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苗木や林業資材運搬の身体負荷を削減へ 社会実装へ向け動き出すドローン開発事業

林業分野でのドローン活用検証として、苗木や林業資材の運搬デモンストレーションが、2020年に岐阜県・長野県で実施された。人材育成やプロフェッショナルサポートを担うクリーク・アンド・リバー社と産業用大型ドローン開発を行うサイトテックの協業プロジェクトだ。

最大積載量50kgのドローンで
林業資材を楽々運搬

「プロフェッショナルの生涯価値の向上」をミッションとするクリーク・アンド・リバー社(以下、C&R社)は、様々な業界のプロをサポートするにあたり、利用ツールやテクノロジーをサポートしている。2018年から始まったドローン事業部でも、プロフェッショナルツールとしてのドローンを用いることで、各産業のビジネス価値を高めることをミッションとしている。

「様々なドローン関連会社と協業の調整をする中で、最大積載量50kgが可能な大型産業用ドローンを企画・開発するサイトテック社と出会いました。C&R社がこれまで培ってきた人材育成やマーケティング、プロジェクトマネジメントスキルに、サイトテックのドローン開発と運用ノウハウを掛け合わせ、ドローンの社会実装に向け、共同で実績を積み重ねています」(春山氏)



長野と岐阜で
運搬デモンストレーションを実施

岐阜県郡上市では、岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアムの協力を得て、ドローンの林業分野における活用方法の模索から共同で行なった。その結果として、自動飛行で杉の苗木や支柱・TUBEXを運搬する検証(往復約2km)や、林道から山の中腹に1日300kgのイボ竹を運ぶ検証を行なった。

「この時の検証では、災害で土砂が崩れてしまい、足場が悪くなった急斜面にドローンで林業資材を運びました。このような場所に大きな資材を担いで往復するのは、非常に負担ですし危険です。『ドローンでスポットに置いてくれるだけで助かる』と林業関係者の皆様からは、大変ご好評を頂きました」(菅原氏)

また11月には、長野県林業職員協会、長野県森林組合連合会の協力を得て、北安曇郡池田町にて木抗・滑車・ワイヤー・チルホールなどの林業資材(最大20kg)を、谷間を挟んだ片道約300mの距離を運ぶ等のデモンストレーションを実施した。

「山の中で長時間作業される林業向けドローンにとってひとつの問題点は“バッテリー”です。積載量や飛行距離、高度などでバッテリーの持ちは変わってきます。何をどれくらい運ぶのか、どのルートで、どの機体で、何回に分けて運ぶと燃費効率がよいか、等の検証も、今後の実用化に向けた焦点のひとつです。一方でエンジンや水素燃料などを動力源としたドローンの開発も進められています」(春山氏)



地域密着型のパートナー企業と
関係構築が不可欠

ドローン運搬の実用化にあたっては、無駄な移動・拘束時間や諸経費を減らし、オペレーションコストを下げることが望まれる。そのため、今後、林業現場で大型ドローンが日常的に活用されるために、より多くの地元企業や地元林業関係者との協業が不可欠だとC&R社は考えている。

「今回実証実験やデモンストレーションをさせて頂いたところでは、林業関係者の皆様が、スマート林業ということに対して非常に意欲的でらっしゃったのは印象的でした。他県からもデモンストレーションの要望はあるものの、このコロナ禍で自粛している状況です。今後は全国に視野を広げ、各地域の地元に密着した企業とパートナーとして関係構築を進めていきます」(菅原氏)

ドローン運搬の最終的な目標は全自動化での飛行だが、現時点では人によるオペレーションが必要だ。山間部の飛行は障害も多く、電波にも影響がある。足元の不安定さに加えて、気候も不安定と難易度が高い。C&R社は、これまで現場で培ってきたノウハウを研修カリキュラムに反映し、山間部での運搬に慣れた人材育成を促進する考えだ。

「C&R社は、ドローン関連のプロジェクトを推進するにあたり、個人・法人問わず専門性をもったプロフェッショナル、パートナー企業を募集中です。ドローンを活用した物資輸送・運搬にご興味ある企業、地方自治体、団体の皆さまも、ぜひお気軽にお問い合わせください」(菅原氏)
 

DATA

株式会社クリーク・アンド・リバー社
ドローン事業部
 

問い合わせ

株式会社クリーク・アンド・リバー社
ドローン事業部 春山・菅原
TEL:03-4550-6188
E-MAIL:cr_drone@hq.cri.co.jp


取材・文:かのうよしこ

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