【熱中症対策が義務化】現場の対応ポイントを解説! WEB限定プレゼント企画も実施中
2025/08/05

林業者にとって、熱中症対策は単なる安全管理を超えた課題となっている。2025年6月施行の改正労働安全衛生規則により、事業者に熱中症対策が義務化された。義務化された要件から緊急時の対応方法まで、現場で必要な熱中症対策を解説する。
1.死亡や後遺症のリスクも深刻化 事業者が対応すべきことは?
2.現場における対応
–体制準備と周知
–手順作成と周知
–熱中症のおそれがある作業者に対する処置の例
–段階別に見る熱中症対策のポイント
–熱中症警戒アラートを活用し、予防体制を構築しよう
死亡や後遺症のリスクも深刻化
事業者が対応すべきことは?
夏場の酷暑が全国的に深刻化する中、林業でも熱中症対策が急務となっている。
林業現場で熱中症リスクが高い作業として、まず挙げられるのが山での下刈りだ。日陰がなく、直射日光にさらされる環境で長時間にわたって刈払機を動かすため、気温や湿度が高いと身体への負担非常に大きい。
国に報告があった全国の労災事例を公開する「職場のあんぜんサイト」では、下刈り作業中の熱中症死亡事例が3件取り上げられており、仕事に慣れた人でも発症するリスクが指摘されている。
また水分や塩分の補給不足が関係しているとみられる事例もあり、職場全体での熱中症対策への理解促進が課題となっている。
近年増加している皆伐施業も熱中症リスクが高い作業といえる。皆伐地は基本的に日陰がないため、チェーンソー使用者をはじめ、キャビンがなく空調が効かない中小型重機に乗るオペレーターも警戒が必要だ。
ほかに皆伐跡地などで行われる夏場の地拵え作業も熱中症リスクが高い作業となる。下刈りを含めて、現場の環境によっては、休憩時の日除けとなるタープテントの設置といったハード面での対策も有効にる。もちろん、こまめな休憩や水分、塩分補給も欠かせない。
(左)地拵え作業風景、(右)日除けタープテント
熱中症の危険性は死亡リスクだけではない。症状が進行すると脳にダメージを与え、頭痛、めまい、倦怠感などの後遺症が長期間継続する可能性がある。予防や早期の処置が重要だ。
このため改正労働安全衛生規則では、労働者を雇用するすべての事業者に熱中症対策が義務化された。この背景には深刻なデータがある。熱中症死亡災害(令和2~5年)の100件を分析した結果、78件が「発見の遅れ」、41件が「異常時の対応の不備」によるもので、初期症状の放置や対応の遅れが重篤化の主因となっていることがわかった。
出典:厚生労働省 パンフレット「職場における熱中症対策の強化について」
今回の改正では、熱中症の自覚症状がある作業者や熱中症のおそれがある作業者を発見した人がスムーズに報告できる体制の整備が義務化された。報告を受けるだけでなく、職場巡視やバディ制の採用、ウェアラブルデバイスの活用などが例に挙げられる。
また、熱中症の重篤化を防止するため、熱中症のおそれがある作業者を把握した際の措置や手順を定める必要がある。緊急連絡網や搬送先の連絡先を従業員に共有し、作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送などの実施手順を作成する。体制の整備、作成した手順書などは必ず関係者に周知しよう。
現場における対応
熱中症対策が義務化となるのは、「WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業。農作業の多くがこの条件に該当する。
熱中症のおそれのある労働者を早期に見つけ、その状況に応じて迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止するため、以下の「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務づけられる。
体制準備と周知
①「熱中症の自覚症状がある作業者」
②「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」
が、その旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること
手順作成と周知
①「作業からの離脱」
②「身体の冷却」
③「必要に応じて医師の診察または処置を受けさせること」
④「事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地など」
など、熱中症の症状の悪化を防止するための措置に関する実施手順を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知すること
熱中症のおそれがある作業者に対する処置の例
フロー1
フロー2
出典:厚生労働省 パンフレット「職場における熱中症対策の強化について」
※あくまでも参考例であり、現場の実情にあった内容で作成すること
段階別に見る
熱中症対策のポイント
効果的な熱中症予防は、作業の流れに沿って段階的に行うのがポイントだ。事前の準備から緊急時の対応まで、具体的な方法を確認していこう。
事前準備
暑さに慣れる身体づくり
夏の林内作業を安全に実施するには、身体の準備が欠かせない。気温が高くなる前の時期から、ストレッチやウォーキング、入浴などで少しずつ暑さに慣れる活動を始めよう。作業直前に冷たい飲み物や冷やしたタオルで体温を低下させ、作業中の体温上昇を抑制するプレクーリングも対策の1つだ。
作業中①
こまめな休憩と水分・塩分補給
高温下での長時間作業を避け、こまめな休憩と水分・塩分補給をすることも重要だ。涼しい日陰で作業着を脱ぎ、体温を下げよう。水分補給は、のどの渇きを感じる前に行う。20分おきに毎回コップ1~2 杯以上を目安に、こまめに摂取しよう。塩分などの電解質と糖質を含んだアイスラリーや経口補水液がおすすめだ。

「塩熱飴・塩熱サプリ」
塩熱サプリは暑い日でも解けにくいタブレットタイプ。ポケットなどに入れて携行しやすく、口の中で噛みくだくことで発汗で失われやすい電解質を手軽にかつクイックに補給できる。
うめしそ・レモン・ソーダ・スイカの4種類の味に加え、今年新たに「塩熱サプリカムレス* ヨーグルト味」が発売。
他に塩熱飴は、レモン・梅・トマト・コーラ・マスカットの5種類の味が1袋にミックスされている。
今回はその中から、「塩熱サプリ うめしそ味30g(小袋タイプ)」を10名様にプレゼント。下記フォームよりご応募ください。
*カムレス=噛む力が少なくて済む意味の造語
問/ミドリ安全

「KATADYN 「ビーフリー AC」」
アウトドアに最適の高機能な携帯型浄水器。ホロファイバーと活性炭による2段階ろ過で、川や湖の水などから原生動物や細菌を除去し、安全で美味しい飲み水を作れる。
0.5リットルと1リットルの2タイプがあり、本体は約72g(0.5Lモデル)の超軽量設計。コンパクトに収納可能だ。
問/スター商事
作業中②
熱中症対策アイテムを活用
今、現場で利用が進んでいる熱中症対策アイテムを紹介する。空調服(ファン付き作業着)は深部体温の上昇を抑制する効果が実証されている。濡らしたインナーを内側に着用するとより効果的だ。ネッククーラーも首回りを冷やすことで体感温度を下げることができる。
スマートウォッチなどのウェアラブル端末には、体表温度とその熱の流れから身体の状況を判断し、光・音・振動でアラートを発信できるものもある。作業中に装着することで、体の異常をより早く察知できる。

「DuerPro 風が駆け巡る空調インナー」
空調ウェアの冷却効果を最大限に生かす高機能インナー。背中から脇、袖には風を妨げない高通気メッシュ素材を採用。前面には国内トップクラスの接触冷感素材「Q-MAX0.4」を使用し、ファンからの風がウェア内を駆け巡るような冷涼感を実現させた。動きやすいストレッチ性も特徴だ。
今回は、M・L・LLサイズを各1名様にプレゼント。下記フォームよりご応募ください。
問/新陽トレーディング
応急処置
「熱中症かな?」と思ったらすぐに対処を
正しい応急処置の知識の習得も必要だ。熱中症の代表的な症状は、汗をかかない、体が熱い、立ちくらみ、吐き気、頭痛、脱力感、判断力低下などがある。症状を感じたら、作業を中断し安全な場所へ移動、応急処置として涼しい環境で衣服をゆるめて体を急速冷却、水分・塩分を補給する。改善しなければ医療機関を受診する。
軽度な症状でも急速に重症化する可能性があるため、少しでも異常を感じたら迅速な対処が必要だ。
CHECK!
熱中症警戒アラートを活用し、予防体制を構築しよう
コストをかけずに今日から始められる熱中症対策がある。熱中症警戒アラート(熱中症警戒情報)を活用して、作業スケジュールを調整しよう。環境省のLINEアカウントに登録すると、前日17時と当日5時に環境省と気象庁から予報として熱中症警戒アラートが発表される。
個人のスマートフォンに直接通知が届くため、見逃すリスクが少ない。アラートが発表された日は、林内作業の時間短縮や延期を検討し、作業する場合はより徹底した熱中症対策を講じることが重要だ。
このようなツールを活用することで、「いつもと違う暑さ」を事前に把握し適切な判断ができる。今回の規則改正を契機に、林業作業中の熱中症対策を見直そう。現場の実情に合わせた予防方法や熱中症患者の対処フォローをつくることで、従業員の安全と生産性を両立できる。さっそく実践してみよう。
文/渕上健太