林業は成長産業になるか? 技術提供で木材の自給率アップに寄与!
2019/08/06
日本初の木工機械メーカーとして、開発からメンテナンスまで自社で一貫する体制を築き上げたキクカワエンタープライズ。その培った技術で木材の自給率アップに寄与する。今回、5月27日から5日間、ドイツのハノーバーで開催された木工林業機械展LIGNA(リグナ)に出展していたキクカワエンタープライズの代表菊川厚さんからお話を伺った。
三重県伊勢市に所在
日本初の木工機械メーカー
当社は三重県伊勢市に本社があります。伊勢といえば伊勢神宮が有名ですが、すべて木材で造られており、20年に一度「式年遷宮」ですべてのお宮を造り替えています。
伊勢市は木造船建造の発祥の地としても知られています。島国である日本では、室町時代くらいから木造船で漁業や交易をするようになりました。まだ産業というものがない時代の話ですが、そこで宮大工と船大工が非常にリンクしていたのです。
そんな中、釘やカンナ道具を作る鍛冶屋としてスタートしたのが当社の前身です。産業革命でそれだけでは食えなくなったため、日本初の木工機械メーカーとして1897年に当社が設立されました。戦前までは鉄道の枕木や、タルなどの大きな木製の入れ物を造るための機械を製造していました。
戦後、住宅ブームになって日本の森林が昭和30年代にすべて刈り取られてしまい、それから拡大造林というかたちで、本来は木がなかったところにも木を植えて、今の林業国家ができ上がっていきます。ところが円で計算するとコストが割高だということで、山林が数十年間放置されてきました。そんな中、当社も自動車関連、鉄道関連など事業を拡大していきました。
2つの木材活用法と
これからの林業
木材の活用方法は2つあります。1つは住宅建材に使う方法で、もう1つは昔ながらの薪炭として使う方法です。日本の山は急峻ですから、林道を作るのにすごくコストがかかります。そこで皆伐しようという流れが広がってきました。付加価値のあるものは建材として使い、価値の低いものは発電に使おうという動きの中で、当社も事業をしています。
日本では、木材の自給率を現在の36%から2025年までに50%に回復させようという方針があります。そこから先の伸びしろが、当社の事業継続性に関わってきます。
事業シェアとしては、国内が7割、海外が3割です。当社は木材以外に金属加工の工作機械も作っていますから、国内、海外を問わず、プラスチックや軽金属などカテゴライズに沿った機械を製造しています。ただ、メンテナンスという点でトラブルに迅速に対応するためにも出荷する種類は絞っています。
林業の就業者が減り、山が疲弊して良質な材料が少ないのが現状だと思います。林業を川上とすれば、川中が木材加工業、川下が住宅産業となります。当社のビジネスは川中をターゲットにしているため、林業とは直接関わりがありませんが、もし林業が無くなれば当社も成り立たなくなります。
日本の森林率は60%以上あり、世界に冠たる高さを誇っています。木材の輸出も望める環境にありますから、できるだけ木材の付加価値を高めて使っていただく。そのための技術を当社が提供するところに価値があると思います。
林業という点では、これまで苦労していた部分もICTの活用などで改善してくるでしょうし、若い人たちがそういうところに楽しんで取り組んでいければ、成長産業になっていくでしょう。
DATA
代表取締役社長 菊川厚さん