チェンソー講習をオンデマンド化!? 人材育成を合理化し、林業をもっと盛んに!
2023/08/16

「100年先も自然とともに生きる」という信念のもと、林業と再生エネルギー事業の二刀流で山々を駆ける株式会社ソマウッドが、チェンソー講習のDX化を始めた。その根底にあるものとは?
効果的かつ効率良く
安全な技術をマスターする
日本にはチェンソーの取り扱いに関する免許制度は存在しないものの、業務でチェンソーを用いて伐木する人には、事前に『特別教育』の受講が義務づけられている。一般的に3日間のカリキュラムが組まれているが、人手不足で多忙な今、この“3日間”を確保するのが、林業会社と受講者の負担となっている。
また、林業は国内全産業において、労働者当たりの死傷者数が最も多い産業である。その原因のおよそ2/3は立木の伐採時に発生しており、チェンソー使用者の安全確保が強く求められている。
このような現状を受け、森林管理やチェンソー伐木研修会も行う株式会社ソマウッドが『オンデマンド特別教育(学科)』の配信をスタートさせた。
労働安全衛生規則に定められた「チェンソーによる伐木等の業務に係る特別教育」のカリキュラムのうちの、学科部分(9時間)をオンデマンド配信するものだ。別途カリキュラムに定められた実技研修を対面実施することと合わせて、特別教育の修了証を発行する。
これにより対面受講を実技1日のみに減らすことが可能となるうえ、事業所のみならず自宅や通勤中など場所を問わず何処からでも、24時間いつでもWEBで受講できるようになる。ソマウッド代表の久米さんが教えてくれた。
「法令上、チェンソー使用に関して定められているのは『特別教育』のみであり、講師も十分な知識と経験をもっていればOKと、基準がありません。しかし、チェンソーは死亡事故を起こすリスクのある道具です。安全な作業を担保するため、より効果的な教育システムの構築と、誰もが受講しやすい環境づくりが求められていました。『特別教育(学科)』をオンライン配信することで、受講者の負担を軽減できるだけでなく、法令で義務付けられていない小テストを独自に盛り込むことで習熟度を高める工夫をしています。また、期間内であれば何度でも受講できますから、繰り返し学ぶことも可能となります」。
オンライン配信で
事故を防ぐ安全教育
オンデマンド配信により、時間的な負荷を軽減すると同時に、習熟度を高める講義によって安全を追求したチェンソー技術習得を提示する。
そんなソマウッドでは創業以来15年間、ひとりもチェンソーによる事故が発生していないだけでなく、防護パンツすら傷つけていないという。
久米さんの、事故を未然に防ぐチェンソーの取り扱い方や伐倒技術の裏付けには、教本の著者のひとりである石垣正喜氏に師事し、ともに講習のため全国を周った実績があった。
「周知の通り、伐木時の事故は減っているものの、依然として多く発生しています。身を守る装備はお金で買うことができますが、技術習得や判断力は簡単には手に入りません。ハードではなく、ソフト=教育が命綱となります。安全かつ的確にチェンソーを扱うことができれば、より広い範囲で仕事を請け負うことができ、林業人口の裾野が広がると考えています。キコリの人材育成こそが林業の発展に繋がると考え、そのためにも事故の起きないチェンソーワークを習得してもらいたいです」。
林業の未来までもを見据えたチェンソーの安全教育のDX化。WEB講習をうまく活用し、より安全な作業へと繋げてほしい。
DATA
教本『伐木造材とチェーンソーワーク』(全国林業改良普及協会)
WEB受講のプラットフォームにはクラウド型eラーニングシステム(LMS)を利用した学習管理システムを採用。受講者がどの科目をどこまで受講したかを秒単位で記録、規定時間以上にしっかり受講したことを証明できる。
文:川島礼二郎・編集部
FOREST JOURNAL vol.16(2023年夏号)より転載