再造林『効率化』のためのキーワードって? 手法&メリットデメリットを解説
2021/06/10
林業経営の健全化のために欠かせない低コスト再造林。その実現のために求められる作業の効率化に欠かせない5つのキーワードをピックアップ。それぞれがどんな手法で、どんなメリット・デメリットがあるのかを解説しよう。
育林コストを抑えよう
①コンテナ苗/植栽効率が2倍に
コンテナ苗を導入する大きなメリットのひとつが植栽作業の効率化だ。プランディングチューブ、スペード、ディブルなどの専用器具で開けた穴にコンテナ苗を差し込み、軽く踏み固めるだけで植栽が完了。
仙台森林管理署内の緩~急傾斜地の斜面で実施された植栽能率の検証試験では、単位時間あたりのコンテナ苗の植栽本数は、裸苗の約2倍に(※)。作業員の技量による作業能率のばらつきを平準化できることもポイントだ。
※『低コスト再造林の実用化に向けた研究成果集』国立研究開発法人森林総合研究所
②地拵えの機械化/雑草木の抑制にも期待
皆伐後の森林の地拵えに、林業機械を使用することで、作業効率を大きく向上させられる。バケットやグラップルで枝条を取り除くだけではなく、表土をかき寄せ、木本類の伐根も引き抜くことで、雑草木の繁茂の抑制も期待できる。
既に雑草木が繁茂してしまっている皆伐跡地では、クラッシャーアタッチメントを装着した重機の活用も有効だ。クラッシャが生み出す末木枝条の破砕物が地表を覆うことで、雑草木の再生を抑制することもわかっている。
③低密度植栽施業/造林をトータルで簡略化
低密度植栽施業とは、これまで一般的とされてきた植栽密度3,000本/haを2,000本/ha以下とし、植栽コストを抑えるとともに、枝打ちの省略、保育間伐の回数削減などを通じて、造林全体の効率化をめざす施業だ。
従来は材の質が低下することが懸念されてきたが、合板材や集成材の需要増によって、このデメリットはある程度まで回避できるようになりつつある。並材の生産を主体とした林業経営を前提とするならば、十分に検討すべき施業方法だ。
④冬季下刈り/作業者の負担を大幅軽減
保育作業のなかでも最も過酷な作業である下刈りを冬季に移行できないか、四国森林管理局などを中心に検討が進んでいる。実証試験のなかでは、「夏季下刈りでも冬季下刈りでも植栽木の成長に大きな差はない」との結果が出ている一方、夏場に繁茂した雑草木によって植栽木が「蒸し枯れ」を起こすケースも見られたそうだ。
しかし、熱中症や蜂刺されの被害を抑えることができるのは大きなメリットだ。冬季下刈りの適地を見極める基準の確立が、今後の課題となるだろう。
(取材協力/四国森林管理局 森林整備課)
⑤下刈り省略/成長への悪影響は小さい?
下刈りの回数自体の省略をめざした検証試験もスタートしている。秋田県林業研究研修センターの試験では(※)、従来は6年生まで毎年行っていた下刈りを、2・3・5年目の3回に削減。降雪地であることから雪害の被害は若干増大したものの、樹高成長の大きな低下や、誤伐の頻度の大きな増大は見られなかったという。下刈り省略の悪影響は決して大きくないことを証明する結果といえるだろう。
※『低コスト再造林に役立つ“下刈り省略法”アラカルト』国立研究開発法人森林総合研究所
文:福地敦
FOREST JOURNAL vol.7(2021年春号)より転載