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市売を介さず原木直送販売? 森林組合系統の連携で新しい流通形式が実現!

原木の生産ペースは季節要因に左右される上に災害などの不安定要因も付きまとい、県内での調達だけでは安定性を欠くことが多い。そこで、岐阜県森林組合連合会では、県内森林組合および近隣連合会との連携により、原木の安定した確保を実現している。連携の一環で、他県に原木を出荷するケースもある。

総取り扱い量のうち
8割を占めるシステム直送販売

岐阜県森林組合連合会の岐阜木材ネットワークセンター(関市)では、原木を市売にかけずに山元から直送で販売するシステム販売を2006年度にスタートした。現在、並材は基本的にシステム販売で取り扱い、市売で扱うのは枝打ち材などの優良材や特殊材に限定している。 

システム販売の取扱数量は、スタート時には全体の2割程度に過ぎなかったが、2011年には森の合板協同組合(中津川市)、2015年には長良川木材事業協同組合(郡上市)と、大口顧客となる大型加工施設が県内で稼働したことを受けて右肩上がりで推移。2019年度は総取扱量24万5877㎥のうち、システム販売は21万1667㎥と初めて20万㎥を上回り、全体の86%を占めた

センターがハブとなり
需給情報を一元管理

システム販売の流れは、①毎月、出荷者から向こう3ヶ月分の原木生産計画を聞き取り、②その内容を踏まえ、四半期ごとに顧客(会員制)と数量・価格を調整、③山元あるいは中間土場から直送で販売--というもので、センターが情報のハブ機能を担うことでスムーズな運用が実現されている(現在は新型コロナウイルス流行の影響でマーケットが不安定なため、顧客との調整は柔軟に実施することにしている)。 

中間土場は飛騨地区や東濃地区に複数箇所、常設しているほか、必要に応じて共販所の土場をシステム販売用の中間土場として利用する場合もある。このあたりは、山元の生産現場からの距離に応じ、フレキシブルに対応している。 

価格は、仕分け径級ごとに定価として設定し、すべての顧客に対して同値で販売する。

販売手数料は価格の5%(市売は8%)、仕分け料は900円/㎥(同約1000円/㎥=地域差がある)である。 

システム販売の決済については、これまでは各共販所の市売システムの中で運用し、市日から2週間後の支払いとしていた。しかし、最近は月末締め・翌月払いとするケースもあり、徐々に後者に変更していく方針。販売先への請求はセンターが一括して行っている。


中間土場での作業。一定の規格に基づく径級別に仕分けし、それぞれに定価を付ける。顧客によって価格を変えることはない。

効率化を実現する
独自の検知システム

中間土場での検知には、名古屋市のソフト会社と共同開発した丸太自動認識システム「速測デジ」を一部で採用している。これはデジタルカメラの画像データを独自のノウハウで処理し、本数と材積を自動計測するもので、検知作業を大幅に効率化できる。顧客と画像データを共有することで、検知結果への信頼性も確保できる。

支えとなる
系統間の連携

顧客への供給責任を果たす上で欠かせないのが、森林組合系統の組織力をベースにした県内森林組合及び近隣県森連との連携である。特に後者との連携により、集荷範囲が他県にまで広がる効果は大きい。 

原木の生産ペースは季節要因に左右される上に災害などの不安定要因も付きまとい、県内での調達だけでは安定性を欠く。そのため、センターでは必要に応じて近隣県森連から原木を融通してもらっている。逆にそれらの県森連から要請を受け、他県に原木を出荷することもある。 

渡辺秀仁・センター所長代理は「自県だけで供給責任を担うのは難しく、系統間で連携できることが非常に心強い。今後もこの関係を維持・強化していきたい」と話している。 

なお、木質バイオマス発電所の稼働などにより、低質材の取扱量が増加傾向にある。

教えてくれた人

岐阜県森林組合連合会・岐阜木材ネットワークセンター

渡辺秀仁さん


文/赤堀楠雄

FOREST JOURNAL vol.4(2020年夏号)より転載

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