山形県が森林の皆伐を容認!? 国内産木材需要に応えられないジレンマ
2020/01/10
山形県は長期的に手入れされず荒れてしまった森林の整備事業に関して、これまで森林所有者と取り交わしていた協定の見直しを進めている。協定は所有者の森林機能の維持を目的に20年間にわたり皆伐を禁止し、山林を活用する足かせになっていた。まずは条件付きで皆伐を認める方針だ。
過去の協定が足かせ?
山形県が協定を見直す理由
山形県は長期間手入れのされていない荒廃した森林の手入れを目的に「荒廃森林緊急整備事業」の見直しに乗り出した。この動きは過去に取り交わした協定の要件緩和にもつながる。
そもそも事業には、「やまがた緑環境税」を活用し、実行する際に「森林環境緊急保全対策事業に関する協定書」を締結する決まりがある。この協定の主な内容は「皆伐・転用の禁止」「森林組合との委託契約等による協定期間中の持続的な管理の担保」「相続、譲渡した場合の協定の承継」の3項目からなり、協定の期間は20年。
協定は森林の再生と保全に主眼をおき、整備後に安易な宅地転用などを行えないようにしているため、森林の乱開発防止に一役買っている。
しかし、過去に取り交わした協定が足かせになり、主伐期を迎えた森林の整備が安易に行えないこと、松食い虫被害が発生した際、皆伐や植え替えなどの対応が迅速に行えないなどの事例も出てきている。
この様な事例を受け、山形県は県内28団体に聞き取り調査を行ったところ、9団体から協定が支障となり一体的な皆伐や再造林の計画ができないと回答した。
主伐期に木を切れないとなると、木材として売ることもできないため、求められている木材需要に応えられないジレンマが生じる。国内産木材の利用需要増加を受けて、山形県は県内の森林業者、団体の声に応えた形だ。
再造林を担保に皆伐を認める
山形県は県内団体と有識者の見解を受け、20年間の協定期間や内容は継続する上で、事業実施の翌年度から10年以上が経過した箇所については期限内に再造林を行うことを担保に皆伐を認めると規制を緩和した。
見直しの方針については10月に開かれた「やまがた緑環境税評価・検証委員会」で了承も得て、今後は詳細を詰めて来年度から運用を始める。協定の見直しを含めたこの動きは、同様の協定がある都道府県へ波及しそうだ。林業の需要の高まりと、SDGsへの関心の高さが過去の事例を柔軟に変えていこうという姿勢につながっている。
山形県の森林(モリ)ノミクス推進課は、この件に関して「協定を緩和することで森林の循環利用を促し、やまがた森林ノミクスの推進を図っていきたい」とコメントしている。県内木材の推進を図るための規制緩和と協定の見直しは、同じ様な事例を抱える団体に波及するか、注目したいところだ。
Text:岩田武