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林業者の取り組み

【イベントレポート】迫り来る「2040年問題」。深刻化する人手不足をどう乗り越える?

2026年2月、東京ビッグサイトで開催された「人と地域が紡ぐ林業の未来シンポジウム」(※)。本会では、パネルディスカッション「林業の未来を見据えた人材の確保と育成方法を考える」も行われ、日々、人材の確保や育成に尽力する経営層がパネラーとして登壇した。

※「令和6年度(補正)林業経営体強化対策」事業で開催。主催は「全国森林組合連合会」。

<目次>
1.独自の方針のもと働きやすい環境を整備
2.頑張るほど出来高がもらえる「日給出来高制」が人気の選択肢に
3.職員同士の人間関係構築が外国人受け入れ時のポイント

 

独自の方針のもと
働きやすい環境を整備

それぞれのパネラーはスライドに沿って、所属する企業や組合の方針や取り組みを紹介。

パネルディスカッションでは、「石巻地区森林組合」参事の阿部昭夫さん、「新川森林組合」理事・参事の河村隆志さん、「株式会社柴田産業」専務取締役の柴田智樹さん、「株式会社はまさき」専務取締役の濱﨑康子さんがパネラーとして登壇。「株式会社エス.ピー.ファーム」代表取締役の近藤修一さんのモデレートのもと、意見を交わし合った。

また、パネルディスカッションが行われる直前には、4名のパネラーがそれぞれ単独で登壇し、自身が所属する組合や企業における、人材確保のための取り組みなどを紹介した。

「石巻地区森林組合」参事の阿部昭夫さん。当組合の活動区域は、石巻管内(石巻市・東松島市・女川町)。現在の森林面積は約4万ヘクタール、組合員数は3,036名。

石巻地区森林組合」にて現在、通年雇用で働いている技術職員は44名。また、5社30名ほどの協力を得て、施業を行っているという。

技術職員がチェンソーや刈払機を購入する際は、組合で半額を補助するほか、チェーンオイルの購入費の約3/4を補助しているのが、「石巻地区森林組合」の特徴の一つ。さらには蜂抗体検査の導入、先進地への視察、安全衛星対策を目的とした大会なども実施している。

当組合においても人材不足が課題。新規で入社後、すぐに退社する人が多いことも、懸念点だ。現在は人材確保を目的に、地元の高校生へのPRの強化などを行っているという。「働いて働いて働いて儲かる林業」という目標を掲げ、可能な限りの賃金アップを心がけているそう。

「新川森林組合」理事・参事の河村隆志さん。当組合の活動区域は、滑川市、魚津市、黒部市、入善町、朝日町。現在の森林面積は約2万8千ヘクタールで、組合員数は4,361名(正組合員4,287名、准組合員74名)。

現在、「新川森林組合」には17名の職員と46名の作業員が所属。離職率が低いのが当組合の特色だが、人手不足と人材確保・育成が重要な課題となっているそう。

当組合では、親子や子ども、高校生を対象としたイベントを積極的に開催。ツリークライミングや木工教室などが楽しめる「夏休み親子体験会」の開催、高校生のインターンシップの受け入れなどが、具体例として挙げられる。

また、人材を育成するための取り組みとして、労働災害防止協会の職員や大学教授などを招いての現場研修や安全研修会、ICT・機械研修を実施している。今後も当組合では、「人を育てることは森を育てるということ」をモットーに、人材の育成や確保に力を注ぐという。

「株式会社柴田産業」専務取締役の柴田智樹さん。同社は岩手県二戸郡一戸町を拠点に、森林事業から建築事業までを一貫して手がけている。現在、450ヘクタールの森林を自社で保有。従業員数は40名。

環境を整えることが人を育てること」という考えのもと、労働環境の整備に注力している柴田産業。近年のおもな具体策は、小型ホイル式フォワーダの導入だ。こちらを導入したのを機に、生産量が1日20㎥ほどアップ。キャビン内での作業に切り替わったため、ハチに刺されるリスクなども軽減した。

同社は、業務に関する仕組みやルールの整備にも注力。職員が本来の業務に集中できるよう業務の専任化を図ったり、新人が段階的に成長できるよう明確なステップを設計するなどしたという。「必要なのは、優れたシステム(仕組み)、労働環境への投資、組織風土の改革。この3つを組み合わせることで、林業は“誇れる仕事”になります」と、柴田さん。

「株式会社はまさき」専務取締役の濱﨑康子さん。同社の所在地は、高知県高岡郡四万十町。現在、計19名の社員や作業員が在籍している。事業内容は土木工事、解体工事、林業など。

女性の活躍が林業界には必要と考え、積極的に女性を雇用してきた「株式会社はまさき」。育児や介護を担っている女性も林業ができるよう、週1日から勤務可能な「パートタイム林業」も導入している。加えて、妊娠・育児中の女性も同社で働けるよう、新規事業の立ち上げを進めているという。

同社は、ベトナムからの技能実習生も雇用。“言葉の壁”がもたらす現場作業時の危険を排除するため、現場で使う指示出しの言葉を共通化した。「女性活躍や多様な働き方が、今後の林業界には必要。受け入れる企業側も、魅力ある組織づくりをしなくては」と、濱﨑さん。

頑張るほど出来高がもらえる
「日給出来高制」が人気の選択肢に

「株式会社エス.ピー.ファーム」代表取締役の近藤修一さん

近藤修一さん(以下、敬称略) 人口減の様相を表すものの一つに、「2040年問題」があります。2040年にかけて「生産年齢人口」と呼ばれる15歳以上65歳未満の人が大きく減少し、人口全体の約半分が非就業者になるという問題です。

「2040年問題」は、さまざまな産業に影響を与えるでしょうが、林業界はより大きな影響を受ける可能性が考えられます。こうした状況を目の前にすれば、どのようにして人を雇用し、そして長く勤めてもらうか、といったことをさらに真剣に考える必要があるとわかるでしょう。

また、組織の中核を担う経営者にこそ、深い検討が求められるといわれています。今回のパネルディスカッションで登壇される4名の方は、自分が中心となって組織を変えていこう、という姿勢をもち、それぞれの地域や特性に合わせた取り組みを行っている方々なので、パネルディスカッションを行うにあたり、事例をお話していただきました。

それぞれの事例について、もっと知りたい部分があるかと思いますので、ここで深掘りをしていければと思います。

河村隆志さん(以下、敬称略) 阿部さんの発表のなかに、雇用した人がすぐに辞めるケースがある、とのお話がありました。ごく早期に退職する理由として、どのようなものがありますか?

阿部昭夫さん(以下、敬称略) やはり山で働いていると、体力的に辛いと感じるシーンも多々ありますし、一通りの仕事を覚えるまで3年ほどかかります。それをふまえ、面接時も志望者の方には、辛い仕事である旨を伝えています。それでも、いざ入社して実務についてみると「自分には向いていない」と感じて退職する人がいるのが実情です。

ただ2〜3年勤続した職員が、その後、退職する例は少ないです。その理由の一つに、頑張るほど給与がアップする仕組みがあると考えています。

「石巻地区森林組合」では、成果を挙げるほど収入が増える「日給出来高制」を取り入れています。技術職員は、月給制もしくは日給出来高制を選択できるのですが、現状、日給出来高制を選ぶ人が多いです。なお、技術職員に支払う給与は、日報をもとにして算出する給与のほかに、賞与があります。

この賞与の額を決めるにあたっては査定を行うなどし、頑張っている方がより多くの賞与を受け取れるようにしています。技術職員が“マイホームも夢じゃない”と思える環境をつくるのが理想です。実際、マイホームをもつことができた職員も何名もおります。

職員同士の人間関係構築が
外国人受け入れ時のポイント

近藤 柴田さんの会社では、女性も入社されているそうですね。どのようなことが入社の決め手になっていると考えられますか?

柴田智樹さん(以下、敬称略) うちへの就職を希望する方には、きれいごと抜きの説明をしています。私と部下、現場作業員の三者で就職説明会のガイダンスに参加し、弊社への就職を希望する女性と面談した時は、「うちで働くのは本当に大変ですよ。他社を選んだ方がいいのでは?」といったお話をさせてもらいました。それでも彼女はうちを選んで就職したわけですが、やはり非常にガッツがある方で、しっかりと仕事にあたってくれています。

近藤 濱﨑さんは10年ほど前から、女性の林業参画の必要性などを発信してこられました。こうした取り組みの成果を実感される場面はありますか?

濱﨑康子さん(以下、敬称略) 林業に関心を抱く女性の数は、確実に増えていると思います。ただ、現場で働いている女性の数は、いまだにすごく少ないです。うちの「パートタイム林業」を知って面接にきてくださる方と話すうち、林業の仕事内容が世間であまり知られていない点が、林業に参画する女性が増えない理由の一つだと感じたので、今後、弊社でもSNSを使って林業の仕事内容などを発信していく予定です。

近藤 若い人の間でSNSが浸透している今、林業界に若い人を呼び込むには、SNSをはじめとするオンラインツールの活用が必要不可欠ともいえます。SNSやwebサイトを使った取り組みは、何かされていますか?

河村 求人活動のために富山県内の大学を訪問した際、「新川森林組合さんのホームページは見づらいです。これは、組合への就職が選択肢から外される要因になります」との意見をいただいたことがあります。今の学生はパソコンではなくスマホでwebサイトを見るので、スマホの小さな画面でも見やすい仕様にする必要がある、ということでした。このアドバイスを受け、今年2月に組合のホームページをリニューアルし、スマホでも見やすい仕様に変更しました。

近藤 本会の参加者の中には、今後、外国人労働者を受け入れる必要があると感じている方もいるでしょう。濱﨑さんにおうかがいしたいのですが、外国の方と働くうえでは、どのようなことがポイントになるでしょう?

濱﨑 日本人の職員と外国人の職員の間で、しっかりと人間関係を築ける環境をつくるのが重要だと思います。うちではベトナムから職員を迎える前に、日本人の社員同士で意見交換をする場を設けたほか、ベトナム語を学ぶ研修を行いました。こうした機会をとおして外国人の職員を迎える土台が培われたようです。現在、うちで働いているベトナム人の職員は、「みんなのために頑張りたい」という気持ちをもって、仕事にあたってくれています。

パネルディスカッションの最後、4名のパネラーは、それぞれの目標を口にした。「頑張れば報われる仕組みは、やりがいにつながる。今後もやりがいある仕事づくりと、地球環境への貢献に力を入れていきたい」(阿部さん)、「山での仕事がない時期に職員が他業界で働けるよう、方法を模索したい」(河村さん)、「世界で活躍できる林業者を育てていきたい」(柴田さん)、「女性が働きやすい林業界をつくっていきたい」(濱﨑さん)。


写真・文=緒方よしこ

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