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林業者の取り組み

森と人をつなぐ道を。次世代型木こり「outwoods」が思い描く未来とは?

人にも森にも
「無理をさせない」

環境保全型のoutwoods流の道づくりは、この10年間で徐々に道内にも知られるようになった。道づくりのスペシャリストとして、山主や行政から直接指名を受ける依頼も増えているそうだ。

この日訪ねた厚真町の現場も、足立さんが道づくりを一任されているプロジェクトのひとつだ。面積の約7割を森林が占めるという北海道厚真町の町有林。近年、持続可能な林業に力を入れる厚真町では、町有林の一部を整備し、地域住民が自由に散策・活用できるオープンな森づくりを計画しており、その道づくりを足立さんが手掛けている。

道づくりにあたっては、何度も森を歩き、コースの設計から着手。最短距離でゴールへ向かう道ではなく、森林作業道として高度な機能性を備えながら、ゴールに辿り着く過程そのものを楽しめるような道だ。緩やかな傾斜とカーブを描くコースは、林業従事者、利用者、そして、森ーー道に関わるすべての対象に配慮された設計がなされている。

「地形に合わせてわざわざカーブをつける理由は、まず大前提として、森林作業道としての機能性を考えているから。まっすぐな道だと集材するにも方向が限定されてしまい、大変です。無理に引っ張って、残った木に擦って傷つけてしまうリスクもある。カーブをつけることで、倒すにも、引っ張るにも、角度に自由が出ます。

また、視界も広くなり、冷静に森林を見て管理できるようにもなるし、勾配が緩やかになるため、林業機械を使う際の燃費も下がります。さらに、地形に合わせることで森林環境への負担も減りますし、カーブの先に行ってみたくなるようなかっこいい道なら利用者にとっても心地いい。一見非効率的かもしれませんが、いいことづくめなんです」。

カラマツ、トドマツなどを中心にした針葉樹林には、ところどころ、ミズナラ、シラカバ、イタヤカエデなどの広葉樹も。必要なところは適宜伐倒するが、道の際部分に生える小木や枝をあえて残すのもoutwoods流だ。

「車で走り抜けるのには正直邪魔なんですけど(笑)、景色をできるだけ賑やかに保っておきたいんですよね。道は、自然界と人間界の境界だけど、できるだけナチュラルで多様性があるほうが、歩くのも楽しい。“物理的にずっと残る道”ではなくて、“維持されてずっと残る道”になればいいな、って」。



森と街をつなぐ
架け橋として

outwoodsが担っているのは、いわば、森と人を“楽しく”つなぐ役目といえるだろう。

経済成長を前提にした価値観が、持続可能性よりも優先されてきた現代の資本主義社会。そのツケとして深刻な気候変動や環境問題を眼前に突きつけられ、SDGsの機運が高まっているのは、日本の林業界においても同様だ。問題の一因は、人々の暮らしが森から遠くなったこと。そう考える足立さんは、10年前からoutwoodsの活動を通し、まちと森をつなぐプロジェクトを精力的に手掛けてきた。

たとえば、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」の会場では、間伐材の林地残材のみを活用したブースを製作。大丸百貨店の特設会場では、北海道の”森”や”木”をテーマにしたイベントを継続的にプロデュースしている。outwoodsらしいスタイリッシュなアウトプットは評判が高く、年々、様々なコラボレーションが実現。

大丸百貨店の特設会場の様子。森林整備活動をユニークに伝える展示が好評を博した(写真提供:outwoods)

その一方で、自発的なプロジェクトとして2021年に新たに立ち上げたのが「森と街のがっこう」だ。

「森と街のがっこう」とは、札幌市内の山林をフィールドに、『こんな森があったらいいよね』を共有・実現する場を展開していくプロジェクトのこと。そこでは、スタイルも働き方も様々な林業従事者たちはもちろんこと、都市に暮らす人々、クリエーター、研究者、教育者などさまざまな人たちが、森をハブにして集える場を目指しているという。

「有形無形のもので森から街に届けられるものってたくさんあるのに、そのチャネルはまだ少ない。森林ボランティアもいいけれど、仕事も遊びももっと欲張りに多目的な場として、森でやりたいことを全部をかなえられるプラットフォーム的な場をつくりたかったんです。もともと人間の社会と森は地続きだったんだけど、壁ができてしまった今、もっと関わりしろを増やして、色々なものをもう一回リミックスしたいんですよね。コロナ禍でぼちぼちのペースになってしまったけれど、今後力を入れていく予定です」。

 


一人ひとりの木こりが輝いてこそ
持続可能な林業が実現する

西埜馬搬の西埜将世さんは、厚真町地域おこし協力隊林業支援員に応募し移住。この日、馬の「カップ」とともに、木を運び出していた女性スタッフも、現役の地域おこし協力隊員だという。

目指すのは、持続可能な林業の実現。その鍵となるのが、「人にスポットを当てること」というのが足立さんの持論だ。

「北海道は本州に比べて平たく面積も広いので、林業の機械化が進んでいます。それはそれでいいですが、人にもっと光と利益、やりがいがあたるスタイルも存在するべきだと思うんです。働いて金を得るべきは人間なのに、機械に金も吸い取られてしまって、大変な割に儲からないとなるとモチベーションが下がってしまうし、結果、林業全体も下向きになります。

一台の高価な機械より、常にアップデートし続けることができる”人”の数が増える必要もあるんじゃないかな、と。環境を守りましょうというより、人を豊かにしましょうというほうが、一人ひとりの目も肥えていって、環境と共存する意識も広がるようになると思う」。

林業家たちそれぞれが、社会や仲間と繋がる意義を感じながら、意気揚々と輝ける林業。フリーランスの木こりとしてそんな生き方、働き方を体現している足立さんのもとには、若い林業従事者や志望者が訪ねてくることも多いそうだ。

「5年前はゼロでした。でも、今は『フリーとしてやりたい』って訪ねてくる人が本当に増えていて。そうした背景には自伐型林業が話題になっている影響も大きいと思うんだけど、大型の林業だけじゃない林業の在り方が浸透しつつあるんですよね。僕のまわりでも、キャラクターが立っている木こりが増えていて。そうした仲間と徒党を組んで、よってたかって森に入っていきたいと思っています」。

取材当日は、そんな個性的な木こりたちのコラボが実現した日でもあった。環境負荷の低い林業として近年、再注目されつつある馬搬を実践する「西埜馬搬」が、現場に入っていたのだ。代表の西埜将世さんは、厚真町に移住して、2017年に馬搬林業家として独立。今回は、初めて同じ現場で作業することになったという。

馬搬は、古くて新しいというか、再構築すべき林業システムの一つだと僕は思っていて。ずっと一緒にやりたいと思っていたところ、たまたま厚真町がそれを実現してくれた。行政や民間のサポートも得ながら、こういうコラボレーションを今後もっと増やしていけたらと思っています。いろんなジャンルの林業を混ぜる機会もつくっていきたい」。

北海道の森は、原生林が伐採されてまだ歴史が浅い。潜在自然植生の影が色濃く残る北海道だからこそ、持続可能な林業のヒントがたくさんあるはずだ、と足立さんは語る。ポテンシャルにあふれた北海道の地で、個性豊かな木こりたちが紡ごうとしているのは、懐かしくて新しい未来の林業の姿だ。

DATA

outwoods
北海道旭川市


文・写真:曽田夕紀子(株式会社ミゲル)

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