬搬の技術を習得。そして、30歳を機に馬搬家として独立した。


酒米を植えるための田んぼを耕す。田植え後は、チェーンを馬が引っ張って除草する「チェーン除草」を行い、無農薬での米栽培を行う。

 

馬搬の仕事のニーズとは?
時代と共に変わりゆく

現在、岩間さんは2つの組織の代表を務めている。ひとつが、馬搬文化の技術継承・普及のために活動する、一般社団法人馬搬振興会。もうひとつが、馬搬や馬耕など畜力を活かしたビジネスを展開する株式会社三馬力だ。

仕事としては、どのようなニーズがあるのだろうか。

「伐採・搬出を任されている山が複数あるなど、林業での馬搬仕事もたくさんありますし、林業の6次産業化も手がけていて、小物を販売しています。

また、馬搬の木材で家を建てたいという人には、工務店と協働することもあります。自社で製材所を持っているので、搬出・製材までを手掛け、あとは工務店にお任せする。

大切にしているのは、目の前の一本の木に思いを入れ、トレーサビリティを明らかにして、価値をつけて消費者に届けること。僕が始めた頃と比べても、そうしたニーズが増え、徐々に流れが変わってきているのを感じています」。

 

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