持続可能な森づくりの入り口を! 北海道の林業事業体がキャンプ場の運営に挑戦!
2020/03/18
プロの木こりがキャンプ場をつくる。そんなプロジェクトに、クラウドファンディングを通じて100万円を超える支援が集まった。なぜキャンプ場なのか。
森の癒しの力を
多くの人と共有したい
持続可能な森づくりのためには、森林経営の多角化が欠かせない。北海道白老町で薪や木炭、ホダ木などの生産を手がける株式会社大西林業の代表取締役、大西潤二さんもそう考える経営者のひとりだ。現在、大西さんが取り組むのは「キャンプ場づくり」。
2020年2月にはクラウドファンディングを通じて、124万円の資金調達にも成功。7月のオープンに向けて準備を進めている。
大西林業の三代目として、25年間に渡って林業を生業としてきた大西さん。経営者としてさまざまな苦難を乗り越えるなかで、ふと「森の癒す力」に気付いたという。森の木漏れ日に包まれての昼寝。夜通しの炭焼き作業のあと森で迎える朝日。そこには将来の不安を吹き飛ばす力があったそうだ。そんな森の魅力をより多くの人と共有するために生まれたのが、自社で所有する20haの山林のなかにキャンプ場をつくるというアイデア。
キャンプ場の広さは約2ha。約10組ほどが利用できるフリーサイトと車ごと利用できるオートサイトを5区画程度を作る計画だ。子供や女性も安心して過ごせるように、水洗・ウォシュレット式のトイレを完備するなど着々と準備を進めてきた。クラウドファンディングで得た資金は主に炊事場の整備に充てるという。
木を伐って植えるだけが
林業ではない
折しも今年4月には、白老町にアイヌ文化復興等のナショナルセンターである「ウポポイ(民族共生象徴空間)」がオープンする。東北以北に建てられる初めての国立博物館で、年間100万人の動員が見込まれている。
出典:株式会社大西林業
さらに7月にはオリンピックが札幌市でも開催されることから宿泊施設の利用料は高騰するだろう。旅行客が比較的安価に利用できるキャンプ場のオープンは、時機を捉えた取り組みだと言える。
単なるキャンプ場としてだけではなく、大西林業が実践してきた「小型の機械と人の手で山に負担を掛けずに行う環境保全型の林業」の担い手を育てる研修地としての活用も検討中だ。「効率一辺倒で大規模に山を丸裸にしてしまう林業」から脱するための入り口になればという。一般の利用者が、炭焼きや薪作り、ホダ木づくり、メイプルシロップの採集といった「森の仕事」を体験できるアクティビティも充実させていく。「木を伐って植える事の繰り返しがだけが森の仕事ではない」ということより多くの人に知ってもらうためだ。
多角的で持続可能な森づくりへの第一歩が、北海道の小さなキャンプ場から始まろうとしている。
DATA
TEXT:松田敦