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国際水準の森林クレジット“VCS”日本初創出!日立システムズが地域と行うネイチャーポジティブな森づくり

脱炭素社会への切り札として国内でも関心が高まる森林由来のカーボンクレジット。国際評価が高い認証制度を使った世界水準の森林クレジット『VCS』を創出する取り組みが国内で本格始動している。

<目次>
1.国際水準の森林由来クレジットを創出
2.国内初のVCS創出プロジェクト 石巻地区森林組合と協働
3.単層林から針広混交林へ転換 森林の新たな価値創造を図る
4.森林課題を克服し『ネイチャーポジティブ』な森林へ
5.日立システムズの森林由来のカーボンクレジット創出・取引の3つの特長

 

国際水準の
森林由来クレジットを創出

見せかけの環境配慮とも訳される『グリーンウォッシュ』に対する懸念が世界的に高まる中、広大な森林が吸収するCO₂を売買可能なクレジット(排出権)に置き換えるカーボンクレジットも例外ではなく、炭素吸収量の算定手法に高い信頼性が求められるようになっている。

その流れを受け、国際水準のクレジット創出に早々に乗り出したのが、システム構築事業などを手掛ける日立システムズ。

同社の宮本さんは言う。

「世界中で、カーボンクレジットの質を高める動きが活発になっています。我々が取り組んでいるVCSは民間主導のカーボンクレジットでは世界最大級の発行シェアを有する認証基準。低品質なクレジットの過剰発行を防ぐためにVCSは非営利の認証機関によって炭素吸収量算定などの方法論が定期的に改定、見直されています。グーグルやマイクロソフトといったグローバル企業も購入しており、VCSの国際的な信頼性は折り紙つきです。森林の経済的な価値だけでなく、社会的・環境的な価値を高められるとして事業化を進めています」。

VCS(Verra)クレジットは世界基準!
 
Point1: 需要の高まりが期待
衛星技術を用いて高品質なカーボンクレジットを生み出せる。「質の高さを求める」世界的な潮流と合致し、森林組合などは需要の高まりが期待できる。

Point2: 世界でアピールできる
日本の森林由来カーボンクレジットを購入することで企業は森林と自然の保護に貢献。国際的な認知度も高いため、取引する上でアピール材料にできる。

Point3: 「世界」が価値を理解
国際ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)においてトップクラスのシェアを占めるVerra(NPO法人)の認証であるため、あらゆる国の企業が価値を認識する。
日立システムズが創出するカーボンクレジットは世界有数のクレジット認証機関であるVerra(本拠地は米国)の制度を利用。Verraの制度で創出されたクレジットはマイクロソフト、アマゾン、アップルなどのグローバル企業に活用されている。

国内初のVCS創出プロジェクト
石巻地区森林組合と協働

国内初(注①)となるVCS創出に向けて日立システムズは、宮城県の石巻地区森林組合などとの共同プロジェクトを2023年度に始動。同組合が管轄する石巻市河北地区にある約900ヘクタールの人工林が吸収する炭素量をVCSの発行元である米国の非営利認証機関『Verra』に申請した。

重要な炭素吸収量の算出は、人工衛星を活用した測定に実績を持つフランスのEverimpact社が最新の算出方法論を用いて行う。

衛星から照射する光学レーザーで森林の光合成量を高精度で把握し、AIなどを活用して炭素吸収量を測定します。衛星を使うために特に広い面積の森林で費用対効果が高まり、定期的なモニタリングによって品質も担保できます」と同じく日立システムズの北出さんは特徴を話す。

注①:Verra Registry(https://registry.verra.org/)より日立システムズ調べ

衛星により森林環境の改善を可視化
 
今回、日立システムズが採用した方法論VM0045は、衛星技術を利用したCO₂吸収量測定を行うことが可能。間伐や除伐によって、単層林から針広混交林などに転換させる施業が柱となる。木材生産が難しかった森林でVCSを創出することで、生物多様性に配慮した『ネイチャーポジティブ』な森づくりを進めることができる。

単層林から針広混交林へ転換
森林の新たな価値創造を図る

VCSの特徴の一つがクレジットを生み出すための施業方法だ。

国内の森林クレジットでは間伐によって木の成長を促して炭素吸収量を増やす施業方法が中心だが、間伐や除伐によって、単層林から針広混交林などに転換させる施業が柱となる。

転換の目的を北出さんは「標高や傾斜の問題などで施業が難しく、放置され高齢化した人工林の管理が国内各地で課題になっています。VCSでは、木材生産が難しい森林を針広混交林などに移行させることで炭素吸収を促すとともに、生物多様性向上や新たな施業による雇用創出など、森林による新たな価値創造を目指します」と説明する。

石巻地区森林組合では、スギやヒノキの人工林での間伐施業が中心だったが、今後は、同様に間伐や除伐などの施業を行いながらナラなどの広葉樹を天然更新で育てる針広混交林化に取り組む。

森林の課題を克服し
『ネイチャーポジティブ』な森林へ

国内では皆伐再造林が主流だが、立地や地形の関係で施業が難しいエリアも多い。そうした場所でも、針広混交林化によるVCSの創出によって生物多様性に配慮した『ネイチャーポジティブ』な森づくりにつなげられる可能性がある。

放置されたり、高齢化した人工林を針広混交林や育成複層林に移行させて発行したVCSのクレジット販売収益が森林組合などに還元され、森林管理に活用できます。森林クレジットに馴染みのない山主さんも多く、合意を得ることが重要になりますが、従来の林業を継続するエリアと針広混交林化など、生物多様性を重視するエリアにゾーニングしていく森林活用を提案していきたいです」と宮本さんは展望する。

石巻地区におけるプロジェクトの準備段階では、石巻地区森林組合が施業してきた数千ヘクタールの森林について20年間分のCO₂吸収量を衛星データによって可視化。施業履歴や今後の森林計画と組み合わせて森林クレジット創出量を算出すると、最大で年間2・25万トン、2・6億円相当の創出可能性が確認できた。

「日本の森林は世界の脱炭素に貢献できる潜在性を持っています。施業をデジタルの力で支援しつつ、最終的にはカーボンオフセットを活かして持続可能な森づくりにつなげるのが目標。ぜひ国内企業の皆さまに国産の質の高いクレジットを購入していただきたいです」と宮本さんは呼び掛ける。

脱炭素や生物多様性維持に貢献する森づくりを通して森林所有者に利益を還元し、森林整備の促進を目指す――。日本の森林の課題に寄り添う新たな森林クレジットに注目すべきだろう。

日立システムズの森林由来のカーボンクレジット
創出・取引の3つの特長

トータルサポート
日立システムズがクレジット申請から創出、取引まで、長期間にわたってトータルにサポート。

収益分配方式
プロジェクトの申請や創出に関する審査費用などの費用は不要(日立システムズが負担)。

取引(販売)支援
日立グループの豊富な販売チャネルを活用して、カーボンクレジットの販売を手厚く支援。

 

お話を聞いた人

株式会社日立システムズ

宮本 裕樹 氏(左)

株式会社日立システムズ

北出 晃人 氏(右)

問い合わせ

株式会社日立システムズ


写真/都築大輔
取材・文/渕上健太

Sponsored by 株式会社日立システムズ

FOREST JOURNAL vol.25(2025年秋号)より転載

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