「いつか事故が起きちゃう」と思いながら仕事していませんか?
2024/06/03
林業業界の合言葉は「作業効率を追え!」。しかし、安全と効率どちらがが大事なのだろうか?改めて、組織的な安全ルールについて、確認してほしい。経営支援のプロ・楢崎達也の連載コラム「次世代林業Lab」では、改めて組織的な安全ルールを定めることの重要性を考える。
組織的な安全ルール設定と
適切な作業効率の確立
楢崎は、高校卒業して足掛け2年ほど造園業で植木をチョキチョキやってました。資格なしでクレーン操作や玉掛作業、地下タビでチェンソー作業、安全ローブなしで枝の折れやすいイヌマキの剪定やってました。安全ルールなど何もない自営だったので、それが普通だと思っていました。
みなさん、「今のようなやり方じゃ、事故が起きちゃうよ」と思いながら働いていませんか?僕はそう思いながら働いていました。
この雑誌を手に取っている方の多くが、林業事業体等なんらかの組織に所属して、「サラリーマン」として林業作業をしているはずです。
林業業界では「組織が安全管理をする」というと、防護装備を支給したり、外部の安全教育を受講させるぐらいだと思います。経営者としては「そこまでしているのだから、あとは作業者が自分で安全を考えて作業してね」という感じでしょうか。しかし、それでは結果として、個人的に労働安全を守っているに過ぎません。
組織経営の視点で考えている楢崎が何より大事だと思っているのは、「組織的な労働安全のルールを定める」ことです。皆さんの組織では「組織的」に「何をやってよくて、何はやってはいけない」ということが決まっているでしょうか。「やってよい/やってはいけない」が個人の判断になっていませんか。個人の判断に委ねられていれば、当然、個人個人で「OK /NG」の許容範囲が異なり、組織の中に自動的にリスクが高い人と低い人が発生しますよね(ベテランほどリスクが高い人だったりしませんか)。
また、「現場状況は毎回違うので『作業目標/ノルマ』は決めてないし、決めるべきではない」と言う経営者・管理職が非常に多いです。このような場合、現場への指示が「できるだけ急いでやってくれ!」となっていませんか。統計には現れませんが、楢崎は、急いで作業をしなければならない時(≒非定常作業時)に事故が多発しているように感じます。
「施業プラン書」の作成というのが以前流行りました(懐かしい)。施業プラン書は、森林所有者への利益還元額を計算する以外に、組織的安全管理の観点からも重要だと考えていました。適切な作業効率を考慮せずに現場作業設計が組まれている場合、作業が予定期日内に終わりませんね。そうなると、管理職・プランナーは「急いでくれ!」という指示を出しますね。ほとんどの現場が実際よりも高い効率で設計されており、結果的に、作業が予定よりも遅いペースで動き、現場は常に焦りの状況に置かれているのでは、と心配です。作業進捗管理が適切に行われて、作業の遅れを緩和するなどの細かい調整ができていれば問題はないのですが……。
林業業界の合言葉は「作業効率を追え!」です。作業効率は高ければどんだけでも高い方が良いのか、一度、考えてみる必要があるかもしれません。
理想の安全管理の図
PROFILE
FOREST MEDIA WORKS Inc.
CEO
楢崎達也
カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2024プロデューサー。
FOREST JOURNAL vol.18(2023年冬号)より転載