【インカム編】林業ライターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー
2026/08/14
主に近距離でのコミュニケーションツールとして、オートバイ愛好者を中心におなじみのインカム通信。林業向けの製品は少ないものの、産業現場やアウトドアスポーツ向けモデルの開発に近年各社が力を入れている。今回は林業の現場で役立ちそうなモデルをピックアップし、実用性を探ってみた。
1.林業インカムの現在地
2.4機種を徹底レビュー
3.―今回レビューした4機種はこちら
4.―レビュー結果
ーレビュー1 セナ 「CAST-02(ヘルメット装着型)」
ーレビュー2 セナ 「Nautitalk Crew」
ーレビュー3 カルド 「PACKTALK OUTDOOR」
ーレビュー4 セナ 「EXPAND MESH」
5.総評
林業インカムの現在地
安全対策や生産性向上に向け、関心が高まっている林内通信ツール。中でも特殊伐採や間伐、重機絡みの作業では周りの作業者との「声掛け」が安全を大きく左右し、作業効率にも影響する。ただ国内では林業向けのハンズフリータイプの製品が少ないのが実情だ。
そんな林業用インカムの代名詞的な存在といえるのがファナーの「PROTOS® BT‒COM」だ。国内発売から10年以上がたち、日本人向けのサイズアジャスターの展開や、マイクアーム部の素材変更、防滴機能強化といったアップデートが加えられ、多くのユーザーの支持を集めている。イヤマフ一体型のマイクアームつきスピーカーやチェンソー対応のノイズ抑制機能、簡単なボタン操作など、シンプルなデザインの中に独自の機能が詰まっているのが特徴だ。
そんな中、国内では林業用品開発で定評のある和光商事がトランシーバー機能付きの「スマートフォレストヘルメット」を昨年発売。電動ファンがついた多機能タイプで、国内メーカー初の通信機能内蔵型の林業用ヘルメットとして注目を集めている。一方、国内外のインカムメーカー各社も従来メインだったバイク用に加えて、産業現場用やスキー、ヨットといったアウトドアスポーツ向けのハンズフリータイプのインカムを近年、積極的に開発。さまざまなタイプのヘルメットに装着できる汎用性や、多人数通話ができる機能性などが注目され、林業現場でも導入の動きが出ている。ただユーザー自体がまだ少なく、実際の操作性や使用感は、あまり共有されていないのが現状だ。
4機種を徹底レビュー
そこで今回はインカムの主要メーカー2社が産業用やアウトドア用に開発した4機種について林業現場での相性を調べてみた。
林業でインカムを使う上でまず重要なのが、作業の邪魔にならないようにしっかりと装着できること。マイクやスピーカーのコードがある機種は、配線方法の確認も必要になる。音量調整やマイクミュートなどの操作を手袋をした状態で簡単にできるかどうかも大切な要素だ。
屋外で使うだけに防水性も気になるところ。またイヤマフと組み合わせて使用できるかどうかもポイントになる。そこで今回は9項目をレビューした。
今回レビューした4機種はこちら
セナ 「CAST-02(ヘルメット装着型)」

●通話時間:最大9時間
●重量:492g
●最長通話距離:1.1km(6台以上使用時は4.4km)
●通話可能人数:
無制限(オープンメッシュインターコム)
24人(グループメッシュインターコム)
●価格:109,780円(税込)
●問:インターソリューションマーケティング(日本総代理店)
セナ 「Nautitalk Crew」

●通話時間:最大8時間
●重量:20g
●最長通話距離:800m
●通話可能人数:
無制限(オープンメッシュインターコム)
24人(グループメッシュインターコム)
●価格:109,780円(税込)
●問:インターソリューションマーケティング(日本総代理店)
カルド 「PACKTALK OUTDOOR」


●通話時間:最大10時間
●重量:約49.5g(ケーブルは含まない)
●最長通話距離:1km(グループ使用時は5km)
●通話可能人数:15人
●価格:69,800円(税込)※2個セット
●問:アーキサイト(国内正規販売代理店)
セナ 「EXPAND MESH」

●通話時間:最大10時間
●重量:100g
●最長通話距離:400m(6台以上使用時は1.6km)
●通話可能人数:
無制限(オープンメッシュインターコム)
24人(グループメッシュインターコム)
●価格:34,430円(税込)
●問:インターソリューションマーケティング(日本総代理店)
レビュー結果
| CAST-02 | Nautitalk Crew | PACKTALK OUTDOOR | EXPAND MESH | |
|---|---|---|---|---|
| CHECK① 着用感 |
◎ | ◎ | ◎ | ◯ |
| CHECK② 操作性 |
◯ | ◎ | ◎ | △ |
| CHECK③ コンパクト性 |
△ | ◎ | △ | ◎ |
| CHECK④ イヤマフとの相性 |
― | △ | ◎ | ― |
| CHECK⑤ 着脱の容易さ |
◯ | ◯ | △ | ◎ |
| CHECK⑥ 防水性 |
◯ | ◎ | ◎ | ◯ |
レビュー1
セナ 「CAST-02(ヘルメット装着型)」
| ① | ◎ | 大きさの割にソフトな耳当たり |
|---|---|---|
| ② | ◯ | 大きめの操作ボタン |
| ③ | △ | 今回の4機種で最も大型 |
| ④ | ― | イヤマフの役割も両立している |
| ⑤ | ◯ | ヘルメットとの相性を事前に要確認 |
| ⑥ | ◯ | 雨天時でも問題なく使用できる防水性能 |

大型ヘッドセットが特徴の産業用インカム。大型だが着用感はソフトで快適。遮音性も高い。ツリーワークよりも重機オペレーター向けの印象。ヘルメットによっては市販の取り付け部品が必要になるので要確認。手袋をした状態でのボタン操作は同社の「EXPANDMESH」よりもしやすかった。
重機オペレーターとチェンソー使用者が、CAST-02でコミュニケーションを取りながら2人一組で作業する際に活躍

レビュー2
セナ 「Nautitalk Crew」
| ① | ◎ | 耳に直接触れないので疲れにくい |
|---|---|---|
| ② | ◎ | マイクオフが簡単 |
| ③ | ◎ | 消しゴム程度のサイズ感 |
| ④ | △ | イヤマフ使用時は音声が遠くなる |
| ⑤ | ◯ | 専用のホルダーやクリップを使い、簡単に着脱可能 |
| ⑥ | ◎ | 海上環境向けのIPX5(※1)取得の防水性能 |
※1 国際電気標準会議(IEC)や日本産業規格(JIS)で定められた、電子機器の「防水性能の等級」

防水性の高いマリン用モデル。重さ20gでヘルメットにつけていても気づかないほど。付属のホルダーでヘルメットの種類を問わず簡単に着脱できた。マイク部分を跳ね上げるとミュートできる機能も実用的。スピーカーを最大ボリュームにするとイヤマフを装着しても通話できたが相手の声は遠くなった。
チルホールを使う牽引伐倒のように、スポット的にインカムを使ってコミュニケーションを取りたいシーンで便利

レビュー3
カルド 「PACKTALK OUTDOOR」
| ① | ◎ | 通常のイヤマフと同様の着用感 |
|---|---|---|
| ② | ◎ | ボイスコマンド機能が便利 |
| ③ | △ | ヘルメットに貼るので凸ができる |
| ④ | ◎ | 通常のイヤマフ使用が可能 |
| ⑤ | △ | 本体やスピーカー、マイクの配置が必要 |
| ⑥ | ◎ | 業界最強クラスのIP67(※2)規格取得の防水性能 |
※2 電気機器の異物や水の侵入に対する保護等級を示す国際規格

音量調整やマイクミュートはボイスコマンドによる音声操作でも可能。本体をヘルメット外側に貼りつけるため、林業用ヘルメットでは装着箇所の選定に悩んだ。枝葉などの引っ掛かりも心配だ。既存のイヤマフ内部にスピーカーを仕込むため、通常通りイヤマフを装着して作業できる安心感は大きかった。
チェンソー作業中でも、既存のイヤマフの遮音性を生かしながら安定した通話が可能

レビュー4
セナ 「EXPAND MESH」
| ① | ◯ | ハングネックアームは好みが分かれそう |
|---|---|---|
| ② | △ | 手袋使用時は慣れが必要 |
| ③ | ◎ | 薄型設計 |
| ④ | ― | 耳の上に快適にフィットするデザイン |
| ⑤ | ◎ | 耳と首に掛けるだけで簡単に装着できる |
| ⑥ | ◯ | 雨天時でも問題なく使用できる防水性能 |

両耳のスピーカーをつなぐハングネックアームで装着する産業用インカム。シンプルなデザインで、イヤマフをつけないツリーワーク用ヘルメットとの相性が良かった。既存のイヤマフは干渉するのでつけられない。マイク機能をミュートにするなどのボタン操作は手袋をつけているとやや難しかった。
なお、SENA製品は、今回レビューした3モデルを含め、SENAのメッシュインカムであれば異なるモデル間でも通話が可能だ。
ワンタップ、フルオートでつながる操作性のため樹上のツリーワーカーでも簡単に通話が可能

総評
実際の通話品質は4機種ともに、マイクと口元との位置関係で大きく変わった。マイクと口元が近ければ近いほど、小声やつぶやきでも拾ってくれる一方、マイクと口元が離れていると、発話した最初の部分が相手に伝わらなかったり、音声自体を拾わなかったりすることもあった。
カルド社の「PACKTALKOUTDOOR」のように、マイク部分をヘルメットのストラップに取りつけるタイプは、インカム本体の装着位置によってマイクの位置も変わる場合がある。このためヘルメットとの相性の確認が特に重要だと感じた。今回はテストできなかったものの、同社の製品は、市販のマイクつきヘッドセットなどを使うことで、口元にマイクを持ってきたり、本体を胸ポケットなどに入れたりすることもでき、林業用途での使い勝手も気になるところだ。
今回、レビューした4機種の通話可能な最大距離は、2人で使う場合はいずれも400m〜1㎞程度。ただ立木などの遮蔽物がある場合は、大幅に短くなる可能性もあるので注意が必要だ。
各機種ともヘルメットをかぶったままでも操作できるように、操作ボタンの作りを工夫している。ただ手袋をした状態での操作性は製品ごとに大きく異なった。チェンソー作業時に一時的にマイクオフ(ミュート)をしたいときなどに簡単に操作できる機能は重宝する。購入前に操作性も確かめたい。
また一部の林業用ヘルメットでは取りつけ自体が難しい製品もあり、この点でも販売店などで手持ちのヘルメットへの装着性を確認するのが大切だ。
バイク用インカムはユーザーが多く、種類が豊富で手ごろな価格の製品も多いだけに、林業向け製品の発売が今後待たれるところ。欧米ではハスクバーナやSTIHLが林業向けに、インカム内蔵型のイヤマフタイプの製品を発売している。国内でも多用途化が進むインカムが次世代林業のマストアイテムになる日は遠くないのかもしれない。
PROFILE
福永けんた

山梨県で暮らす林業従事者兼フリーライター。現場ではファナーの「PROTOS® BT-COM」と、セナ「Nautitalk Crew」の姉妹版「BiKom20」を愛用。













