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林業者の取り組み

顔の見える林業を。端材活用に地域とのつながり──歩み続ける東京チェンソーズのいま

東京・檜原村でひっそりと誕生した「東京チェンソーズ」は、およそ15年の時を経て、世間から注目を集める企業となった。彼らのこれまでの歩みと、輝かしい実績にまつわるストーリー。

東京チェンソーズの発想
「まるごと一本を使い切る」

先人が植えてくれた木をきちんと使いたい。当時、東京都森林組合にいた4人はそんな思いを抱きながら東京チェンソーズを立ち上げた。

拠点とする檜原村では、1950年代に植樹された木々が伐期を迎えていた。まだ国産材活用が盛んではなかったが、数十年かけて大きく育った木々を目の前に、「材」として余すことなく使うことで先人の活動を継ぎたい、そんな仕事をしていきたいと思った、と「東京チェンソーズ」の木田さんは振り返る。



立ち上げから10年近くが経過した頃、自分たちの山を持つようになった。山から伐り出した木材を販売し、改めて感じたのは「木材単価の低さ」。

林業会社として経営していかねばならないからこそ、課題から工夫が始まった。

単価を上げるのではなく、一本の木から取る量を増やす、つまり「まるごと一本を使い切る」という発想で、収益を上げていった。枝も根株も、すべて販売するという活動を知る人が増えつつあったある時、枝を店舗の装飾に使いたいという人が現れ、それを機に、端材を装飾として扱いたいという要望がポツポツと寄せられるようになったという。

木田さんは次のように語る。「『市場では商品として出回っていない部位にも、価値をもたせることができるんだ』と手応えを感じました。ここから、木を余すことなく活用する『1本まるごと販売』という取り組みが始まっていきました」。


現在、東京都八王子で、医療法人が所有する病院裏手にある広葉樹林のリノベーションを行っている。勤務スタッフや病院を利用している方々に楽しんでもらえるような森林空間の活用を検討していくそうだ。

以降、「東京チェンソーズ」は規格外の部位を材料に、多様なプロダクトを開発。同社が運営するオンラインショップでは、箸置きやスプーン、積み木など数々のプロダクトが紹介されている。

そのなかには、世間にインパクトを与えたものも。昨年11月、林野庁による「ウッドデザイン賞 2021」のハートフルデザイン部門で、優秀賞を受賞した「山男のガチャ」だ。

「山男のガチャ」は、一見すると普通のガチャガチャ。しかし、レバーを回すと出てくるのは、木の端材でできたおもちゃだ。受賞の決め手は、通常は廃棄されてしまう端材をガチャガチャに昇華させた点。

しかし、木田さんによると、受賞に至った理由はほかにもあるという。「『山男のガチャ』は、西多摩のさまざまな施設に置いてもらっています。つまり『山男のガチャ』は、地域の人々の協力があったからこそ成り立ったプロダクト。この点も、大きく評価されました」。


東京チェンソーズの仕事は大きく分けて3つ。森林整備や伐採を行う林業事業、伐採後の木材を加工し、雑貨などを製造する販売事業、整備後の森林空間を活用するサービス事業だ。木材の生産から販売までを一貫して行う6次産業となっている。1本の木を余さず使い切る「山男のガチャ」も、このうちのひとつ。

木田さんは次のように語る。「小さなアイディアや気づきも見過ごさず、やりたいことを本気で実現しようとするのが私たちの強みです」。

今後も「東京チェンソーズ」は、その柔軟な姿勢をもって、新しい領域を切り開いていくだろう。


今回リノベーション作業をしていたのは、林業事業部の飯塚達郎さんと城定鷹也さん。

 

話してくれた人

コミュニケーション事業部

木田 正人さん

問い合わせ

東京チェンソーズ




文/緒方佳子
写真/松尾夏樹

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