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エコ・地域づくり

目指すは”理想の林業”。林業だからできる地域デザインとは? 馬が広げた繋がりも!

里山や地場産材の魅力を生かしたさまざまな森林サービス事業を展開する柳沢林業。その企業コンセプトは、自然と共生する社会の実現に向けた地域デザインにつながっている。

柳沢林業の『地域デザイン』
林業だからこそできること

馬搬や馬耕を通じた里山と暮らしとのつながりの再構築、里山を舞台にした住民との協働による参加型地域イベントの開催、市街地近郊でのキャンプ場運営、地域材を生かした木製品の製造・販売、地元酒造店とのコラボによる馬耕で栽培した酒米を使った日本酒のプロデュース、etc.―。

柳沢林業が取り組むさまざまな森林サービス事業は、山や木を熟知する林業者の経験と知識に裏打ちされたもの。都市の暮らしと里山を有機的につなげる「地域デザイン」の実践とも言える。
 


さまざまな森林サービス事業は、祖業である林業で培った経験と知識に裏打ちされる。

原薫社長は、1964年創業の柳沢林業に2003年末に入社。2012年に法人化された翌年、先代から継業した。

柳沢林業が取り組むさまざまな森林サービス事業について、原薫社長はこう語る。「最初からいろいろな森林サービス事業を始めたのではなく、補助金に頼る今の林業では、地域に合った山づくりができないと感じたことがきっかけでした」。


屋内外の空間プロデュースで木の魅力を発信、地場産材を積極活用する。

「林業は本来、木材生産だけではなく、例えば地域のさまざまな環境をととのえることで医者以上に人間の健やかさに貢献できる尊い仕事。でも材価低迷でいかに有利な補助金を取るかに思考が変わってしまった。

法人化後、下請けからの脱却を図る中で、これはマズイな、と強く感じるようになり、地域に合った山づくりの実現や里山の活用に向けたさまざまな森林サービス事業に取り組むようになりました」。



 

一頭の馬から広がる
都市と里山とのつながり

同社の新たな挑戦を大きく後押ししてくれたのが、2016年夏に柳沢林業に引き取られた北海道ばんえい競馬の引退馬「ヤマト」の存在だった。今は地域の里山での馬搬や馬耕で活躍するヤマトは、都市住民と里山を結び付ける役割を担ってくれたという。


馬方のスタッフとともに馬搬や馬耕に取り組むヤマト。

ヤマトについて、原薫社長は次のように語る。「もともと馬搬に興味があったのですが、馬の世話やコストの面で社内でも賛否がありました。

でもヤマトが来たことで、馬に興味を持つ地域のひとたちが自然な形で集まってくれるように。馬の力を借りて里山の遊休農地を耕す住民グループが生まれたり、不登校の子供がヤマトに触れることで、再び社会と関わる心の変化が生まれたりと、さまざまな化学反応が起きています。

目指す林業の形に大きくつながっていく流れは良い意味で想定外でした」。

 

 

PROFILE

株式会社柳沢林業 代表取締役社長

原薫さん

問い合わせ

株式会社柳沢林業
長野県松本市岡田下岡田774-1
電話:0263-87-5361


取材・文:渕上健太



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