木1本1本の管理がアプリで可能になる!? 西粟倉村で実証がスタート
2020/02/13
住友商事は西粟倉村、株式会社DATAFLUCTとともに森林所有者のための森林管理ツールの開発と実証実験を開始した。昨年施行された森林経営管理法や、昨今話題になっている温室効果ガスの削減に向けた取り組みで、SDGsの観点からも注目が集まっている。
森林管理アプリの開発と実証実験
国土の7割を森林が占める日本において、森林の間伐や植林は適正に管理しなければ山が荒廃するだけでなく、大規模な災害の発生を引き起こす原因にもなる。
住友商事はこの度、岡山県西粟倉村と株式会社DATAFLUCTと共同で森林管理用のアプリ開発と実証実験を開始した。3者による共同事業として森林管理のIoT化を進めるとともにSDGsの観点から持続可能な林業の発展、継続を目指す。
実証実験の内容としては、これまで適切な情報が不足していた森林所有者に向けた所有面積、木材の体積、年間CO2吸収量などの所有林の正確なデジタル情報をアプリを通して提供するというもの。さらに、所有者が専門家に森林資産の運用、相続を相談できる仕組みを整備し、アプリの活用状況や課題を検証していく。
アプリのプロトタイプ開発は、2020年2月末を目途に完了し、2020年3月以降には西粟倉村の林業事業者にアプリの配布を予定。これまで細部に渡る管理が行き届かなかった地区地域での森林管理が可能となる。また、住友林業は木材を含んだ新たなビジネスの展開も視野に入れており、データ化によって適正な森林管理を官民一体で行える仕組みだ。実証実験のデータを基に全国的にこのアプリが広がりを見せれば、温室効果ガスの削減量なども「見える化」できることが期待される。
デジタルデータ活用で
森林管理は進むのか?
森林のデータ化は持ち主だけでなく、管轄する都道府県や市町村にも相当なメリットが見込まれる。特に2019年施行された森林経営管理法には個人所有の森林を明確にして、これまで曖昧に管理されていた境界線もあらたに引き直すことも掲げられているため、個人所有の山林管理は所有者をはっきりとさせることが必要だ。木1本1本が管理対象に策定されていることからも、放置林の扱いや山林管理のデータ化は急務とされていた。
企業と行政が一体になって管理運営を進める事業は多くあるが、データサイエンスを専門とする会社も参入しての実証実験は珍しい。今後、この実証実験から本格稼働になった際の効果に引き続き注目していきたい。
DATA
TEXT:岩田武