外国人材の育成就労制度まで半年 労働安全講習と日本語能力支援が課題
2026/10/22
従来の技能実習制度に代わり「育成就労制度」が2027年4月1日に施行される。人材確保と育成を主目的とする新制度のスタートまで半年となるなか、雇い入れ側である林業事業者や森林組合はどのような準備を進めるべきなのか。林野庁経営課林業労働・経営対策室の長谷川経営対策官に話を聞いた。
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1.3年の在留期間に 特定技能への移行を目指す
2.労働安全の確保に向けて 手厚い講習と有資格指導員を配置
3.1年経過で転籍が可能に 日本語能力支援も義務付け
4.施行の半年前に 雇い入れ側が準備すべきこと
3年の在留期間に
特定技能への移行を目指す
育成就労制度のポイント(出典 林野庁)
2027年4月1日から施行される育成就労制度は、厚生労働省と法務省出入国在留管理庁が主管し、従来の技能実習制度からその目的や運用面において大きな転換を図る。1993年に発足した技能実習制度は、外国人材の育成を通じた開発途上国などへの技術移転を通じた国際貢献を理念に掲げていた。しかし、人手不足に直面する日本では林業分野を含めて実質的な労働力の確保策として利用されてきた歴史がある。
新制度では目的を実態に即して改め、特定技能1号の基準を満たす技能者の育成と、国内産業における人材確保を法律上に明確に位置づけた。在留期間は原則3年とされ、この期間中に特定技能1号へ移行可能な技能と日本語能力を段階的に育成する仕組みへ改められる。
技能実習制度から育成就労制度への主な変更点(出典 林野庁)
雇い入れ側の大きな利点となるのが、採用時における条件の大幅な緩和だ。従来の技能実習制度では、母国での林業経験(前職要件)や帰国後の復職見込み(復職要件)が必須とされていた。新制度ではこれらの要件が廃止され、母国で林業経験がない人でも「日本の林業技術を学び、長く活躍したい」という意欲を持つ層へ幅広く門戸が開かれる。
林野庁経営課林業労働・経営対策室の長谷川経営対策官は「海外で林業経験がある方でも、作業環境や安全装備の考え方が日本と異なる場合があります。過去に経験がなくても、林業の仕事に興味を持って入ってきてくださる方のほうが、日本の技術や安全ルールをイチから教えやすい可能性もあります」と説明する。
また、育成就労制度では原則として、受け入れた外国人を直接雇用することとなっており、林業分野もその原則に則り「直接雇用のみ」としている。なお、派遣による受け入れが認められているのは、農業と漁業のみである。
労働安全の確保に向けて
手厚い講習と有資格指導員を配置
育成就労における林業の特性を踏まえた上乗せ要件(出典 林野庁)
林業分野において制度運用上の最大のテーマとなるのが「労働安全の確保」だ。林業は他産業と比較して労働災害の発生率が非常に高く、死傷年千人率は全産業平均の約8倍に上る。伐木や集材など危険を伴う山林現場に外国人を受け入れるにあたって、事故防止の徹底が前提となる。
そのため林業分野では、全産業共通のルールに加え、農林水産大臣告示による独自の「上乗せ要件」が設定されている。その1つが「安全衛生講習の上乗せ」だ。育成就労外国人の受け入れにあたり、1年経過時までに46時間以上、修了までに計97時間以上の安全講習を実施することが義務付けられる。講習内容はチェーンソーの安全な取り扱いや危険予知など多岐にわたり、チェックリストによる習熟度確認も求められる。林野庁では、指導側と外国人材が共通の理解を持てるよう、母国語と日本語を並列記載した多言語テキストの作成を支援し、講習の実施を後押ししている。
林業における育成就労指導員の上乗せ要件(出典 林野庁)
また、技能実習から引き続き、現場で直接指導にあたる「育成就労指導員」の要件も設けている。原則として1級・2級林業技能士、または合格後3年以上の実務経験を持つ3級林業技能士のいずれかの有資格者を配置しなければならない。ただし、林業が技能検定に追加されたのが2024年からであることを考慮した緩和措置として、2029年3月末までは7年以上の実務経験者やフォレストリーダー登録者を充てることが認められている。この緩和措置は2029年3月末で終了するため、受け入れ期間の途中で期限を迎える場合は、それまでに技能検定を通過した指導員へ変更する手続きが必要となる。
受け入れ側の事業体要件も限定される。受け入れ事業体は「林業労働力の確保の促進に関する法律(労確法)」に基づく認定事業主、または「森林経営管理法」に基づき都道府県知事が公表した意欲と能力のある林業経営体などでなければならない。
1年経過で転籍が可能に
日本語能力支援も義務付け
林業における育成就労での本人意向による転籍について(出典 林野庁)
技能実習制度では例外を除き認められていなかった「本人意向による転籍(転職)」が、育成就労制度では解禁される。働く側の権利保護と技能向上を目的として、同一分野内に限り条件付きで転籍が認められる。
林業分野における転籍要件は、①現在の受け入れ機関での就労期間が1年を超えていること、②技能検定基礎級に合格していること、③一定の日本語能力試験(A1相当以上)に合格していること、の3点である。原則として就労開始から1年間は転籍できない仕組みとなっている。また、制度全体として、初期教育のコストを負担した事業者から人材が離れる際、新たな受け入れ側の事業体が初期費用の一部を補填する費用調整ルールも整備された。
早期離職を防ぎ地域に定着してもらうには、給与や手当の改善にとどまらず、日常的な生活支援を含めた丁寧な環境づくりが極めて重要になる。山林での慣れない作業や気候の違いに直面する外国人材にとって、安心して過ごせる住居環境や身近な相談体制の有無は定着率に直結する。長谷川経営対策官は「待遇面はもちろん重要ですが、言葉も文化も異なる海外から働きに来た方を受け入れたからには1人ひとりにしっかり寄り添い、コミュニケーションを深めていく姿勢が定着につなげていく点からも大切と考えます」と言う。
さらに、新制度では外国人材に対する日本語習得の支援が受け入れ側に義務付けられる。着任時までにA1相当、3年の育成修了時までにA2相当(特定技能1号レベル)の語学力を目指す。雇い入れる事業体は学習機会を用意し、講習費用や試験費用を負担することが求められる。作業時の意思疎通や事故防止のためにも、計画的な語学サポートが欠かせない。
施行の半年前に
雇い入れ側が準備すべきこと
区分と受検が必要なタイミング(出典 林野庁)
2027年4月1日の制度施行まで残り半年となった。外国人材を雇用中、あるいは今後の導入を予定している林業事業者や森林組合は、どのような手順で準備を進めるべきなのか。
まず押さえておきたいのが、既存の技能実習生への影響である。制度変更にあたり経過措置が用意されており、現在在籍している技能実習生はそのまま技能実習生として就労を継続できる。施行日に合わせて現場の稼働が停止するわけではない。
一方で注意すべきは、「2027年4月1日の施行日を迎えたからといって、その日からすぐに育成就労外国人を受け入れられるわけではない」という点だ。新制度のもとで林業分野で雇い入れるには、事前に「林業特定技能・育成就労協議会」への加入手続きを行い、事業主としての「育成就労計画」を作成して国の認定を受ける必要がある。計画認定の手続きには時間を要するため、施行日までに実習計画の申請などの準備を行えるものの、実際に新規の育成就労外国人が着任するまでには十分長い期間が見込まれる。
林野庁経営課林業労働・経営対策室では、林業分野に関する各種の問い合わせなどに対応している。また、制度等を説明した「外国人材受入れの手引き」を作成し、公式ウェブサイトで公開している。長谷川経営対策官は「技能実習からの変更点として協議会への加入が必須となります。申請時に協議会に入っていないと申請手続きに時間を要してしまいますので、事前に加入手続きを進めていただくことが大切です」と呼びかける。
制度開始に向け、雇い入れ側には確実な法的要件のクリアと、山林現場における安全管理体制の整備が求められている。長谷川経営対策官は、「外国人材を受け入れていただいた際には、やはり安全第一でやっていただきたいというのが一番の思いです。人手不足という課題はありますが、海外から来てケガをするというこは双方にとって非常に悲しいことだと考えます。安全な環境をしっかりと整えたうえで育成に取り組んでいただきたいです」と話している。
DATA
林野庁 林業分野における外国人材の受け入れ
林業分野における外国人材受け入れの手引き
取材・文/フォレストジャーナル編集部













