「安全」を徹底追求! 急傾斜地に強い次世代フォワーダが活躍
2024/10/18
急傾斜の作業道でのフォワーダ集材は転倒や転落などの事故防止が課題だ。そんな現場の声に応えようと開発されたのが独自の安全機能を搭載する前田製作所の「FC560S」。その初号機を導入した事業体に、次世代型フォワーダの使用感を聞いた。
ユーザーと二人三脚で開発
前田製作所はクローラクレーンなどの製造で60年以上のキャリアを持つ長野市の中堅重機メーカー。「FC560S」は同社初のフォワーダとして昨年秋に発売された。初号機を導入したのは、同じく長野県内を拠点とし、年間約1万8000立方メートルの素材生産を行う平澤林産(伊那市)。
取材協力 平澤林産有限会社 代表取締役社長 平澤 照雄さん
平澤林産は「FC560S」導入以降、急傾斜地の搬出間伐現場などでさっそく同機を投入してきた。平澤照雄社長は「FC560S」の導入理由をこう話す。
「前田製作所は林業機械メーカーとしては後発です。でもその分、固定概念がなく、ユーザー目線で開発に取り組んでいる点を評価しています。ユーザーと二人三脚になって現場での試運転を重ねてから市場投入しているので安心感が違います。」
前田製作所は2019年に同社初の林業機械となる油圧式集材機「FY253」を発売。架線集材を得意とする平澤林産は、同社からの依頼で開発段階からフィールドテストに参加し、平澤社長は「省燃費、安全性、効率性で完璧な機械に仕上がった」と太鼓判を押す(現在は2台体制で運用中)。「FC560S」の開発でも自社の搬出現場に試作機を投入して全面協力した。
急坂も自動サポートで快適走行!
傾斜地での自動駐車ブレーキ機能や降坂時の過回転防止制御、登坂時のエンストを防ぐアンチストール制御など安全走行の支援機能を充実。
現場からのフィードバックを受けて前田製作所が実現させた「FC560S」独自の安全機能が、降坂時にエンジン回転が上がり過ぎないように自動調整する「過回転防止制御」、登坂時のトルクダウンによるエンストを防ぐ「アンチストール制御」、そして傾斜地停車時の「自動駐車ブレーキ」の3つだ。いずれも特許申請している。
平澤林産でオペレーターを務める根橋尊(みこと)さんは「FC560S」の使用感をこう話す。「他社のフォワーダの場合、積載時の急坂登坂では走行レバーを押し引きしてエンジンを吹かさないとエンストすることが少なくなかった。でもFC560Sは走行レバーを押しっぱなしの状態でも力強くスムーズに登れます。車体の前後バランスも良いので、4メートル材を積む際にキャビン右側に丸太を何本か突き出して前後バランスを取るようにしなくても安定して走れるようになりました。」
現場目線の安全機能を満載!
前田製作所の勝野さんは「FC560S」の安全機能をこう話す。「油圧ポンプの圧力と作動油流量の調整でトルクを太くしました。これで急坂登坂でのエンストを自動で防ぎます。逆に降坂時は走行レバーを押しっぱなしにしてもエンジンが過回転しないので運転操作が疲れません。自動駐車ブレーキは建設機械のベースマシンでは一般的で、フォワーダへの搭載も必須だと考えました。」
国内メーカー製高品質ゴムクローラを採用するなど足回りの耐久性を強化。
作動油タンクをクローラの真ん中に配置するなど重量バランスも徹底追求。積み荷の重量を測定し、記録データをUSBポートから出力できるのも現場目線の嬉しい機能だ。
キャビン内のモニターで、死角となる機体の後方と右方を確認できる。
「後発」だからこそ
「FC560S」は機体の後方と右方をモニターできるカメラも搭載。キャビン内の7インチマルチモニターを通して、オペレーターの死角となる場所の安全性を確認できる。丸太を積むと機体周辺の視認性が極めて悪くなるフォワーダには嬉しい機能だ。
前田製作所の林業機械は現在、油圧式集材機「FY253」と昨秋リリースした「FC560S」の二機種のみ。同社産業機械本部の勝野知幸さんは「林業機械メーカーとしての認知度は決して高くありません。そこで知名度のある他メーカーとの差別化を考えたとき、やるべきことは安全性の追求でした」と開発コンセプトを話す。転倒時保護構造のエアコン付きキャビンも含めて「他業界では当たり前になっている安全・快適性を林業機械にも取り入れていきたい」(勝野さん)。今後は「FCシリーズ」としてフォワーダの積載量のラインナップを充実させる考えだ。
「省力化や効率性、そして一番に安全性を求めないと若い人材が定着しないのが今の林業。機械も社会情勢に応じて進化する必要があります。」と平澤社長は時代の変化を語る。前田製作所の林業機械は次世代の林業現場を力強く牽引してくれそうだ。
DATA
FC560S
機械質量:8,760kg、最大積載量:5,600kg、
全長:5,370mm、全幅:2,490mm、全高:2,760mm、
走行速度(低速):0~7.8km/h、走行速度(高速):0~12km/h
問い合わせ
株式会社前田製作所
TEL:026-292-2228
文:渕上健太
写真:松尾夏樹
FOREST JOURNAL vol.21(2024年秋号)より転載
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