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林業者の取り組み

安全対策は”KY朝礼”から! 異業種の常識を取り入れるマネジメント術

労働災害はどんなに気をつけていても起こってしまうもの。そんなときに危険から身を護るのは、正しい知識と十分な備えだ。広島県の若手企業、守岡林産では、異業種の安全対策を柔軟に取り入れ、仕事の効率アップにもつなげている。

「小さな失敗」から
大事故の危険を防ぐ

「林業はほかの産業の15倍」。これは何の数字かわかるだろうか。1,000人の労働者が起こす死傷事故の発生率を示す労働災害千人率という指標で見ると、2018年の統計で全産業平均が2.2%に対して、林業の平均は32.9%。つまり、林業は全産業の15倍近くの事故を起こしたわけである。

この数字は、林業が危険な職場であることを示しているのだ。数字は毎年変わるが、概ね10倍以上が続いている。さらに人身事故ではないものの機材や樹木などに与える重大事故も少なくない。それだけに林業現場の安全管理は、もっとも重要なテーマと言えるだろう。

そんな問題に意欲的に取り組む守岡林産(広島県)の例を紹介しよう。設立6年目の若い会社で、社員の多くが林業に未経験で参入しているという。

「まず始業前にKY朝礼を行います。“空気読まない”じゃなく“危険を予知”です。前日の作業で起きた、事故にはならなかったけどちょっとヒヤリ、ハッとして危なかったな、と思える出来事を紹介し合うヒヤリハット報告を行います」(守岡社長)。


KY朝礼の様子。大きな事故を防ぐためには小さな気付きを共有することが重要だ。

昨日の小さな失敗が、今日の大事故につながりかねない。それを振り返ることで危険を予知し注意力を高めるためである。

また、伐採などの作業の開始前に対象を指差して、声を上げて確認する「指差し確認」を徹底して指導している。動作を伴って確認作業を行うと、頭の中で考えるだけよりも注意力が格段に増すのだ。また周辺の人々にも注意を喚起する効果もある。

安全装備は全て支給!
空調服もいち早く導入

基本的な安全管理に加えて、装備にもこだわっている。注意するだけでなく、スムーズで快適に作業を行えることが安全につながるからだ。


支給される安全装備の一例。インカムの導入は、安全対策だけでなく仕事の効率向上にも役立っている。

まずヘルメットやイヤマフ、安全長靴、チェーンソーの刃から身を守る防護ズボンなどはすべて会社から支給し装着を義務としている。その中で出色なのが、夏の暑さを和らげる空調服の採用だろう。服にファンがいくつも着いていて、バッテリーで服の中に風を送り込んでくれる作業服である。建設現場などではよく着用しているが、林業で使用する例はあまり聞かない。しかし、守岡林産はいち早く導入した。

さらに現場では全員にインカム(相互通信機)を所持させている。各人が遠く離れていたり、エンジン音などのせいで声が届かないと、お互いの意思の疎通が上手くいかない。インカムによって誰が、どこで、何をしているのか常に会話できることが安全に役立つという発想からだ。これは仕事の効率アップにもつながったという。

危機管理能力の育成が
即戦力の作業員を生み出す

そのほか定期的に救命救急講習を実施して、怪我した場合の応急措置をマスターさせている。また、スズメバチに刺された際の抗体薬「エピペン」やAED(自動体外式徐細動器)、担架なども現場に携行するようにした。どんなに気をつけても事故は発生するが、その際の被害を最小限に抑える準備をしているのである。

「作業マニュアルも作成しています。個人の経験則に頼るのではなく、誰もが安全に作業を行える手順を示し、新人でもすぐに仕事ができるようにします」(守岡社長)。


社員を家族のように想う守岡社長。「安全作業を徹底することで社員の生活や怪我から守りたい」と語ってくれた。

KY報告、指差し確認、インカム、空調服、そして研修……異業種では当たり前のことも、林業界に普及していないことは多い。

若い会社だからこそ、慣行に流されず「良いことは何でも取り入れる」姿勢だ。学ぶことは少なくないだろう。

DATA

株式会社守岡林産


TEXT:田中淳夫

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