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事務交渉を組合が一手に引き受け、現場は生産に注力 大量の原木を共同販売

ノースジャパン素材流通協同組合は組合員が生産する原木を取りまとめ、販売している共同出荷組合。販売先との数量調整や価格交渉、決済、新規顧客の開拓などを組合が一手に引き受けることで、組合員は現場の確保や生産といった業務に集中できる。

年間57万㎥を
合板工場などに販売

ノースジャパン素材流通協同組合(岩手県盛岡市)は組合員が生産する原木を取りまとめ、合板工場や製材・集成材工場、木質バイオマス発電所などに販売している共同出荷組合で、岩手県を中心とした東北各県(福島県を除く)と北海道に会員を有する(表①)。

表①県道別組合員数

 
※2020年4月1日現在

もともとは岩手県内の国有林・民有林のそれぞれで素材生産に従事する業者と森林組合が、県内合板工場向けに原木を共同で販売することを目的として、2003年4月に設立した岩手県素材流通協同組合が母体。2008年7月には、原木の取り扱いエリアが広がっていること、将来さらに広域化が見込まれることを踏まえ、現在の名称に変更して事業区域を拡大した。 

合板メーカーが国産材へのシフトを進めたこと、東北域内で大型加工施設の立ち上げや生産力強化が相次いだことなどから実績を伸ばし、2019年度の取扱量は約57万㎥に達している(表②)。販売先は東北各地の合板工場やLVL工場、製材・集成材工場、木質バイオマス発電所など。 

表②最近5年間の取扱実績(㎥)


※発電用は1t=1㎥で換算

販売システムは、①毎月、すべての組合員から出荷希望アンケートを取り、合板工場や集成材工場などからの発注をもとに出荷を割り当てる、②組合員は共通の伝票に出荷数量を記載して組合に提出、③組合は伝票を集計して代金を請求・回収し、手数料(3.25%)を差し引いて組合員に支払う(月末締め、翌月現金払い)--という流れ。販売先との数量調整や価格交渉、決済、新規顧客の開拓などを組合が一手に引き受けることで、組合員は現場の確保や生産といった業務に集中できる。 

最近は高樹齢のスギ材や広葉樹などに食指を動かす製材工場と組合員との間を取り持ち、相対での販売をサポートするサービスも開始。そうした原木の扱いに頭を痛めていた組合員が販路開拓に取り組めるようにしている。 

鈴木理事長は「直送というモノの流れだけでなく、需要者のニーズを山元に伝えて共有させる『情報流』(情報の流れ)が重要」と語り、川上の林業サイドがそうした情報を手にし、対応力を高めることで立場を強化する必要性を強調している。 

なお、組合では、年間出荷数量に応じた配当金を組合員に支払っている。金額は年度総会で決定しており、昨年度分としては1㎥当たり25円を支払った。

協力

ノースジャパン素材流通協同組合

鈴木信哉理事長

髙橋早弓常務


文/赤堀楠雄

FOREST JOURNAL vol.4(2020年夏号)より転載

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