こんな防護服が欲しかった! 森林組合発・安全で快適に作業できる『ホークアイ』とは?
2023/08/11
森林組合が林業ウェアをゼロから企画、販売しているという――。装備を「使う側」である森林組合が「開発」をしているということを聞きつけ、開発担当者に話を伺った。
安全でかっこいい林業ウェアを
防護パンツに思いをかけ10年
「2009年に政策として『森林・林業再生プラン』が掲げられ、ドイツの林業を参考に日本林業を成長産業にする施策が打ち出された頃、自分も欧州の林業を学び始めました」。こう話すのは、八戸市森林組合で「日本の林業から労災を無くす」を掲げ、数々の林業装備を開発する工藤義治さんだ。
当時、欧州には林業ウェアメーカーが多く存在し、選択肢が豊富にあることを知った工藤さんは、林業界の人材確保のために「かっこいい林業」を提示すべく、これまでの頬被りやヤッケから脱出を図り、蛍光色をふんだんに取り入れたファナー社の輸入・販売を始めた。それらは念願の「かっこいい林業」を体現する安全規格のあるウェアだった。
しかし、姿形は良くなったものの、高温多湿な「酷暑型」の夏がくる日本の気候には厳しいものがあった。また欧州と日本では体型も大きく異なり、オーバーサイズになると安全性が損なわれるという課題も出てきた。
「防護パンツを履いていては脱水症状になってしまう」。そんな現場の声を受け、改良を求めメーカーに掛け合ったが、当時は日本の市場が小さいという理由から改良版の製作には至らなかった。
それでもくじけず、防護ブーツやファーストエイドキットなど海外製品の研究を行い、取り扱いを始め、出会うあらゆる人たちと日本での防護服の課題を話し続けた。
そんな折、消防服を製作するとある代理店と話す機会が訪れた。
防護服を日本人の体型に合わせること、気候への課題などの相談をしたところ、製作可能との返事があった。
「やっと日本向けの防護ウェアが作れる」。その思いを抱え、自ら企画し開発した初の日本林業向けの防護パンツは、動きやすいと好評を得て、これを転機にデザイン性や現場ならではの気づきからの改良を重ねていくことに。
現在に至るまで、防護パンツのみならず、林業用レインコートや防護ブーツ、手袋なども開発・販売した。
最初の防護パンツを企画・販売を始めてから約10年。今年の6月に「防護パンツの最終形になるように」と想いを込め改良された新作が発売された。鷹の目を意味する『ホークアイ』は、長さ40cmと大きなベンチレーションが由来。よりストレッチ性を強化し、シンプルなデザインに加え、最高の履き心地を目指した一着だ。
これまで海外品の輸入だけにとどまらず、製品づくりのノウハウを学び、日本の林業に合わせた製品へと昇華させてきた工藤さんの集大成とも言える『ホークアイ』は、日本の林業で労災が無くなることに寄与する一品となるだろう。
ホークアイのここがすごい!
快適性
40cmほどのベンチレーションで通気性を確保。動きやすさを追求し、疲れにくい。特殊伐採作業者にもオススメ。スリムな形状で、防護パンツ特有の異物感・ダボつきがなく日常シーンから着用しやすい。
国内縫製
消防服などを手掛ける縫製工場で製作。洗濯後の乾燥が半日~一日と早いのも嬉しい。
安全性
ヨーロッパ認証(EN ISO 11393-2 Type A)を取得。従来よりも比較的広い範囲の防護エリアをカバーした。
ストレスチェック済み
樹上特殊伐採の専門業者や林業会社にて約6ヶ月間のストレスチェック(着用試験)を実施。あえて辛い姿勢や悪条件(特に道具や幹との擦れ)のもと使用した結果、ガソリンの揮発成分により太もも部のストレッチ性がやや伸びたように感じる程度だった。
DATA
8-mori protection ホークアイ《オールシーズン向け》
サイズ:S、M、L、LL、3L(各サイズ股下標準/股下ショートの展開有)
重量:Lサイズ標準で990g
価格:¥39,930(税込)
教えてくれた人
八戸市森林組合
樹木医・林業技士
工藤義治さん
写真:HONTANI
FOREST JOURNAL vol.16(2023年夏号)より転載