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林業現場へ新技術を導入! NTTドコモ・通信システム活用の遠隔操作式作業機械とは?

通信システムを活用した
遠隔操作式下刈り作業機械

 

NTTドコモに聞いた!


株式会社NTTドコモ
執行役員 スマートライフカンパニー
ライフスタイルイノベーション部長
坪谷 寿一氏

 

他分野から林業の実証に参画した理由は?

きっかけは台風による被害でした。2019年夏に大型台風が襲来、記録的な暴風による倒木で大規模な通信障害、そして社会生活や経済への甚大な影響があり、春まで千葉支店長として担当したエリアでの発生とあって大きな衝撃を受けました。

この被害がなぜ起きたか、原因分析を進めていくと、千葉県一帯で起きていたスギの溝腐れ病や山林地の分筆化が進み、大規模な森林整備・施業が難しい環境であり樹々が弱っていること、森林整備・管理にもなる再造林にかかるコストが、木材販売価格に比べ高いという林業の現状が分かってきました。この林業の課題に対しIoTを使って解決できないかと考え始め本事業に参画しました。

どんな成果があった?

最初にぶつかった課題は、ドコモが得意とする通信分野。山間部の中ではそもそも携帯電話・スマホが繋がらないという現実がありました。たしかに人の居ない山に通信基地局は多くありません。衛星通信の活用も考えられますが、普段使われている携帯電話・スマホをそのまま活用することを前提に、通信環境の構築から検討を始めました。

山間部の電波状態を調査していくと、谷沿いは通信ができない場合でも尾根沿いであれば通信ができるケースがあることが判明。つまり、上空であれば電波をキャッチできるのです!この特徴を捉え、バルーン型の通信装置を急ぎ開発することにしました。

ちょうどドローンの目視外飛行のために、上空の陸上電波を活用するプランを発表したタイミングでもあり、その通信機能を活用し、2021年10月の実証で通信中継バルーンを上空に飛ばした結果、通信エリア外の実証現場でも通信状況の改善に成功しました。

山間部での通信の確保により、林業機械のIoT化の環境が整うことで、目視外からの遠隔操作や自動運転に向けたシステム開発も加速できると考えています。南佐久中部森林組合管轄地での実証プログラムでは、目視外からの林業機械の遠隔操作も問題なく実現できたことから、次のステップへと進んでいきます。

導入コストも考えると「自動化」が必至。林業機械1台:作業者1人の現状から1人複数台を操作・管理するマルチコントロール化をすることで、効率化、生産性向上を目指したいと考えています。近年のIT技術革新は目覚ましく、そう遠くないうちに実用化できるものと考えています。



DATA

林野庁 林業イノベーション現場実装推進プログラム(令和4年7月アップデート版)
森ハブとは?


取材・文/渕上健太

FOREST JOURNAL vol.15(2023年春号)より転載

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