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「林業でリモートワークってできるの?」 DXが開く林業界の可能性、課題に迫る!

森林ジャーナリスト・田中淳夫が考える林業の未来。コロナ禍もあってさまざまな分野でリモートワークが推進されているが、林業界で導入すると何をもたらすのだろうか? また課題はあるのだろうか?

DXは
林業界に何をもたらす?

2021年10月~11月、富山県南砺市利賀の山林である実験が行われた。山林にバルーンを上げて電波を反射させ、樹木や斜面に遮断されずに通信する実験だ。そこで使われるようにしたのは、高速大容量規格の5G(第5世代移動通信システム)回線である。

その上で無人のフォワーダに高画質の4Kカメラを複数台設置した。その映像はインターネットを通じてオフィスのモニターに送られる。一方でオペレーターの操作も回線を通じて即座にフォワーダに伝わり、遠隔操作を行うわけである。また映像はAI(人工知能)によっても解析される。

これは、総務省の補助事業「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」の一つだ。林業におけるリモートワークの可能性を実証するために行われたのだが、採択された26の事業のうち、林業分野はこの一つだけだった。

そこで気づいたのだが、リモートワークはコロナ禍もあってさまざまな分野で推進されているが、林業界ではオフィスワークよりも現場の伐採や搬出機械の遠隔操作、あるいは自動走行が期待されている。こうしたデジタルトランスフォーメーション(DX)は、林業界に何をもたらすだろうか。

一般に指摘されるのは、安全性向上だ。林業現場の事故は、伐採と搬出作業中に起きるものが多いが、人が現場と距離を置くことで重大事故の発生を減らせる期待がある。

次いで人手不足対策。遠隔操作でオフィスから複数の現場を動かせるほか、一部の車両が自動走行してくれたら現場に行く人員を減らせるからだ。逆に言えば、それらが現在の林業現場の抱える問題ということでもある。もちろん、それらの効果も期待するところだが、私はリモートに別の可能性を感じている。それは現場作業者と管理者との乖離を少なくすることだ。



現場と管理者が一体化して
可能になることって?

オフィスで立案された作業工程や指示が、現場の状況と合っていないという不満はよく聞く。だがリモートが普及すると、オフィスワークと現場作業は一体化できる。管理側が現場をリアルタイムで見るだけでなく、直接作業に従事することも可能になるからだ。

さらに別の意味でも現場の状況を知ることができる。今回の実験では、AIによってヘルメットやハーネスなど安全装置を着用していない作業者を発見する試みも行われた。実は林業現場の安全管理の問題点には、肝心の作業者が規則を守っていないケースも多々あるからだ。

さらに危険地帯の判定、クマなどの危険動物の出現……といったことの検知も試みられている。意外と現場では常に周囲に目を配っていられないし、地形・地質・植生など判断に専門知識が必要な場合もある。管理者がリモートで現場の様子を確認して、フィードバックすることができたら、安全の確保や誤作業をなくせるうえ、効率アップも可能になる。

ただ肝心なのは、リモート技術を十分に使いこなせる人材が必要なことだ。遠隔操作技術だけでなく、現場の映像からどんな情報を読み取れるかが重要だ。機材以上に人のスキルアップが欠かせないだろう。

PROFILE

田中淳夫

静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『絶望の林業』(新泉社)など多数。奈良県在住。

著書

『獣害列島』


860円/2020年10月10日発売/イースト新書刊

獣害は、今や農業被害だけではない。シカやカモシカ、ウサギなどの野生動物は、再造林した苗を食い尽くし、またクマとシカは収穫間近の木々の樹皮を剥いで価値を下落させるなど林業に甚大な被害を出しているのだ。そして森林生態系を破壊し、山村から人を追い出し、都会にまで押し寄せるようになった。なぜ、これほど野生動物が増えたのか、日本の自然はどう変わったのか、この緊急事態に何ができるのか。現場からの声とともに届ける。




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