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日本の高級木材家具の需要アップ!? 有望株《広葉樹林業》の未来とは

日本の高級木材家具はブランド力がなかったが、ここ最近注目されるようになった。日本の木製家具が輸出の主役になるのか!? 森林ジャーナリスト・田中淳夫が考える希望の林業とは?

有望株・広葉樹林業
拡大の鍵は「家具輸出」

今年7月、岐阜県飛騨市に広葉樹専門の製材所がオープンした。

飛騨市と民間業者がつくった飛騨市広葉樹活用推進コンソーシアムが、昨年休業した製材所を再稼働させ、新たに広葉樹専門の製材所としてスタートさせたのだ。とくに広葉樹の小径木をメインに製材するという。直径16cmから扱うらしい。

広葉樹は樹種によって材質がみな違うため、製材や乾燥が難しい。とくに小径木となると、歩留りを高めるのは至難の業だろう。技術的には厳しいだろうが、挑戦するのは結構なことだ。なぜなら、今後の林業や木材産業の方向性に関わってくるからだ。

最近、広葉樹林業に目が向けられ始めた。広葉樹の混交林づくりや材の活用を勧めるシンポジウムなども多く開かれるようになった。家具や内装材用の広葉樹材は、針葉樹材よりも数倍も高く取引される。

ただし、現在は大半が輸入材だ。それも近年は資源の枯渇を指摘され、調達は難しくなってきた。そこで国産広葉樹へのシフトが考えられている。

とはいえ、すでに大径木の広葉樹は日本でも底を突いている。だから小径木広葉樹をいかに使うかが鍵となる。

今のところ国産広葉樹は、ほとんどチップにして製紙原料かバイオマス燃料にされている。しかし低価格で採算に合わないだけでなく活用にほど遠い。やはり高付加価値な商品にしなければならない。



木製家具が
輸出の主役に!

ところで日本の林産物輸出が伸びていると言われるが、産品の大半は安いスギやヒノキの丸太である。

しかし2020年に突然、木製家具が40億円カウントされた。その後急成長して、2022年には69億円と輸出額全体の11%を占めた。2019年までは木製家具は林産物に含めていなかったが、2010年の家具輸出額は約15億円だったから12年間で4.6倍。

家具の付加価値は非常に高いから、もし輸出の主役になれば林業にとっても非常に有望だ。

これまで日本の高級木材家具は、欧米の高級家具のようなブランド力がなく、最上級ブランドの価格帯と比べると、一つ下のランク扱いだった。だが海外に活路を見出す国産メーカーの努力の結果、デザインが洗練されてきて欧米でも注目されているのだ。

そして家具の素材となるのは、やはり広葉樹材が中心である。つまり家具の輸出を山元につなげるには、国産広葉樹材の安定供給が欠かせない

ただし木製品の輸出に気をつけたいのが、トレーサビリティである。とくに欧米は、原材料の産地確認を重要視する。

EUは原材料が森林破壊していないと確認する義務を課す「EUDR」と呼ぶ規則を成立させた。

もし国産広葉樹材で家具をつくってEUなどに輸出しようと思えば、産地や合法性、そして現地の環境や施業法の証明が求められるだろう。天然林を皆伐した木材で作った家具では、認められない可能性もある。広葉樹林業を展開するには、そうしたバックグラウンドの整備も重要である。


※欧州森林破壊防止のための規則(EU Deforestation Regulation)

森林破壊に関連した製品や農作物のEU輸入を規制するための規則で、2023年6月29日に発効された。2024年12月30日以降、EU市場で販売するには、「森林伐採フリー」や法順守を示す証明が必要。対象は牛肉、ココア、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材など。2023年6月29日以降に生産された商品に適用され、木材および木材製品は2027年12月31日以降にEU市場に出荷される製品が対象となる。



PROFILE

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)など多数。最新作は、明治の元勲が頼るほどの財力を持ち、全国の山を緑で覆うべく造林を推し進めた偉人・土倉庄三郎を描いた『山林王』(新泉社)。奈良県在住。

著書

『山林王』


2023年3月25日発行/神泉社

吉野の山中に、明治の元勲が頼るほどの財力を持った山林王がいた! 土倉庄三郎。100年先を見すえて生涯1800万本の樹木を植え、手にした富は社会のために惜しげも無く使い切った。いまこそ、私たちが知るべき近代日本の巨人である――河合 敦(歴史作家)


FOREST JOURNAL vol.17(2023年秋号)より転載

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