「組織として」利益を上げるスキルを実践で学ぶ! 林業現場リーダー育成プロジェクトとは
2021/08/13
FBCは「実践で学ぶ」が大きな特徴。3年目を迎え、主伐をメインに時には山林所有者との交渉も行うなどしながら、実に23ha以上の実践フィールドが与えられる。他の林業大学校ではあり得ない多くの学びがある。研修生は、ここでどのような教育を受けているのだろうか。
POINT01
リアルな実践を通じた
経営トレーニング
FBCは、林業事業体活動そのものより人材育成に重点を置いている。「素材生産作業が上手である」ということだけでは評価せず、「考えて作業をしているか」「自分のみならずチームとしての生産性向上に貢献しているか」で評価する。そして、その先に「利益を生み出せる考え方が身についているか」を大事にしている。
成長を続けられる集団になるために、FBCでの研修・働き方の基礎となる考え方であるPDCAの実践は欠かせない。古くから言い尽くされてきたPDCAサイクルだが、組織として根付かせるにはこのトレーニングが必須である。山の現場では疎かにされている「計画を立てる」事を活動の起点とし、自由闊達な意見交換の気風を持ちつつ、PDCAの枠組みがあることで、着実なスキルの向上を継続させる。
POINT02
PDCA の徹底的実践
利益に直結する進捗管理は、必ず2週間に1回開催されるPDCA会議(オンライン会議もあり)での研修生からの過去2週間の進捗報告と、今後2週間の作業予定&作戦を数値分析を交えて報告する仕組みだ。本プロジェクトを統括する宮川俊哉さんは、研修生に適宜、独自研修会・視察の開催をし、林野庁や県のモデル事業への積極的参加を促している。
オンライン会議の様子。グラフの赤い直線が、計画終了日(6/23)に完了するための作業進捗率。ここでは、搬出の進捗率が予定より高くなっているため、終了予定が6/4に前倒しになっている。
POINT03
細やかな意思疎通のある
チーム作り
現場状況、機械の状態、明日の段取りなど、多岐に渡る情報を細やかにやり取りし、ダウンタイムを減らすことが効率化に繋がると考えるFBC。情報共有にスマホフリーアプリ「slack」を活用、現状をリアルタイムでシェア。業務上の伝達事項、ヒヤリハット等の共有を写真付きで行うことを義務付けし、繋がりのあるチームを作っている。
素早く、手軽な連絡手段が「繋がり」のポイント
●林業現場リーダーに必要な知識・スキルを持つ者
●現場の生産性を高めるための考え方を持つ者
●複雑に絡み合った課題を解き、解決する経営術を持つ者
●PDCAを実践ベースで回せる者
※PDCAとは……Plan/計画・Do/実行・Check/評価・Act/改善の頭文字をとったもの。業務改善などを継続的に行うサイクルのことでFBCでは徹底的に繰り返される。
DATA
フォレストビジネスカレッジ
製材大手の株式会社トーセン・社長である東泉清寿氏発案による、林業界現場リーダー育成のためのプロジェクト。トーセングループの契約社員として働きながら、1年間の研修を受けることができる。東泉社長自ら、私財を投げ打ち令和元年度から3名の社員兼研修生でスタートした。現在は7 名が在籍中。
筆者PROFILE
FOREST MEDIA WORKS Inc. CEO
楢崎達也
カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2019プロデューサー。
FOREST JOURNAL vol.8(2021年夏号)より転載